029/100 不老不死
きのうはすみません!
家にかえることができずに書けませんでした!!!!
「大丈夫? クロフォード。この西の砦は落とされるわけにはいかない——ここで魔物を迎え撃ちます。」
純白の鎧を身に纏う金髪碧眼の凛々しき女性。王国の象徴的な存在であり、私の自慢の姉、ベアトリス・アインス・イヴァーリス。
姉さんが率いる王国最強の第一騎士団白薔薇隊と私の第二騎士団青薔薇隊。王国最大戦力といっても過言ではない大規模部隊で西の砦の防衛任務に就いている。
「もちろん大丈夫ですよ、姉さん。だた——遠征となると食事がどうも質素というか……」
「ふふ、ここまで城のシェフを連れて来るのは難しいわよ。第三、四、五騎士団が合流したら一旦、私達は城へ戻れるわ。——あの大群を倒せたら、だけどね。私も早く帰ってアルトの作った暖かいスープが飲みたいわ」
私も食事会に何度か呼んでもらったけど、アルトっちの作る料理は城のシェフの料理とは違った良さがある。素朴な食材を生かした家庭的な味というやつだ。
「その時はぜひ、私もご一緒させてくださいね、姉さん!」
魔物の大群が迫ってくる中でもこんな話が出来るのはやはり、姉さんのお陰だ。数にして十倍以上に見える戦力差があっても、負ける気はしない!
「さて、じゃあ行きますね。皆さん、援護をお願いします!!」
姉さんが剣を抜くと同時に白薔薇隊の術師達が一斉に詠唱を始め、姉さんに補助系の魔法を重複発動させる。
「水の精霊ウンディーネよ 我に従い 生命の水となれ! アクアリジェ!!」
「火の精霊サラマンダーよ 我に従い 火炎の剣となれ! フレイムタン!!」
「風の精霊シルフよ 我に従い 疾風の翼となれ! フェザーシール!!」
「森の精霊ノームよ 我に従い 強固な壁となれ! ストーンスキン!!」
白薔薇隊の戦術は一騎当千。
姉さん一人を四大精霊の力で最大まで強化して戦う。王国で最初にAランクに到達するのはきっと姉さんだろう——でも、私だって負けませんよ!
「青薔薇隊の皆さん、私達も行きましょう。白薔薇隊に遅れを取るわけにはいきませんよ。ベアトリスが中央を突破します。左右に分断された所を狙いますよ!!」
魔物達に撤退の二文字はない——死ぬまで戦い続ける。そのため私達はここにいる全てを駆逐しなければならない。——だがこの日は違った。
半分ほど倒したところで魔物達の動きが止まる。そして、魔物達を割って一人の人の形をした仮面の者が姉さんに近づいて来る。
「貴様、何者だ」
姉さんの問いかけを無視して仮面の者が斬りかかる。
姉さんも応戦し、数回に渡り剣と剣がぶつかり合い、そして二人は剣を止めた。初撃では解らなかったが——この者が使う剣術は王国騎士団と同じ型。
「はぁ、やっぱりまだ全然敵わないや。元気だった? ベアトリス姉さん、それにクロフォード兄さんも」
私達を姉さん、兄さんと呼ぶ——可能性は一つしかない。三年前に王国から突如姿を消した我が弟。ティル・フォンフ・イヴァーリス。
「——ティルなのかい?」
「そうだよ、兄さん。あの食事会以来だね」
「そう、ティルなのね。どうして魔物と一緒にいるの」
「どうしてって魔族になりたいからさ! 人はあまりにも寿命が短い——研究半ばで死んでしまうかもしれないからね。それに、王国では僕の研究は禁忌だって言われる始末だよ。人といる意味の方が僕にはなかっただけのこと」
ティルは不老不死についての研究をしていた。
そもそも寿命の短い人ではエルフや魔族のように長い時間をかけて高ランクを目指す事が出来ない。戦いが長期化する中で人そのものが進化しなければならないと、話していた事を覚えている。
「ティル、魔族になってしまったらもう後戻りは出来ないわ。今ならまだ遅くはない——王国へ戻ってきなさい」
「——僕はベアトリス姉さんが年老いて、その美しさを失うのが怖いんだ……だから一刻も早く不老不死の術を完成させなければならない!」
ティルは昔から姉さんに屈折した感情を抱く。それは愛情といった類のものではない——ベアトリス・アインス・イヴァーリスの美しい容姿のみを愛し欲している。
「その術が完成したとしても……私は不死になどなりたくはないわ、ティル。確かに人の命は短く、そして儚いわね。でも——だからこそ尊く美しいのよ」
「はっはっ、ベアトリス姉さんの綺麗事はもううんざりだよ。今日のところは引かしてもらうけど……今度あった時はその肢体——もらうからね」
ティルは残りの魔物を共に引き上げていく。
「姉さん、このままティルを行かしていいんですかね」
「こちらの隊員達も相当疲弊しているわ。ここは深追いは避けましょう。——それに家族に剣を向けられますか? クロフォード?」
「確かに——」
——私があの時、ティルを殺しておくべきだった。
魔族の力を手に入れる前に。




