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悪役令嬢と道連れ転生  作者: ドクトルゴトー
0章 憑依と処刑
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プロローグ

 読んで頂きありがとうございます。

 初投稿で、拙い表現や文章等多々あるかとは存じますが、楽しんで頂ければ幸いです。

『何もすることが無くて暇ね……』


 一人の令嬢が僕に呟いている。確かに何もすることが無いと言う意味では間違っていないのだろう。但し、今の呟きが牢屋の中と言う特殊な環境に居るにも関わらず発せられたものでなければ、の話。どうしてこんな環境に居ると言うのにこれほど落ち着いていられるのか、これが分からない。


 こうして彼女の様子を説明している僕だが、決して一緒に牢屋に入っていると言う訳ではない。男女が一緒に容れられるなんてこと、どこの世界であっても多分ないだろう。ならば他の可能性を当たるとすると、僕が看守という事も考えられるのだが、そう言う訳でもない。そもそも彼女の今の言葉は、実際に言葉として発したわけではないので、他人には届かないものなのだ。そう、本来であれば。


 僕は彼女の今の言葉を聞けるような状態にある。ならば具体的にどんな状況かと言うと……。


『私に取り憑いているのよ、だから声を発さない会話だって可能という事ね。本当ならば、取り憑かれている事を嘆くべきなのかも知れないけれど、私に限っては例外と言って良いでしょう。貴方と言う存在が取り憑き、話すことが可能だったからこそ、辛うじて退屈せずに済んでいるのですもの』


 そもそも、牢屋の中に入っている自分の現状を嘆くべきでは? 


『もうじき処刑され、死を迎えるのだから悩んでいたところでしょうがないでしょう?』


 この令嬢は些か開き直り過ぎていやしないだろうか?


『そうは言っても、他にどうしたら良いと言うのかしら? 泣き叫んだって……看守を喜ばせるだけね。散々馬鹿にしてしまったから、彼らも同情したりはしないでしょうし。私だってあいつらを喜ばせるのなんて御免なの』


 馬鹿にしなければ良かっただけなんだよなぁ……。


『元々私の境遇に同情なんてする奴らじゃなかったのよ。優しい性格をしているようなら、そもそも煽ってないの』


 本当はどっちが悪いのか分からないのだが、確かにこのご令嬢は理由も無く他人を貶めたりする性格はしていないので、恐らく看守たちの性格が悪いのは本当だと思われる。事実ここを見張っている奴も、判断する限りでは中々良い性格をしているみたいだし。


『そうでしょう?』


 だからと言って、その看守で遊ぶこの人も十分性格悪いんだが。


『失礼ね。そもそもこの世界について説明してあげたのはどこの誰だと思っているの? 受けた恩を忘れてしまったのかしら? 何なら私が死ぬのを待たずして、今直ぐにでも成仏させてあげたって、私は一向に構わなくてよ?』


 それは止めて!


『大体、先程から人のことを、やれ令嬢だ、やれこの人だときちんと名前で呼びなさいな』


『ははっ! ルナ様、申し訳ありませぬ』


『宜しい、許して遣わす』


 ノリが良い。僕の時代劇ごっこに速攻で乗ってくるんだから、余程暇していたと見える。本当に何もすることが無かったみたいだから仕方ないちゃ、仕方ないのかも知れないが。


『でも本当は、成仏のさせ方なんて知らないのよね』


 知らんのかい。


 まずもってこの世界には成仏と言う概念があるのかどうか、疑問ではあるんだけどな。仏教なんてものは無いのだから。


 改めて僕が今置かれている現状を簡単に説明したいと思う。僕は既に死んでいる。そんな状態で何故か異世界に転移することになったのだ。いや、ちょっと違うな? どう表現するのが適当だろう……。


『死んで目が覚めたら、どう言う訳か意識だけの状態で私に憑いていた。話を聞いてみると、何とそこは異世界だったと言うのが正しいでしょうね』


 さんくす。


 取り憑いた先が僕と話している彼女、ルナ様ことルナ・ノワールと言う令嬢だった訳だ。それに加えて、どう言う訳か普通に会話出来たりもする。ルナ様に至っては、僕の思考まで読めるのだから何とも不思議な状態にあると言って良いだろう。


 ついでに、ルナ様の五感も共有している。いや、この場合は肉体の無い僕が一方的に拝借しているとするのが適切か。今の彼女の目に映っているのは、鉄格子。先程の会話から、もう察しているとは思うが、この令嬢は囚われていて、もっと言えば処刑寸前だ。


 正確にいつという事までは分からないが、その日は遠くないと思われる。そんな状況にあると言うのに、そんな雰囲気を微塵も感じさせないくらいにはマイペースだ。


『ハルの記憶を覗き観て、異世界を楽しむと言うことも出来なくはないのだけれど』


 人の記憶は見せもんちゃうぞ?


『知っているわよ、だから止しているのじゃない。最初にやった時に反省したのよ、あまり見ない方が良いかも知れないって』


 やっぱり、あれで懲りていたのか。僕がそう考えると、彼女から『ええ』と返ってくる。


 と言うのも、僕が憑いた当初、互いの為人を確認するためという事で、彼女は僕に自身の生涯を話してくれたのだ。逆に僕が彼女に死ぬまでの説明をすると言う段階で、僕が説明するよりも自分で覗いた方が早いと、僕の記憶を覗いたのだ。そんなことまで出来るのかと不思議に思うかも知れないが、ここが異世界であること、そうして今のおかしな状況を鑑みるとどうやら可能だったようだ。


 しかし、彼女はその一件で懲りたらしい。どうしてかと言うと恐らくは僕の死に様にあるのだろう。


『滅多刺しだったものね。予定されている私の処刑方法がマシかなと思えるほどに』


 いや、斬首も中々だと思うんだが? まぁ、不毛な争いになりそうなのでこれ以上の言及は止めておくつもりだが。


『そんな理由で、ハルの記憶を下手に掘り起こしてはいけないと考えているの』


 人の記憶を危険物の様に言いおってからに……。だが、否定出来ない部分もあるのでしょうが無い。じゃあ、退屈しのぎに僕らがこんな風に駄弁るような間柄になるまでの経緯でも振り返ることにしましょうか?


『他に、やることが無いものね』


 ルナ様の承認も得た。では、僕が死んで、ルナ様に取り憑いたところから始めることにしよう。 


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