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作者目線で語ってみたい

作者目線で「婚約破棄する王子様」について語ってみたい

作者: 寒天

 こんなの書いている暇があったら更新ペース落としている連載の続きを書け!

 と怒られそうな寒天と申します。


 今回は短めに、一読者として読みあさった結果しかしどうしても気になる問題……恋愛ジャンルの鉄板中の鉄板『婚約破棄する王子』についてちょっと語りたいなと。

 恋愛ジャンルなんて短編の、しかも恋愛という皮を被ったギャグしか書いていないお前が何の視点でそんなこと語れるんだって私の過去作を見た方は思うでしょうし、実際私も思うんですが、この問題はわりとあらゆるジャンルに共通する問題だなーと思ったということで今回ちょっとキーボード叩きたくなった次第です。

 理由? 作者サイドの方ならば心当たりがあるかもしれない「連載ものを書いていると全く関係ないものを書きたくなる病」です。これが悪化すると連載放りだして新連載始めたりする恐れもあるので、突然エッセイ書き出すくらいならまだ許されるはず……。


 なんて自己弁護は置いておいて、じゃあ何について書くのかといきなりはっきりと言ってしまいますが、ズバリ


『婚約破棄宣言する王子様って、王子様のくせにバカというか無知過ぎるんじゃない?』


 って話です。


 はい、そこの『そこは触れちゃダメなところ!』って画面に向かってツッコミいれたアナタ。

 多分アナタはこれから私がダラダラ語ることを大体わかっている人だと思いますが、せっかくなのでお付き合いいだたけると有り難いです。


 では、まずなんでそんな疑問を持つのかと説明する前に、一応『婚約破棄する王子様とはなんぞや?』について軽く説明しておきましょう。

 その手の話は既に読破しているって人には今更な語りですので、◆と◆の間は読み飛ばしてもいいですよ?

 以下の流れをわかる人にわかるように言いますと『もう遅い!』とはなんぞやってことなので。



 というわけで解説しますが、もちろん例外はありますが、テンプレ的な婚約破棄する王子様ってのは


『ヒロインちゃんと浮気して真実の愛を見つけた王子様が一方的に主人公の令嬢との婚約撤回を宣言する』


 って話です。

 そこから主人公の令嬢(大抵は悪役令嬢とか聖女とか)が反撃に出るってことで話が進んでいくわけですが、その反撃の内容も大体テンプレ化しておりまして、ざっくり纏めて言うと


『主人公令嬢の力で今まで王子様でいられたことに気がつかなかった愚かな王子は浮気相手のヒロインちゃんと共に没落する』


 って流れです。

 その主人公令嬢の力ってのを例に挙げると


・実家の財力

―王家に金が無く、主人公令嬢との婚約で金を貸してもらっていたのがなくなり財政破綻。平たく言えば王子自身の力では王子の地位を守れませんタイプ

・特殊能力

―魔物や呪いなどのファンタジー災害に対抗できる聖女などを代表として、そもそも主人公令嬢がいなければ物理的に生きていくことができないタイプ。主人公を追い出したら守ってくれる人がいなくなり国ごと消滅もあり得る。

・人気や人望

―完璧な淑女として貴族達から高い評価を得ていた主人公令嬢を捨てたことで王子様自身の人望が地の底に落ちて王位継承争いから脱落する、そのまま廃嫡されるタイプ


 ちょっと例外も挙げておくと


・婚約破棄後に出会った男が超強い

―これは主人公令嬢自身の力ではありませんが、婚約破棄されてフリーになった主人公令嬢に実は恋い焦がれていた王子様より格上のイケメンが王子様を成敗するタイプ。

・浮気相手のヒロインちゃんがどうしようもない

―浮気中は魅力的に見えていたらしいヒロインちゃんが実はどうしようもないアホだったり尻軽だったりで、王子様がセルフ後悔するタイプ。そりゃまあ婚約者がいる王子に粉かけるんだからまともなわけはない。


 などがあります。

 もちろん例外はいろいろありますが、基本的にこの辺のことを抑えて貰えれば今後の話はわかると思います。

 とにかく『王子様は主人公令嬢のことを自分に必要不可欠な存在であり、敵に回しては決していけないことを知らずにやらかしてしまった』ってのが基本的な話の流れです。

 まあ要するにほとんど浮気が原因なんですけども。


 とにかくやらかした後に復縁を求めてきても「もう遅い!」ってのがタイトルにまで浸食している流行のアレですね。

 主人公を男にして婚約者ではなく仲間にすればファンタジージャンルの『パーティ追放もの』になります。追放の理由はもちろん浮気ではないのでまたいろいろあるのですが、それは本題から外れるので止めておきましょう。



 読み飛ばした方、1000字ぶりです。


 まあとにかく『王子様、婚約者とその実家がなければ没落一直線』ってのが大前提にあるわけですね、この手の話は。

 そこで、一読者の視点からすると非常に不思議なのですが……何で王子様、そんなこと知らないの?

 この手の断罪から始まる逆転ものって、大抵の場合王子とその取り巻きを除いて『主人公令嬢との婚約を破棄するなんて愚かすぎる!』って感想を周りは持つんですよ。

 実際、周りがそう思ってくれずに満場一致で「あの女婚約破棄されたんだ。当然だよねアハハハハ」じゃ「主人公令嬢に問題がありました。これは正当な判断です」で話が終わってしまいますし。

 いやまあ、その場合は時間逆行とかで主人公令嬢が反省して~ってパターンに派生しますが、それはまた別の話なので置いておきます。


 とにかくですね?

 国家の貴族間パワーバランスにせよ聖女的な不思議パワーにせよ、王子は婚約者である主人公令嬢を手放してはいけないと誰でも知っている、というか知らない方がおかしいってくらいの公然の事実として認識されているくらいに有名な話であることが多いんですよ。

 まあ不思議パワーの方は『実際に主人公がいなくなるまでいなくなるとどうなるのか聖女である主人公以外には誰にもわからなかった』ってパターンもありますが、それは例外と思ってください。既存の知識ではどうにもならない系の問題は主題から外れますので。


 とにかく、周りが全員知っているのに王子とその取り巻きだけが知らない――って、普通に考えてあり得ないでしょう。

 無知で無学な貧民が勘違いして暴れたーならわかりますが、相手は王子様。産まれたときから国内で最高峰の教育を受け、最高の教養を持つ存在。

 最高の教師の元で未来の王としての知識を学んだ存在……なのに国内最高の力を持つ主人公令嬢の実家のことすら知らなかった。教育とは何だったのだろうか?

 こんなの学ぶ意欲とか以前の話ですよ。国内のパワーバランスの調整者である王になるものとして、1+1を覚える前に大切にしなければならない家のことくらいは教わるべきことですよ。

 まあ甘やかされて育った超絶バカ王族の存在自体は史実にも結構ありますので、あり得ないとは言わないんですが……それにしたって、王子や王家の失墜を目論む黒幕が裏に潜んでいるって言われなきゃ納得できないくらいにあまりにもアホすぎるケースが多い。

 断罪宣言から10分で形勢逆転されるくらいにお粗末で幼稚な発想を取り巻き全員含めて行っているとか、むしろ誰か陰謀を疑えと言いたくなっても罰は当たらないと思います。

 実際、黒幕が王子の教育を意図的にねじ曲げていた~なんて展開もいくらか見られますしね。これは変だと思っているのは私だけではないはずです。




 じゃあ、なんでそんなことになるのか? というのを作者目線でお話ししましょうか。

 ある意味ここからが本番。


 ま、この手の話は何も恋愛ジャンルだけで行われていることではなく、あらゆるジャンルで……それこそなろうの外でも、何百何千年も昔から書かれ続けてきた物語の基本なんですよ。

 それは「勧善懲悪」というストーリーです。まだ習っていないという子のため念のため説明しておきますと「かんぜんちょうあく」と読みます。字の通り、意味は善を助け悪をやっつけるってことです。断じて完全超悪ではありません。


 まあ要するに、悪い奴をヒーローがやっつけるってことですね。

 この悪い奴が王子様であり、ヒーローが主人公令嬢、あるいはその恋人になるわけです。

 何せ物語としては、やっつけられる悪役なんてものはとにかくボコボコのメタメタのギタギタにする対象ですからね。バットを持ったガキ大将のごとしですからね。

 人間って奴は暴力を愛する一面を持っており、大義名分さえあれば、やっつけていい悪人と言われれば嬉々としてその凶暴性を発揮しそれに快感を得るようにできている生き物です。ぶっちゃけ自分の人生には全く無関係である有名人の不祥事とかを狂気的な勢いで叩きまくるあれです。

 その心理を娯楽として活用するのが勧善懲悪であり、そういった目線で考えるなら殴られ役の王子様はとにかく『愚かで無知でどれだけボロクソに言っても罪悪感を覚えないくらいのクソ野郎』であってこそなわけです。


 その上で、日々量産されている王子様に共通するクソ野郎ポイント、言い換えれば万人がムカつくポイントは


・浮気をした(明らかにこいつが悪いという傷持ち)

・身の程を知らない(雑魚のくせに調子に乗っている)

・顔だけは良(中身が無いくせに外側だけは美しい+どうせ壊すなら綺麗な方がより快感)

・生まれ持った地位は最高ランク(本人の功績ではないくせに偉そう+より高いところから落とす方がダメージはでかい)


 ってなところでしょう。

 纏めて言えば『中身は無いくせに外側だけは親の力で整っている上に後ろめたいところがあるのを隠そうとイキリ倒している奴』ってことです。

 ……こらそこ! 親を神様に、身近な人間を元の世界の家族に変換しない。


 ま、とにかくこういう奴を悪役に据えて殴る。これだけで多くの人は手軽にスカッとした気分を味わえるってことです。スカッとナーロッパなわけです。 

 これは恋愛ジャンル以外の悪役にも同じことが言えます。オブラート全部ぶち破って表現すれば『ぶん殴ったらスッキリする相手』ということなので、このアホ王子様理論は創作活動において重要な概念と言えるでしょう。

 主人公がいなければ今はSランクパーティーでもあっという間に崩壊するくせに嫉妬やら増長やらで追い出して落ちぶれるイケメン勇者、とかこのアホ王子理論とやっていることは全く同じですから。


 ただ、ここまで言って疑問に思った人もいるかもしれません。

 それはわかったけど、最初の王子様があまりにも馬鹿すぎるって説明になってないよねって。

 事実、ムカつく敵役として王子様を配置するのは物語としてよくある手法ではありますが、別にアホにする必要はありません。

 身の程知らずって点からは少し外れてしまいますが、何らかの理由で主人公令嬢が邪魔になったので狡猾な手段で消そうとする~みたいなのでも十分悪役として成立しますし、むしろ悪人としてより深みが出ることでしょう。

 強かで狡猾かつ残忍、自分の欲望のためなら婚約者に謂われのない罪を着せて消すことも躊躇わない悪の王子とか、打ち倒したときの爽快感は半端じゃないと思います。

 要はクソ野郎って認識を残したまま違和感覚えるほどのアホではないようにすればいいだけですから。


 じゃあなんで、そんな脳の病気を疑うレベルでアホ王子ばっかり量産されているのか……といえば、まあアレです。

 難しいんですよ、一般人が思いつく程度の穴は塞いでいる悪を論破するとか、いわゆるカリスマがある悪役を生み出すのって。

 皆さんも、人気のある悪役って言われればいろいろ浮かぶものがあると思います。時には人気投票で主人公を超えてしまう賢く強い悪のカリスマ。

 が、その手のキャラは基本的に濃いんですよ。描写するのが難しく、言動一つ一つに常人を超えた何かを求められる。ヒーロー側なら倫理観を大切にして熱い台詞を用意すれば様になりますが、悪のカリスマとなると倫理なんて鼻で笑って非道を行うという、一般的に嫌悪感を感じさせることを大物としてオーラを崩さないままやらなければならない。最後には負けなければいけない以上隙は用意しなければいけないわけですが、一歩間違えればクソバカな小物にいつ成り下がってもおかしくないキャラ。それを描写するってのは、作者としては中々に難易度が高いものです。

 論理的に矛盾しない行動を取るのはもちろん、悪には悪の筋があるというか、大義があるというか、信念があるというか……とにかく、そういった何かが求められることは確実です。

 そんなの描写しようと思ったら、文字数かさみます。長編で描写するのならばまだ挑戦することも可能ですが、短編でそんなの作れるのは一握りの天才だけです。


 アホ王子理論でキャラを作るってのはその逆です。

 細かい事なんて関係ない、とにかく読者に「こいつ殺してぇ」って思わせる勢い特化の構成であり、余計なことを考えさせない腕力で面白さを作り出すことができれば成功ですので、掴みとしては優秀なわけですね。

 いわゆる何も考えずに楽しめる話。何かを考えられたら失敗ですので、何も考えるなとパワーで押し切る構成なのです。


 反面、このアホ王子理論キャラ、実は長編とはあまり相性が良いものでは無いと思います。

 とにかく「お手軽にぶっ飛ばせる無能」というのが骨子ですので、長編でやっつけるまでに時間をかければかけるほど読者側の「こんなカスに何手間取ってんだ?」って思いが強くなっていきます。

 その間にジャンル恋愛の本来のメイン、新しく出会ったイケメンとイチャイチャ生活を送るのも結構ですが、読者的には速攻で殺してやりたいアホ王子理論キャラを放置しているわけで、読者と作者の温度差が広まっていく恐れが高いです。

 というか、このアホ王子理論は掴みの性能が高すぎてそっちが主役になってしまうというか、主人公令嬢の幸せなんぞよりもアホ王子の凋落にしか目が行かなくなる劇物なんですよってことです。

 「恋愛ジャンルで恋愛して何が悪い!」VS「うるせぇこっちは都合の良いイケメンとのイチャイチャなんぞよりもこの王子を殺したいんじゃ!」

 っていう、焼き肉屋に来た菜食主義者みたいな迷惑な客を量産しかねないってことです。


 また、このエッセイのタイトルにもあるような疑問も持たれますしね。

 短編ならスッキリと爽快感を味わってお終いでも、長編となれば当然世界観がより深く掘り下げられていき、その結果「何でこの王子こんなに無知だったんだ?」ってな当然の違和感に辿り着いてしまうってことです。

 何でと言われればここまでに書いてきたとおり『物語の整合性とかよりもキャラとしての役割をはっきりさせることを優先した工夫です』ってのが最初の疑問の答えになりますが、これはそもそも疑問を持たせてしまった時点で負けって話になるわけですね。



 よって、結論としては、短くスパッと終わらせるならアホ王子理論でいいのでとにかくムカつく奴を持ってくる。

 長く続けるつもりならただ愚かなだけではない、倒すのにそれ相応の準備と覚悟、主人公サイドの成長を見守る必要があるような『設定と言動に矛盾がない』キャラを用意した方がいい――という話でした。


 作者としてはとにかくこれを使うなら「余計なことを考えさせるな! 面白ければそれでいいんだよ!」って主張で作っているわけですので、とにかく面白いものを作るというそれができれば誰も苦労はしないって修羅の道でもあるんですよね、これは……。

 読者視点で言うと、この手の話を読むときは『高級料亭のメニューでなければ満足できない舌の持ち主よりもカップ麺で満足できる舌の持ち主の方が人生は楽しい』って精神で楽しむのが一番平和であると思います。


以上。

なお、ここで語ったあらゆる事に関して科学的で客観的なデータは何一つありません。

あくまでも筆者の超個人的な思い込みのみをソースとしていますので、異論反論どしどしお寄せください。


何か感じるものがあればその他感想や評価(下の☆☆☆☆☆)をいただけると今後の参考になります。


こんなエッセイまで書いておいて、この内容全く関係が無い完全超悪(誤字ではない)な主人公が暴れるファンタジーものを連載中ですので、下のURLかリンクよりよければ見に来てください。


魔王道―封印から復活したら元配下の子孫達が文明も肉体も超退化していたので進化させた。いざ戦うとなったら何故か魔王を殺した人類も退化していた

https://ncode.syosetu.com/n5480gp/

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― 新着の感想 ―
[一言] おっしゃるとおり、婚約破棄する王子様の大部分は著しく頭が残念なんですよね。 なので、もしもまともな人格と知性を持った王子様が婚約破棄するとしたら(なお、破棄される令嬢側に非はないものとする…
[一言] このあたり、大量生産大量消費の状態なんですよね。ざまぁものって。 使い捨ての嗜好品、料理で例えるなら、複雑な味をじっくり堪能する丁寧な料理が淘汰されて、ガツン、単純(過ぎて)濃いけど、後から…
[一言] 王子が代償を覚悟に婚約破棄するならともかく代償をそもそも考えないような愚か者が多すぎる。
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