無色雑音
三題噺もどき―ろくじゅうに。
お題:信号機・黒・白
買い物帰りの、信号待ち。
(あれは今、どっちが点いてるのかなー。)
ふと、そんなことを思った。
―僕の世界には色が無い。
もちろん、信号機の、赤も青も黄色も、無い。
緑だって、ピンクだってない。
唯一あるといえば、黒と白。
黒の割合が若干多いが。
これはまあ、影なども黒に見えるからなのだが。
その上、音も聞こえづらいので簡単に動くことができない。
周りを見ていれば、それなりに動けるので、買い物ぐらいはどうにかなるのだが。
それでも、色の無い世界はつまらなく、その上、音も雑音交じりのように聞こえるので、退屈なことこの上ない。
色も音もない世界というのは、想像以上に面白みに欠けるのだ。
(本当、何でこんな世界に生まれたんだか…)
神様は何を償わせようと言うのだろうか…前世にでも何かしたのだろうか。
す―と、隣の立っていた人が動いた。
(ん、青か、)
そう思って、足を踏み出した。
途端、黒が一層、強くなってきて―
ドンッーーー!!!!
体が、吹き飛んだ。
いや、もちろん音は聞こえなかったが。
ぼやける視界で、誰かが何か言っている。
何を言っているのか、ノイズ交じりで聞こえない。
それに、影が重なって、真っ黒になって、顔もろくに見えない。
(ったく、ホント、何したんだよ)
―前世の僕。