⑻ 危機回避!/生まれて初めての即興演奏
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「 "白玉系は長い音符の事ね。" 」
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オミパパの言葉が頭の中で閃いた。
「”そうだ『一小節ずっと伸ばす音符』って言ってた。あともう一つ『演奏してて困った時は5音音階でイケ!』、
『1オクターブに音が五つ』って言ってたよね? それってなんだっけ?"」
フミカは思考力をフル回転させながら目の前のピアノの鍵盤を見て思い出した。
「”そか! 1オクターブに5個ある音、黒鍵の事だ! オミパパは『黒鍵だけ弾くとインスタント5音音階』って言ってたんだっけ!”
”えと... 黒鍵で白玉を弾けば..."
フミカは『ミ』の半音下の Eb の黒鍵を押した。 PA からはピアノの音にディレイがかかり、1つ弾いた音が何度も繰り返され、それが会場を右左を行ったり来たりした。
次に『ラ』の半音下の Ab の黒鍵、さらに『シ』の半音下の Bb の黒鍵と順番に押して行く。弾いた各々の音が繰り返されながら会場を左右に飛び交う。
フミカは Eb、Ab、Bb を右手、左手で何度も弾いた。たった3つの音程なのにディレイで水増しされた音は沢山の人が演奏しているように聞こえる。
繰り返し繰り返し弾いていると、オミも同じ3つの音程の順番を変えながらオペラ風の声で適当になぞり始めた。
繰り返すディレイの中、二人の即興演奏はそれなりの説得力で空間を埋めていく。
<⭕♫YouTube によるサウンド♫⭕:多分、二人のアドリブはこんな感じ...>
https://youtu.be/r9q8LW6C8Ik
”ジャズのアドリブって即興演奏の事だから、こんな感じ?"
"イヤイヤイヤ、これジャズじゃないし! 民族音楽系?"
フミカは焦る心を落ち着かせようと、そんな事を考えながら演奏を続けた。
当たり前の話だが、ユックリと演奏する曲の演奏時間は長くなる。フミカとオミはたった3つの音のバリエーションで、すでに2分ほど演奏を続けていた。
”そろそろ聞いている人も飽きてくるか、最悪寝ているのでは?”
フミカがそう不安になって来た頃、ステージサイドのスタッフが2人に向かって電子オルガンの後ろを指差すジェスチャーのあと、両手を高く上げて、頭の上で大きな丸を作る動作を繰り返した。
"修理完了?"
フミカは鏡に映る背後の様子を見た。そこにリサの姿はなく、しゃがみ込んだサエコがオルガンに寄りかかるような格好でケーブルを押さえているのが見える。
その上には、さっきまで消えていたシーケンサーの LED に再び明かりが灯っている。
"良かった!..."
フミカとオミはそう思いながら同じ音程を繰り返して徐々にデクレッシェンドしながら、ユックリと曲を終え、PA のレイナを見た。
拍手の起こる会場の最前列で、彼女は走り書きで指示を出した。
『サエコ断線押さえて処置 OK、ラストいけ』




