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第14話「龍の誇り」(3)


 国境の町オルエンタ、スコラロス王国とバルへリア連邦共和国を分かつ巨大なゲートを通るためには、様々な審査が要求される。

 それは当然のことで、スコラロス王国は人間種ヒューマノートがほとんどを占めている中、バルへリア連邦共和国は龍血種ドラゴノートをはじめとする様々な種族が暮らす国だ。価値観の違いによって争いが生まれてしまう可能性は非常に高く、商人でさえ通行出来るものは、形式ばった面倒な手続きを踏んだものだけである。

 しかしそれは逆に言えば、正式な手続きを踏んでいる者であれば、比較的容易く通る事ができるということだ。特に魔災対策機関クスウィズンのような、王国から承認を受けている機関であれば問題ない。


「魔災対策機関クスウィズンから派遣されたリスターだ。通行目的は厄災の魔女討伐による情報収集のため、バルへリア連邦共和国のロンダンシーにいる龍血種ドラゴノートに聞き込みを。詳しい話はこちらに」


 ゲート前に警備員が立っている、その彼らの近くにある小屋で座る人間種ヒューマノートの男に、リスターは淡々とした事務的な口調を続けながら、数種の書類を手渡した。

 それはクスウィズンからの正式な国境越えの契約書と、魔女の森付近でドラゴンを見たという情報をまとめた書類だ。あれからリスターとトレイスは魔女の森付近でドラゴンが観測されたという情報を探し、付近を通行していた行商人が目撃したという証言を得ることができた。


(あのとき派手に脱出しておいて正解だったな)


 リスターの後ろに控えている馬車へ荷物と共に紛れているヴィルフィは、念の為フードを被りながらニヤニヤとしていた。

 流石に顔を隠す人物が複数人いると厄介だと感じたヴィルフィは、馬車に隠れることにしている。狭苦しい思いをしてはいるが、彼女の他にアールにハーデットと、スコラロス王国で顔を隠さなければいけない人物が多すぎる、これは仕方がない。

 それにいざ見つかりそうになっても、腕に抱いている黒猫を開放して、「なんだ猫か」と言わせれば良いだろう……リスターの古典的な提案にヴィルフィは少し呆れたが、彼女は何度か国境越えをしたことがあるのだろう、安心したまえ、と自信満々に話していた。


「ああ、話は聞いているよ。久しぶりだね。もちろん通行を許可するよ、リスター」


 人間種ヒューマノートの男が親しげな微笑みでリスターへと話しかける。どうやら顔見知りのようだった。


「いつもすまないな」


「それにしてもロンダンシーか。あの偏屈な龍血種ドラゴノートに会いにいくなんて物好きだね」


「わたしが物好きなのは既に知っているだろう?」


「違いないね。ゲートの向こうへ既に話は通してある。このまま通ってくれて構わない」


「ありがとう、恩に着るよ」


 とても社交的に話すリスターにヴィルフィは不思議がりながら、馬車が揺れて動き始めたのを悟る。

 リスターたちが巨大なゲートを越えると、そこには明らかにスコラロス王国とは異なった雰囲気が漂っていた。

 別に何か建物の構造が大きく変わっているのではない。変わったのはただ一つ。暮らしている人種の多様性だ。

 アールはフードを被りながら、少しだけ視点を上げて周りを見渡す。ゲートには人間種ヒューマノートよりも体毛が豊かで爪の長い忠獣種ウルフォノート、背の低さに反比例するかのように巨大な武器を安々と持ち上げている誇土種ドワーフィノートが睨んでいる。町の方を眺めると露店に可愛らしい耳の生えた噛猫種キャトノートの店主がオルエンタ中に響き渡らせるが如く元気な声を上げていた。その店を不快そうな表情で通り過ぎる耳の長い翠精種エルフィノート

 アールも噂には聞いていたが、実際に目にするのは初めての人種も多かった。


「オルエンタを抜けたら、もうフードを外してもらって問題ない。有名人でも、流石に隣国で顔は割れないだろうからね」


「分かりました。……しかし流石はバルへリア連邦共和国、人種の数が多いですね」


「ああ、様々な種族が様々な国を作って、それを統一して意志統合したのがこの国だ。まったく、政治の化け物がいたもんだよ」


 バルへリア連邦共和国の歴史を詳しく知るわけではないが、人間種ヒューマノートを結束するという役割をかつて王国と担っていたアールには、それがとんでもないことだということは実感できた。


「……それにしても、先ほどの方が言っていた事が気になりますね。龍血種ドラゴノートはそこまで変わった人種なのでしょうか」


 アールは唇に指を添えながら、考え込む仕草をする。

 自分が会ったことのある龍血種ドラゴノートは、そこまで癖のある人物ではなかった。自分に敬意を評してくれ、友人のように話してくれた彼のことを偏屈だとは一切思わない。

 あるいは、ロンダンシーという場所がそうさせているのか……アールは様々な可能性を頭の中に思い浮かべる。どれもが情報の少ない、頼りない推測に過ぎなかった。


「少し情報を仕入れる必要があるかもしれないね。国境を出たあと、どこかの町で情報を集めよう。ここじゃキミたちが目立ちすぎる」


「そうですね。早くオルエンタを抜けましょうか」


 リスターたちはまだ魔女の存在が知れ渡っているオルエンタを抜けて、しばらくの所で野宿をすることになった。


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