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LOSERS  作者: まさはる
3/3

lose is win

「じゃあもう出発しちゃうけど、準備できてる?」


「あ、ちょ、ちょっと待った。」


ボサボサの髪に無精に生えた髭、鏡にはまるで、家で一日中ゲームをしてるニートみたいな姿が映っていた。


(流石に少し支度しなきゃまずいよな)


何日かぶりに顔を洗う。ただそれだけなのに、溜まってた色々な不純物が、抜け落ちたような爽快感に溢れた。


髪もキチンと整え、髭もそり、ちゃんとした服も着た。

こんな状態はいつぶりだろうか。1年前に妹が死んでからだから、約1年ぶりだろう。

どこか心も軽くなった。今なら冗談とかも軽く言える気がする。

…ってことは、前は冗談すらまともに言えないような状態だったんだな。

そんなことを考えてると、死神から


「まだぁ〜?」


と声が掛かる。


「あぁ、大丈夫だ。もうできた。」


「じゃあ行っちゃうよ?」


「そういえば、名前をまだ聞いてなかったな。なんて言う名前だ?そもそも死神に名前とかあるのか?」


「死神にだって名前ぐらいあるわよ。私はアリシア。よろしくね誠。あ、今ちょっと可愛い名前だなって思ったでしょ!」


どうやらアリシアは俺の考えてる事は全てお見通しらしい。

やだ、ちょっと恥ずかしいんですけど。


「これからは、あなたのパートナーとなるから。ゲームに負けたら、その場で魂を頂くし、もし勝ち残ることが出来たのなら、私が願いを叶えてあげるわ。」


「お前がやるのかよ。 不安しかないぞ俺。今からでも他のしっかりしてそうな死神に交換してくれないか?」


アリシアが怒ったように、目を見開きながら怒鳴る。


「あなた!今何を基準にそんなこと言ったのよ!」


「見た目と言動」


即答する


「いくら私が少女の姿してるからって、実年齢は6万歳ぐらいよ!というか死神に寿命とかないから!ずっとこの見た目だから!」


おいおいおい、なんてこった。ババアじゃねぇか!いや待てよ、年齢はさておき人間の基準では一応成人してるわけだ。それにこの見た目。合法ロリってことかよ。


「…お前、人間界なら結構好かれるぞ。」


「何の話?心の声聞く限り、良くないことなのは確かなんだけど。まぁそんなことより、早く行くわよ!」


「わかったわかった。」


そこで、ブツンと意識がきれた。






目覚めると、そこはとてつもなく大きいホールのようなところだった。軽く1万人は入りそうだ。

見渡すと、かなりの人がいた。みんながみんな、社会不適合者です、みたいな顔をしていた。俺が言えたことじゃないか。

とりあえず情報を聞くために、周りの人に話を聞いてみることにした。


「なぁ、そこのおじさん。今、一体何が起きてるんだ?」


「あ?なんだお前。俺だって知らねぇよ。いきなり死神を名乗るオネエみたいなやつに、ゲームに参加しないかって言われて、気づいたらここにいたんだよ。」


どうやら俺と同じような状況らしい。それにしても、おねぇって。アリシアは当たり枠だったみたいだな。どなたか分かりませんが、アリシアを派遣してくれた方には感謝感激雨あられでございます。

オネエに食われるとか、死んでも嫌なんだが。そもそも死ぬ訳だが。


そんなどうでもいいことを考えたら、不意にステージのようなところが、ライトスポットで照らされた。

なんだなんだと、会場はどよめいている。

暫くすると、これまたおそらく死神の、初老の紳士のような人物がでてきた。


「皆様!ようこそおいでなさりました!私はこのゲームの開催者、シシャと申します。以後お見知りおきを。」


シシャと名乗る人物が大声で話し始めた。マイクがあるのに、なんでわざわざ大きな声で話し始めるんだこいつ。


「さて、皆様には早速ですがゲームをしてもらいます!しかし、あなた達は敗者。勝つことはとても難しいでしょう。なので、あなた達が1番得意であろうルールを決めました!それは…」



「負けたら勝ち」



「の、ゲームでございます!すなわち、敗北=勝利となるゲームです!負けるのが得意なあなた達にとってはなんとも簡単なゲームでしょう?名付けて、lose gameです!」


おいおいおい、なんだよそのゲーム。

負けたら勝ち!?つまり、勝ったら負けで負けたら勝ちってことかよ。クソややこしい!


「ふざけんな!なんだそのルール!」


「普通のにしろよ!」


まぁ当然だ。文句が出るはず。参加者がみんなクズみたいなやつらばっかだから尚更だ。


「ゲーム作りなおせぇ!」


「そもそもなんで俺たちが、そんなのやらなくちゃいけないんだ!」


「そうだそうだ!」


「…れ」


「あぁん!?聞こえねぇよ!もっとはっきり喋れ!」


「黙れっていってんだよ」


シシャの恐ろしく低く、死を感じさせるその威圧感ある声は、民衆を黙らせるのには十分すぎた。


「お前らはな、敗者なんだよ。」


「ずっと家に籠り、一日中ネットをやり親に迷惑をかけるやつだったり、社会のルールを守らず、人に迷惑をかけることでしか生きられないやつだったり、気力がなく、生きてるか死んでるかも分からないようなやつだったり、そんな敗者共に、生きてる価値なんてあんのかよ。」


俺たちは、何も反論出来ないでいた。


「オホン。おわかりいただけましたかな?では、なにか質問はありますでしょうか!」


沈黙が流れる


「何も無いようですので、只今から始めたいと思います!」


またしても、あのバカでかい声に戻り、いつもの調子を取り戻したシシャに、俺はついていけてなかった。


「では、記念すべき、最初のゲームを発表したいと思います!」


そして、伝えられたゲームに俺は戸惑いを隠せなかった。


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