030/100 一番大切だったであろう人
おなかすいたー!!!!
「と、まあ私が予想するにティルが姉さんの体を持ち去り、何らかの方法で封印しているのだろうと考えるわけさ」
王国の記録ではイヴァーリス家の御子息御息女は全部で四名。でもそう考えると騎士団が五つあるのは確かに変だ。僕が伝令係になる前に、ティルは記録からも消されているという事か。
「もし体が囚われているなら——蘇生をSSSの力で妨害されているのは間違いないですわ。」
魔神ってやつがベアトリスさんの蘇生を邪魔してるのか……でも一体なぜ。
「じゃあ、あの魔族——じゃなくてティル君からベアトリスさんの体を取り戻せば蘇生出来るってこと!?」
しまった! クロフォードさんの弟を魔族なんて言ってしまった——
「アルトっち、そんな気を回して貰わなくても大丈夫さ! もう私もあの子を討つ決心はついているよ」
家族を討つ決心なんてしたくないはずだ……クロフォードさんだって辛い。
「——魔神が世界に干渉し始めている、まさか……魔王の復活を目論んでいるんじゃ——」
シャルルが神妙な面持ちで考え込んでいるけど——魔王がもし復活する様な事になれば、相当危険な事態だ。
——その昔、未だ人が都を持たない頃の話。魔族とエルフやドワーフを巻き込んだ戦争が続いていた。そして、ドワーフは魔族によって滅ぼされた。
エルフも世界樹を明け渡す事にはなってしまったけど、伝説のエルフの兄妹によって、三人の魔王のうちの一人を討伐する事に成功した。
魔王も三神と同じく三位一体の存在で、魔族はそれにより衰退し、生命の源である世界樹が戦いにより枯れてしまったエルフもまた衰退した。エルフの呪いが生まれたのも丁度この頃らしい。
その期間に大きく繁栄したのが僕達、人だ。王都が完成し、魔王軍とも渡り合える様にはなった。でもそれは魔王が一人欠けていたからだ——それでも王国軍、人は全滅した……僕を除いて。
もし魔王が復活でもしたら、地上最強の戦闘力を持っていた亜人族のドワーフはもういないし、エルフだって世界樹を失い力が弱まっている——地上は確実に魔族によって支配される!
「シャルちゃまの言う通り、魔王が復活するならすべての生物の危機だねぇ。さてどうしたものか——」
「魔神っていうのが動き出したのに神様達は何もしてくれないの! シャルル!?」
「ご主人様……魔神も神様も地上に直接は干渉出来ません。なので恩恵や罪の力を地下や地上の者に分け与えているんです。そして、魔神は神を、神は魔神を最終的に無に還そうとしています」
「じゃあ、このまま魔王が復活しても今の戦力で戦うしかないって事!?」
「再構築。ご主人様の持つその力であれば対抗する事が出来るはず——ですが、まず魔王の復活を阻止する事を考えるべきですわ!」
「——魔王の復活には、器となる優秀な肢体が必要となるんだよ。アルトっち」
一瞬、心臓が止まるかと思った。
「それって、もしかして……」
僕の不安は的中する。
「そのまさかだよ。アルトっち。言いたくはないが……魔王の器となるのはきっと、姉さんだろう」
「ご主人様……ベアトリスさんが魔王として復活してしまっては、蘇生の力で人として蘇らせる事が出来なくなっちゃいます……」
さっきまで、ベアトリスさんに会えると思っていた。
すこし心の中ではしゃいでいた自分が馬鹿みたいだ。
ベアトリスさんはティル君に持って行かれ、魔王の器として使われる?
意味がわからない——
ハナちゃんやサクが守ってくれてやっと王都まで辿りつけた。
僕一人じゃ絶対無理だったのに家に辿り着いて写真だって回収出来た。
赤髪の子に襲われた時も、ファリスさんが間一髪の所で助けに来てくれた。
王都もイデアやライオネルさん達のお陰で奪還出来た。
みんなのお陰でやっとここまで来れたのに——
そしてこの半年、僕はみんなに少しずつだけど恩返しして来たと思う。
——でも僕は、一番大切だったであろう人に。
何もしてあげられないみたいだ。
またまた大変な事態になってきたなこりゃ




