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悪役令嬢と道連れ転生  作者: ドクトルゴトー
1章 魔人転生編
19/45

ギフト

 突然変なことを言い出した。どうやら自分の事を神様だと勘違いしているイタイ人のようだ。可哀想に……。


「あの、流石にそこまで言われると傷つくんだけど、ぐすん」


 本当に泣いてる奴はぐすんとか言わない。


「取りあえず、聞くだけ聞いてみましょう」


 ライラがそう言ってのを聞き、神様も真面目に説明するモードになって、説明を始めた。


「まず初めに、一般的な話をすることにしよう。魔人たちは私から与えられる何かしらの能力を総称して、ギフトと呼んでいる」


 ギフト、か。贈り物と言う意味だったはずだ。ただ同時に天賦の才など、神から与えられた才能を差してそう言われることもあったはず。成程、確かにそう言う意味ではギフトと言えよう。


「納得してくれたようで何より」


「どう言った効果があるのかに関わらずと言ったわね? 私たちはどう言った効果を貰えるの?」


 ライラの質問は随分と気が早いような気もするが、確かにそれが分からなければ、アレの対抗する目途は立たないからな。聞いて当然か。


「と言うかそちらの方は既に与えているんだよ? 君たちはそれだと認識していないようだけれど」


 何ですと?


「共有能力の事かしら?」


 いや、でもそれって……。


「ああ、けれど、さっきと話が違うじゃないかと言いたいんだろう? 共有出来ているのはあくまで魂が融合した副作用であって、ギフトでは無かった筈だと」


 その認識をしていた。間違っていないでしょ?


「間違っていないよ。だから、そこに調整を加えつつ、いくつか共有出来る項目を増やしたんだ」


 なるほど。引き続き説明お願いします。と心の中でペコリと頭を下げる。


「何と言っても先ず、お互いの存在が以前と比べるとクリアに感じられるようになったはずだ。死ぬ前よりも声がはっきり聞こえない? 記憶を覗く時には鮮明に見えるでしょ? ダイアルを調節して周波数がピッタリと合ったラジオのように、君たちはお互いの存在をクリアに認識出来るようになったと思うんだけど」


 言われてみれば確かにそんな気がしなくもない。でも、それ以上に例えの方が気になってしまった。古くて理解できない奴が一定数いそうだ。


「おや? それは失礼。ハルくんが生きた時代はもう少し後の時代だったみたいだね」


「追加要素の説明をお願いしても良いかしら?」


 ライラは構うのが面倒になったらしく、先を進めろと促す。


「魔力量や魔術の才能、実践経験なんかも共有できるようにした。肉体が二つになったから必要だと思って。詳細に伝えるともっと多くなるけど、目ぼしいものはこんなところ。あとは自分たちでどんなことが共有出来るのかを試していくと良い」


 結構増えたのかな? 何となく有用そうだとは分かるんだけどな。


「魔力量と才能に関してはすごいわよ? 魔力量に関して言えば二倍の保有量になると考えると破格と言って良いわ。消費量も二倍になるのでしょうけど、それでも使い方を工夫すればいいだけだもの。才能に関しては言わずもがなね。使える魔術が増えると言う事だもの」


 そう聞くと凄い感じがする。僕は魔術をまだ使ったことが無いから良く分からないんだけど。ん? でも今の状態はライラと魔術を使ったと言う経験を共有出来ていないのでは? 説明と矛盾しているが……。


「それは共有しようと思っていないからさ。意識的共有と無意識的共有の二パターンがあるんだよ。経験を共有するのは意識的共有の方だからだね」


「どういう事?」


「意味自体は深く考える必要はないんだけど……。二つに分けた理由から教えた方が早いかな。例えば、無意識的に他者と経験や記憶、感情をを共有し続けた場合、自分の意識がどうなるか想像がつくかい?」


 それは……やがて僕と言う意識が希薄になっていくと考えられる。多分僕だけでなくライラも同様のはずだ。両者が混じり合って、やがてはどちらでも無くなる。先ほどのベン図の例えで言うならば完全に灰色となると言う事だろう。


「正解だ。けれど、そんなことは君たちも望んでないでしょ? 私も君たちがそうなるのを見るのは嫌だったから、無意識的に共有するものには制限を掛けた」


 僕らに配慮した結果だったって事ね。「なら最初からそんな能力にするなよ」と言いたい気はするが、便利な能力であることには変わりがないので、僕らの使い方次第なのだと思っておこう。


「何故共有されない項目があるのかは理解したわ」


「良かったよ。君たちの使い方次第ではかなり便利なはずだ。なんせ片方が覚えた魔術を始めとする知識と経験はもう片方も使えるのだから。単純に計算しても二倍の効率で物事を進めていけるからね」


 そう言う使い方ね。ゲームみたいな発想する奴ですな。便利な使い方を教えてくれるのも此方としては有難いけど。


「あ、便利とは言い難いけど、有用な能力ならもう一つあるんだよ。片方の肉体が滅んでも、もう片方が生きていれば精神は残るんだ。丁度ハルがルナに憑依していた時の様に」


 あの感覚に懐かしさも感じるけど、流石に実践する気にはなれないかな?


「当たり前でしょう? 冗談でも言っちゃ駄目よ? ディアが死んだら私も死ぬから」


「……了解」


 一瞬「どう反応すれば良いの? ヤンデレじゃん?」と思ったが、よくよく考えて見るとついこの間(一年前)も一緒に死んだんだから、今更な話だった。


「はいはい、御馳走様。私が教えたのは、確認しようがないからだ。だから教えたよ」


「ならば私たちの本当に死が訪れるのは両方が死んだときと言う認識で良いのかしら?」


「指摘の通りだ。あとは……そうだね、ギフトが有効な範囲についても考えてみたことはある?」


 え? 効果範囲なんてあるの? 僕の場合はそう言われて気づいたくらいだけど、確かに言われれば気になってくるな。


「そうね。ルナの時はそもそも離れようが無かったから、そんなこと考えつきもしなかったのだし、今は生まれたばかりだから試しようがないもの。教えてもらえるのかしら?」


「まぁ、と言うか自分で聞いておいて何なんだけど別に範囲の制限なんてないよね」


 なら、何で聞いたんや? ライラさんもちょっと怒ってるもの。無意味な質問をするんじゃないと言いたい。


「疑問に思って欲しかったんだよ。そのギフトがどういうものであるかを。君たちは常に互いの存在を感じていられるでしょ?」


 うん? 確かにライラの存在は常に感じている。分からなかったのは先ほど目覚めた時くらい。あとは常にライラが傍にいる感じがする。だがそれがどうしたと言うのだろう?


「何が起きようと、どこにいようとも君たちは互いの存在を感じていられるんだ。例え片方が、異世界に行こうと、時空の果てまで行ったとしても」


「なるほど、正しく制限がないのね?」


「ああ」


 なんか二人で分かり合っている感じだが、僕にも何となくは理解出来てきた。制限なしなんて物理的な距離の話とばかりと思っていたのだが、概念的な制限無しらしい。話を聞く限りだと凄まじいな、実際にそうなるケースがあるのかどうかは知らないけれど。


「あんまりにも制限が無さ過ぎて、そもそもこのギフト君たちが死んでも私は回収することが出来ないね。だって死んでも一緒って事だからさ」


 そんなことを言って「はっはっは!」と笑い出した神。話を聞くに、どうやら自分で僕らにこのギフトを与えたにも関わらず、回収出来ないと言う。まとめるとギフトの制御に失敗したと言う認識で良いのだろうか?


「違う、元々魂が融合していたところにギフトを与えたら暴走したってだけ」


 やらかしじゃん。また生まれ変わってもギフトを持ったままでって事でしょ?


「そうだね、転生すればこのギフトを持ったままに転生する。何度繰り返そうともね。そうして一緒に生まれてくるんだ。そこには理由はない。ただ一緒に生まれる、いわば因果律へ干渉していると言って良い」


 訳が分からないよ。


「私たちが双子で生まれて来たのもそう言うことなのかしら?」


「ギフトの力の影響だね」


 なるほど。


「話をそらして悪いのだけれど、私たちは本当に彼らの子どもなの? 気になっていたのよ。ルナとハルと言う魂が生まれ変わるために、本来お母様の胎内にいた子どもたちに取り憑き、そして殺しまったのではないかと。」


「アレの様に?」


 頷いたライラの瞳を神は覗きこんでそう言う。転生したと気づき、ここに来てから神の話を聞いていく中で気にしていたのだ。何故かと言えば、彼女が忌み嫌うアレと似たような行いだと言うことと、何より自分に笑顔を向けてくるあの両親を裏切っているようで心苦しく感じてもいたから。


「君らは確かに彼らの子だ。安心して良い」


 良かった。


「生まれるついでに聞きたいことが、僕らの意識が覚醒するまでにラグがあったでしょ? 理由は分かる?」


 僕らが生まれてから少なくとも数日は経過していると思われる。何故そこから数日経ってからの覚醒だったのだろうか?


「相応しい時期に意識が目覚めたってだけの話だよ。生まれた直後で何か出来るわけでもないだろう? 意識が肉体によって支配される場合もあるってことさ。神殿に来る時に、あっさりと眠ったのと同じくね」


 そう言うことか。極論、意識だけで目覚められると言うのならば、ママのお腹の中にいる時から起きていないとおかしいわけである。だが、そんなことは有り得ない。神の言うように目覚めるべき時に目覚めたってことなのだろう。


「分かってくれたようで何より。そんなわけで、君たちは生まれ変わってもギフトが失われると言うことはないんだ。記憶が残るかどうかは少し保留中だけど」


 今回記憶が残されているのはアレを何とかする特例と言う事か。かと言って、転生してから記憶が無くなれば、精神は幼くなるのだから、こんな能力持て余しそうなんだが……。ま、この神がどういう判断を下すのかを見守るとしよう。


「とりあえずここまでがギフトの説明とも言って良いだろう。名前を付けたんだけど、聞く?」


 そう言えばギフトは総称って言ってたもんな。けれどそうなってくると別のギフトを持っている人がいる、もしくはいたと言い換えることが出来ないか? 総称されているぐらいなんだから。


「おや、勘が良い。その通りだよ。さらに言うならば君たちはその一つを既に知っているんだけど……何か分かるかい?」


「魔王かしら?」


 僕が考える前にライラが即答してしまった。


「正解だ。〈魔王〉というのはギフトなんだよ。勇者に対処することを目的とした、ね。性格や強さを考慮して与えているんだ。今回の〈魔王〉の所持者は奇しくも君らの父親であるラーメスだ。そうなったのは本当に偶然なんだけど……」


 意図的かと思ってた。偶然だったんかい。


「ま、それは良いとして、〈魔王〉のギフトを与えるのは、それに相応しい意志と力のあるものだけだ。君らの場合とは異なりアレが勇者の召喚を試みていると分かった時点で後天的に与える能力でもあるね」


 後天的なケースもあるのか。何でもありだな。


「そんなわけで君らの方もただギフトと呼ぶのも味気ないじゃないか。だから名前を付けたってわけ。聞きたい?」


 そんな風に聞かれると拒否したくなるのが人情ってもの何だが……。まぁ、ここは神様のネーミングセンスも確かめてみたい気もするからな、拝聴させていただこう。


「〈死さえ二人は分かち得ず〉」


 誰か薬を用意せい! 神様は病を患っておられる!


「残念ながらこの病は中二病といって、時間経過で様子を見るしか手立てはないのよ。後に黒歴史という名の後遺症を残すこともあるから本当に恐ろしい病気なのだけれど……。不憫ね」


 ライラまでボケに乗っかってくれた。それだけ酷いセンスだと言うことだろう。


「君たちなかなか酷いじゃないか。これでも頑張って考えたんだよ? 褒めてほしいくらいだったのに」


「自覚無しね……」


 これはしばらく放置しておいた方が良いだろうな。どちらにしても後になって恥ずかしさから後悔するのは間違いないんだから。だがよくよく考えて見ると〈魔王〉と言うギフトは広く知られているギフト名なのだろう。もしかすると僕らも今のギフト名を説明しないといけないのか? 大分恥ずかしい。


「あー、どうだろ? 〈魔王〉の方は意識的に名乗っている面も強いんだよ。ほら、ヒト至上の人達に対抗するための旗頭が必要でしょ? 歴代の所有者が名乗り出ていることで知られていると言えるかな」


 そう言うことね。なら僕らは無理に言う必要はないって事だ。でもそもそもギフト持ちってどう判断するんだろ? 特に今の話を聞く限りだと〈魔王〉なんかは、偽物も出てきそうだし。


「証明くらいなら簡単だよ、神殿の坊主どもを前にして光らせるのさ。色々と問題はあるけれど、大体これで良いかな。あとはケースバイケースだ」


 ああ、僕らも受けたあの光ね。


「ならば私たちもギフト所有者だとあの場にいた者には分かってしまったという訳ね?」


 ライラがちょっと怒り気味にそう告げる。バレたらデメリットも大きそうだもんね。〈魔王〉でもない限りは。


「甘んじて受け入れてくれたまえ」


 ふざけんな。


「それで納得してくれたとこ悪いんだけど、君たちギフトが一つと思っていないよね?」


 僕らがまだ納得していないと言うのに、違う話をしだしたと思ったら、どうも雲行きがあやしい。この話し方だともう一個ギフトを与えたと言っているように聞こえるのだが?


「そうだよ?」


 開き直ってやがる。だが僕が困惑しているのとは裏腹に神様の開き直りにも動じない女性がここに一人。


「貰えるというなら貰っておくわ」


 ライラちゃん、あなた逞しくなったわね……。


「ディア、良く考えてみて? 先ほどのギフトの能力なんかじゃ、アレを倒す事は出来ないと思わなくって? アレの魔力を見たことがあるのだから分かるでしょう?」


 そう言われると確かにライラの言う通りだろう。


「敵わないと言う認識は間違っていないけど、それを理由にもう一つ与えたわけでは無いんだ。じゃあ理由は何かって言うと、君ら二人に頼んでるのに一つしかギフトをあげないって何か変じゃない? だからだね。一つ目と同様にもう与えてあるから事後承諾と言う形にはなるんだけどね」


 変なんて理由でさらにもう一つギフトをくれるのか……。良く分からない神様だ。


「はぁ、もう良いわ。それで? どんな能力なの?」


「魔眼だ」


 中二の鉄板キター。どっちの眼が魔眼なんですか?


「期待させて悪いけれど、どっちも魔眼だね。左と右の眼で効果が違う」


 ふむ、どこぞの忍者漫画に出てくる万華鏡なんちゃらみたいだな。


「眼に関する能力なんてありふれてるよ。意識しなかったとは言わないけど、能力は全く違うからパクリとは言わないでね」


 意識はしたんだ……。


「能力の説明をなさいな」


「そうだったね。左が〈月の眼〉と言って、能力は分析、治癒、守護だ。分析はそのままだけど、見たものを調べることができる、自分たちで試すのが一番分かるだろう。次に治癒。これは簡単だね。そういう能力が使える。守護も同様だ。イメージとしては、見えないバリアーみたいなものが体全体を覆うんだ。とりあえず左眼はこんな感じ、質問ある?」


「どうやって使うのかしら? 意識するだけで良いの?」


「眼に魔力を集中させるんだ。別に持てる魔力全てを集中させる必要はない。ただ、意識的に集めて特定の能力を行使しようと言う意思があれば、集められた魔力を代償に発動する」


 ふむ、魔術と魔力を未だ扱っていない僕だから想像しにくかったようだが、ライラの方は理解出来ているらしい。実際に使う時にでも教えて貰うことにしよう。


「効果によっては大量に魔力を消費することもあるから、それには注意が必要だよ」


 特に僕は注意が必要だろう。


「次の質問、それらの能力は誰に対して使えるの? 自分たちにだけかしら?」


「〈月の眼〉の全ての能力は他人に対して行使することが出来る。調べ、治し、守ることが出来る」


 これは予想していた範疇の答えだ。ライラもそうだと予想しつつ確認のために聞いているに過ぎない。


「じゃあ次の質問、〈月の眼〉の治癒と治癒魔術にはどんな違いがあるのかしら?」


 そう言えば治癒魔術と言うものもあるのか。完全に役割が被っている気がしなくもないんだが……。でも見て魔力を流せばいい〈月の眼〉の方が便利そうではあるな。


「そうだね、ディアの感想は間違ってないよ。基本的にはギフトの方が遥かに有用だろう。ただあっちは魔術でこっちはギフト。効果は似ているようで本質は違うものだ」


 分かったような分からないような。ただ結論としては違うと言うことで良いのだろう。


「じゃあ最後よ。分析はどんなものを分析できるの、どんなふうに結果が分かるの?」


「分析をかけられるのはほぼ全てと言って良いだろうね。結果は君たちに理解できる形で頭の中に情報が入ってくる。理解できなかったのならば失敗と判断すべきだろう」


「失敗はあるのね?」


「ものによっては」


 どういうものだよ。具体的な説明が欲しいんじゃが?


「答えにはなっていないけれど、人の理解出来る範囲を大きく超えたものは分析出来ない。例えば私のことも分析ができないだろう。ただ大抵の物は出来ると思うよ、一応の例外はあるって事だけを覚えておいて欲しい。〈月の眼〉についての説明はこれくらいで良い?」


「ええ。私もディアも今のところ思いついた質問はこれくらいよ」


「おっけー。何かあればその都度相談してくれればいいからさ。じゃ、次は右眼について話を進めていくことにしよう。右眼は〈太陽の眼〉と言って、簡単に説明するとレーザーを放つんだ。ま、あくまでもデフォルトの設定だ」


 デフォルトと言うくらいだから、他にも色々な攻撃が出来ると言うことだろう。試してみないことには分からないとは思うが。


「〈太陽の眼〉が、アレへの主な攻撃手段と言うわけね。今まで与えて来た能力の中に攻撃手段は含まれていなかったもの。それが必要となるのでしょう?」


 思い返してみれば確かに。そのほとんどが便利ではあったものの、攻撃と呼べるようなものは一つもなかったな。アレを排除しろって言っている割には。


「確かに攻撃がアレに通用するのかと言えば肯定を返すよ? けれど、排除出来るかと言われると厳しいと言わざるを得ないね」


「どういう事かしら?」


 またライラがちょっとキレ気味になっている。でも、理解出来ないわけではない。倒せと言っているにも関わらず、倒せないような能力を与えて来たと言う事なのだから。


「まぁ、落ち着いて。何も無理と言っているわけじゃ無い。最初からポテンシャルの全てを発揮するわけではないと言うことさ。だから、使ってコツを掴むなり、慣れるなりする必要があると言うだけ。〈太陽の眼〉に限った話じゃなく、〈月の眼〉にも同様のことが言える」


 それ重要じゃん。〈月の眼〉に関して話すときに言っといて欲しかった。けれど〈死さえ二人は分かち得ず〉に関しての言及はなかったことから、こちらの方はやはり例外らしい。


「ああ、例外だよ。そもそもギフトありきの力ではないのだから」


 それもそっか。


「納得してくれたところで〈太陽の眼〉の説明に戻ろうか。さっきも言ったようにレーザーと言うのはデフォルトの設定に過ぎない。この眼の力の本質は言わば破壊という概念そのものだ。だからそれに属するような攻撃であれば、思い描いた通りの攻撃をしてくれるはずだ。勿論、それに見合った魔力は消費する事になるんだけれどね」


 代価を払うのは当然のことってわけか。承知致しましたとも。


「説明しただけだとどうしても分からないだろうから、実際に君たちの方で試すと良い。それがアレを倒すことにも繋がるんだろうし」


 両眼の力は融合させることが出来るのだろうか? つまりは両方の眼を使うことで別の能力になったりしないのかな?


「ロマンだねー。言いたいことは分かる。でも、現状だとまず無理だろう。言った様に使っているうちにポテンシャルを発揮するようになるから、考えるのはそれからでも遅くないだろうさ」


 「お前にはまだ早い」と言うことらしい、残念。よく考えて見れば右眼と左眼でギフト二つになってない? ギフトをもう一つって言ってたんだけど……。ライラと僕どっちか一つとかそう言うことだろうか?


「ああ、それについて説明は要らないと思ってたんだけど……。ざっくり言えば先ほど魔眼の二つは両眼で一つのギフトと言う扱いだ。ライラとディアの二人とも二つの魔眼を使うことが可能だよ」


 おお、良かった。どっちか片方の能力なんて言われても困っていたからな。


「ロマンついでに言っておくと、魔眼のギフトを使っている時には瞳の色が変わる仕様にしておいた。〈月の眼〉は銀色、〈太陽の眼〉は金色に。それぞれ馴染み深い色だし、魔眼と言う以上は色くらい変わらないと雰囲気でないでしょ?」


「どうしてこう、余計なことにばかり力を入れるのかしら?」


 神様の変なこだわりにライラが呆れたと言った感じで呟いた。

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