招待
ここからが本編みたいなものです。ぜひ呼んでくれると嬉しいです。
ある日、俺は最愛の妹を事故で失った。
いつの日も、片時も離れなかった。
妹はいつも俺の心の支えだった。
妹は日下部千秋という。
ドジで、バカで、泣き虫で、でも、誰よりも優しかった。
「大切なものはなくして初めて気づく」ってよく言われるけど、まさにその通りだった。
いつまでもこんな、立ち直れなくて、ほんと俺はダメだな。
「誠、ご飯できたわよ」
親から、声がかかる。
「千秋のことでいつまでも後悔してると、あなた自身も気が病んじゃうわよ。いい加減シャキッとしなさい。…私も辛いんだから。」
分かってる。分かってるんだそんなこと。
でも、どんなに自分を奮い立たせようとしても、気力がまるでわかないんだ。
「せっかく高校2年生で青春真っ盛りなんだから、久しぶりに学校にも行ってみれば?」
「…どうしても、行く気力がわかないんだ。」
「そう…」
そんな会話をしながら、今日も生きてるのか死んでるのか分からないような生活をしている。こんな生活で、生きている価値があるのか?そう自分に何度問いかけただろうか。
結局、俺は妹がいないと何も出来ない、ダメダメなダメ人間。敗者だったんだなぁ。
そんなことを思いながら眠りについた。
その日の夜は、何かいつもと違った。
いつもピカピカと輝き、光を刺してくる月が、今日は優しく全てを包むような光をしていた夜だった。
寝ているとふと、体に何かが乗った気がした。
重い。息がしずらい。何も出来ない。
このまま俺は死ぬのか。でも、不思議と恐怖はない。気力がないからだろうか。
そんなことはどうでもいい。とりあえず状況確認だ。目を開けてみよう。
目を開けるとそこには…
人の形をしているが、羽が生えていて、何やら不穏なオーラを漂わせている、明らかに人ではない何かが俺の体に乗っていた。
「うぉあぁ!!」
よく分からない叫び声と共に思わず飛び起きた。
「なななな、なんなんだよお前…」
さっきまで俺に乗っかってた、人ではない少女が口を開いた。
「なにってあなた。いきなりお前呼ばわりは失礼じゃない?」
「どう考えてもいきなり乗っかってる方が失礼だろ。」
「そういう冷静なツッコミいいから。私が誰だか知りたくないの!?」
「ま、まぁ。知りたいか知りたくないかで言われると知りたくはない。なんか面倒くさそうなことに巻き込まれる予感がする。」
「何それ!?意味わかんない!」
少女は呆れながら怒った仕草をしている。
ホントなんなんだ。俺はついに幻覚でも見始めたのか?
そんなことを考えてると、少女が驚くべきことを発言した。
「私は死神ってやつよ。死神。どう?少しは驚いた。」
頭が痛くなってきた。疲れてるんだな俺は。もう寝よう。
布団に潜りかけたその時
「ま、まってよ!妹さんを生き返らせたくないの!?」
「おい、お前今なんつった?」
「へ?だから、妹さんを生き返らせたくないのかって。」
「…詳しく聞かせろ」
死神(?)の話によるとこうらしい。
昔は死神は人の魂を好き勝手とっていたらしいが、人類愛護団体という死神の団体が抗議し始め、人類の魂を好き勝手とるのは出来なくなった。
まず人類愛護団体ってなんだよ
しかし、死神も人類の魂が大好物なので取らない訳にはいかない。
困った死神は議論に議論を重ね、社会や人生の敗者、すなわちニートや悪党、生きることを放棄している人間たち、通称LOSERSから魂を取ることにしたらしい。
十年に一回、LOSERSから魂を抜き取る日があり、それが今日らしい。
「…てことは、俺は今から魂を抜かれて死ぬのか?」
「まぁそういうこと。」
「おい待て、妹の話はどうした。」
「今から説明するわよ!うるさいわね!」
「この話には続きがあって、LOSERSにも人権があるから、好き勝手に魂を抜くのは良くないとか言う輩が現れ始めたのよ。ホントめんどくさい。」
なんだよめんどくさいって
「だから、LOSERSどうしでゲームをして、最後まで生き残った人の願いを一つだけ叶えさせることが出来るというのはどうかという案が出たわけ。それで、その案が可決されて、今に至るわけ。」
久しく使ってなかった頭をフル回転させ、状況を整理して確認する。
「要するにそのゲームに勝って、願いごとをいもうとを生き返らせてくれって言えばいいんだな。」
「いえーす!そういうこと!」
「でもそんなこと出来んのかよ。悪いけどお前をまだ信用してはいないんだ。」
「死神ってのは、死の神って書くんだよ?この世界の創造神の次に偉いの。だから、創造神になりたいとか、そういう願い以外なら、大抵の事はできるのよ」
「そうなのか」
「そゆこと」
「…なぁ、もし負けたらどうなるんだ?」
「負けた瞬間、頭からガブリかなぁ?ハハハ」
「笑えねぇな…」
「まぁ、そういうのはいいんだよ。結局行くの行かないの?行かない場合は今すぐ食べちゃうけど。」
ずっと後悔してたんだ。妹が死んだのは俺がちゃんと見てなかったからだと思って。だけど、それをやり直せる。もう一度妹に会えるのなら…。俺は悪魔にだって死神にだって魂をくれてやる。
(絶対にゲームを勝ち抜いてやる)
「決まった。」
「へぇ〜。んで、どうすんの?」
「俺が全員倒して、妹を生き返らせてやる。」
「ふ〜ん。わかった。じゃあ1名様ごあんなーい。」
今まで死んでいた俺の目に、生気が宿った気がした。