031/100 何も知らない僕
やっとでけた
「魔王軍の侵攻を見るに、魔物が押し寄せているだけ。魔族は姿を見せていない……おそらく未だ魔王は復活してはいないでしょう。さて、どうしたものか——」
侵攻? 魔王軍はこの半年の間、まったく攻めてきていないはず……どういうことだろう。
「クロフォードさん、どういうことですか!?」
「——ずっと口止めされてたんだけど、こうなってしまっては、そうはいってられない。アルトっち、実はね——」
僕はクロフォードさんからすべてを聞いた。——まさに何も知らされてない哀れな王様だ。
イデアやファリスさん達が半年もの間、西の砦跡で魔王軍の進行を食い止めてくれていたなんて……少しも知らなかった。
みんなのために頑張っていた。——そう思って、昔の何もできなかった自分とは大違いだと、勝手に充実していた自分が恥ずかしい。
「僕は、なんて馬鹿なんだ。普通に考えたら魔王軍が攻めてこないなんて、ありえない——王都を奪還して、王様になって浮かれて、戦争中だっていうのに……」
あまりの不甲斐なさに自身を保てなくなり、膝が折れ腕を床につく。
——命の恩人であるファリスさんと、形式上とはいえ妻であり、王都奪還に力を貸してくれたイデア。その二人にまた助けられていたなんて……
「アルトっち。黙っていたことは本当にすまない。でも彼女達……いや、エルフ族にも事情があるんだ。だから怒らないであげてほしい」
「そんなんじゃないんです。僕は、やっとみんなのお荷物じゃなくなった。そう勝手に思っていたんです。——でも現実は違った。またみんなに助けられていた。僕は、恩恵を手に入れる前と、何も変わってはなかったんだ……」
この半年間、もっと頑張れた。もっとできることがあったはずなんだ。他族蘇生だって。もっと、もっと、勉強して完成させることだってできたんだ——
「ご主人様にしかできないこと。まだ沢山ありますよ! 元気出してください!」
「そうだよ、アルトっち。ここからが本番さ!」
二人はいつも僕にやさしい——
だから僕はそのやさしさに甘えちゃだめなんだ。僕にできるかわからないけど……やれるだけやってみるしかない!
「クロフォードさん! ファリスさんとイデアのエルフ部隊は、あとどれぐらい西の砦跡で魔王軍を食い止めれますか?」
「うーん、どうだろう。魔王が復活しない限りは耐えれるとは思うけど……油断はできないかな。獣人族も西の砦跡に向かわせられれはいいんだけど、新都の防衛が疎かになる。もう少し兵数を増やすことができれば——」
いま僕の力で蘇生できて少人数で戦力になる人……残り二人の騎士団長ぐらいしかいない。他族蘇生はまだ不完全だ。
そうなってくると——あの種族に同盟に参加してもらうように頼みにいくしかない。可能性は低いけど、もし成功すれば大きな戦力になる!
「クロフォードさん、北の樹海を抜けた先、越えられない山脈に住む竜族。——彼らに協力をお願いするのは難しいでしょうか?」
新都の北にそびえ立つ決して越えることのできない、氷河に覆われた山脈。
その理由は竜族がその山脈を守護し、未知の大地へ行こうとする者を排除するためだ。山脈の向こうを知る者はいないし、知ろうとする者も、もういない。
「はっはっはっ、アルトっちも大胆なことをいうね。竜族が同盟に加わってくれれば、西の砦跡から先の地へこちらから攻め入ることも可能でしょう。ただ飛竜と違って、竜族の長は一筋縄じゃいかないよ」
「はい、でもそれが今考えられる最善の策だと思うんです。僕に行かせてください! クロフォードさん!」
人の蘇生は少しの間できないから新都の復興は進まなくなるけど——
竜の力を借りることができれば帝国を空から奇襲して、ベアトリスさんの体を奪い返せるかもしれない。僕の両手は自然と拳を握り、その言葉にも力が入った。
「まあ、止めても無駄だよね。新都は僕、アリサ、ノットでなんとかするさ。アルトっちの護衛は、ライちゃんとハナにお願いしようかな」
ハナちゃんだ! また一緒に冒険できるのか。楽しみだな。
「ありがとうございます。クロフォードさん! えっと、サクはこれないんですか?」
「えーっと、サクには別パーティーで東方に向かってもらう。まあアルトっちが失敗したときの保険ってことさ!」
「こらー、ご主人様がやる気だしてるのにー!! この金髪ハゲ野郎め!!」
金髪ハゲ野郎。久しぶりに聞いたな……あれ以来、クロフォードさんは帽子か兜を欠かさないけど、まさかまだ禿げてる……なんてことないよね。
それにしても、竜がだめなら鬼ってことか。保険を掛けられるのはちょっと不甲斐ないけど……さすがクロフォードさん、抜かりない。
——リン リン リン!
蘇生の間を出て、会議室へ移動したところで聞いたことのない音がなる。
週2ぐらいはいけるか




