桜の君
ヒラヒラ
舞うサクラの木の下
チラチラ
視界に入る花びら達
ねぇ、
聞かせてよ、君の声
このピンク色の木の下で
今だに眠る君の声
聞きたくて 聞きたくて
でも、聞こえなくて
トントン
つま先で君をつつく
ねぇねぇ
囁いたのは花びらの数だけ
ねぇ、
応答してよ、僕の声に
君を埋めたのは去年の春
君より一年生きた僕へ
言いたくて 言いたくて
でも、言えないことってあるでしょ?
ささやかなこと
僕は君に嬉しそうに
ツラツラ
話してあげるから
ねぇ、
君のその綺麗な声で
僕に
ゾロゾロ
汚い、恨みの言葉を吐き捨ててよ
ヒラヒラ
舞落ちたサクラの花びら
その桃色は
薄くなった 君の血であり、涙であり
ねぇ、聞かせてよ
その罵詈雑言。
君が
僕だけに向けてくれる
言葉だから―――