013/100 恩恵の代償
リゼロみた。おもしろ!
「ご主人様は…
恩恵の代償として記憶を失ってしまったんだと思います」
——それが僕の代償?
その人は僕にとって何なんだ。
どれだけ大事な人だったかも分からない。
「アルトっちがとても慕っていた方だよ。
名前は、ベアトリス・アインス・イヴァーリス」
僕にはまったく覚えがなかった。
でも、この胸が締め付けられるような痛み…
きっと僕にとって大切な人だったに違いない。
「ごめんなさい。
その人の事…何も思い出せません」
「思い出せなくてもクロフォードみたいに蘇生すればいいじゃない。
顔と名前が分かれば出来るのよね?
シャルル」
「そうなんですが…
ご主人様が顔を思い出せれば…の話です」
僕は顔を左右に振った。
それを見てかシャルルは何かを捻り出そうと…
唸っている。
「いい事を思いつきましたわ!
ご主人様の家にいけばきっと写真があるんじゃないですか!」
確かに写真はあるかもしれない。
伝令係は記録用に写真機をよく使う。
写真が残っている可能性は高そうだ。
「シャルちゃま、そう簡単にはいかないなぁ。
ベアトリスはBランクの剣士だよ。
今のアルトっちが蘇生を試みれば間違いなく、死ぬ…
そうじゃないかな?」
「Bランクって…」
シャルルの目から少しずつ涙が溢れる。
そして、僕の胸元へ飛び込んできた。
「ご主人様!!
そんなに直ぐにその方の蘇生が必要ですか?
ご主人様がいっぱいランクアップしてからじゃダメですか!?
シャルルは…、シャルルは不安で仕方ありません…」
僕はシャルルを泣かせてばかりだな。
心配してくれてありがとう、シャルル。
でも、僕は知りたいんだ。
僕が忘れてしまった涙のわけを。
「——大切だった人…、それはきっと忘れちゃいけない人なんだ。
シャルル、ごめんよ。
僕は行って確かめたい!」
「王国の再建も急がないといけないが…
作戦の中心のアルトっちも今のままだと身が入らないか。
まあ、仕方ない。
アルトっちの家を捜索しに行くとするか」
「ありがとうございます!
クロフォードさん!!」
「GランクからFランクは数回の戦闘経験でランクアップする事が出来る。
道中でのランクアップを目指しましょうか、アルトっち。
私が援護しますよ」
「ご主人様は、あたしが絶対守るんだから!
あなたは来なくて結構です!!」
また二人が言い争ってしまった。
なんとか仲良くしてくれればいいけど。
それにしても、何だろう作戦って。
僕の眠っている間に何かあったのかな。
「クロフォード、あなた外出が多いと思ったら何か企んでるわね」
ファリスさんは怪訝そうにクロフォードさんを見ている。
「これからの事をホビット族の族長と話していたのさ。
王国が倒れた今、次に魔王軍の標的にされるのは?」
それを聞いてファリスさんは指を弾く。
「なるほど、エルフの里がある大森林や…この村ってわけね」
「そう、亜人族の集落だ。
そこで王国はホビットと同盟を組む事にしたんだよ」
「でも、クロフォード。
王国の戦力はアルト君と貴方二人だけでしょ。
ホビット達と平等な同盟が組めるとは思えないんだけど?」
いい質問だ!という顔のクロフォードさん。
そして僕の方をひらりと指差す。
「アルトっち。
そこで君の出番ってわけさ!
まあこの話はまた今度。
明日の朝に出発するから今日は体をしっかり休めてくれたまえ!」
と言ってクロフォードさんは勢いよく外へ出て行った。
続いてファリスさんも席を立つ。
「アルト君、私もちょっと疲れたから向こうの部屋で横になるわね。
明日は一緒に行ってあげられないけど、頑張って」
部屋から出ていこうとするファリスさんを僕は呼び止めた。
「ファリスさん!
あの…本当に色々ありがとうございます!」
ファリスさんには感謝してもしきれないぐらいの恩がある。
「いいのよ、アルト君。
今度私に美味しい珈琲でもご馳走してよね」
とても優しい笑顔で僕を見てくれている。
「もちろんです!」
この恩はいつかしっかりと返さないといけないな。
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