⑷ エ? 私シンセを壊しちゃった?!
フミカは話を本題に戻しながら言った。
「で、これってボタン増やすでしょ? 黒鍵も付いて2オクターブくらいあるとイイよね。」
「うん、大丈夫、まかせといて!」
「5つだけでも面白いのに、2オクターブあったら曲とかも出来ちゃうよね!」
それを聞いたオミが斜め上を見上げながら、両手を胸の前で合わせてトキめいた。
「まあ素晴らしい! 色々な曲が演奏できれば、演奏会も夢ではありません! ステキ! 私たち、まるで...⭐ まるで...⭐ 芸術家 ⭐⭐⭐❗️」
フミカは思わずつぶやいてしまった。
“あの〜、なんか目に星入ってるんですけど〜...”
リサまでも、
「☺️ やっぱ最終的にドーム? いやいやいや、その前にサマソニとかで名を広めてだな。あ、でもうちの学校って芸能活動とか許されてるんだっけ?」
“あの〜、今チャルメラが弾けたばっかなんですけど〜...”
と思ったフミカだが、二人を見ているとやっぱり気分が盛り上がって来る。
「そうだね。こんな不思議な楽器でライブ演奏できれば、結構話題になっちゃうかも!」
フミカは、そう言いながら目の前のボタンを一度に3つ一緒に押して慌てた。
「あ、あれ? 今『♪ドミソ』って3つ一緒に弾いたのにドの音しか鳴らないよ? 故障?? 私、シンセ壊しちゃった?! ☔☔☔」
フミカは『♪ドレ』『♪ミソ』と、色々な組み合わせでボタンを押してみたが、どうしても一度に押したうちの一つしか音が出ない。
涙目になって、シンセを壊したと焦るフミカにリサは、
「あ、普通のアナログシンセって、鍵盤をたくさん押しても、大体1〜2個しか音が出ないのだ、覚えといてね!」
と、サラッと重大発言した。
「エ???」
フミカは怪訝な顔をして振り返った。
「うちらのシンセはね、ボタンをイッパイ押さえても、一番下の音しか出ないのだ!」
「え? いやいやいや、だってだってそれって変でしょ? ボタンが沢山あるのに、どうして音が1つとか2つしか出ないの? 不便だよね? 故障じゃなくって? それって音楽作れるの???」
フミカのライブ妄想には、にわかに暗雲が立ちこめ始めた。
「そそそ、私も最初そう思ったんだけどさ、色んな音色が出る楽器って出せる音の数が少ないんだよ。」
フミカが許容し難いという表情で『え、でもでも...』と、口ごもりながら返す言葉を探していると、今度はオミが話し出した。
「私も最初そう思いましたわ。でも例えば人の声は怒鳴るようにも囁くようにも『色々な音色』で歌えますが、一人で一度に『ドミソ』は歌えないですよね。」
「そりゃそうだ。そんなの出来たら YouTube とかで話題になっちゃうよね。」
「人の声でも、トランペットでも、色々な音色を出せる楽器は、みんな一度にひとつしか音が出せないでしょう? 逆にピアノは一度に沢山の音を鳴らせますが、音色はいつもピアノの音色ですよね?」
「あ〜〜〜、まあ確かにそうだよねえ... クラリネットとかヴァイオリンで動物の鳴き声を真似るする曲とかあるけど、そういうのってピアノじゃ出来ないもんね。」
(作者注:動物の鳴き声を真似る曲はサンサーンスの動物の謝肉祭、プロコフィエフのピーターと狼等、色々ある)
「そそ、そこなんですよ~! シンセも音色が豊富な代わりに一度に鳴らせる音の数が少ないのね。まっ、最近のコンピューターを使ったシンセだと音数は多いんだけどさ...」
フミカはすかさず言った。
「な〜んだ良かった〜! コンピューター使って音が沢山出るようにすれば良いんだよね?! じゃ、リサちゃんやってやって!」
「いやまあ、最終的には、そうしたいけどねえ...」
答えるリサの表情がちょっと曇ったが、フミカは気付かず言った。
「㊗️ そうかあ、最後はコンピューターの力ね、それで安心! 良かった良かった! ㊗️」
安堵の表情を浮かべるフミカ。しかしリサは力を込めて、こう言い始めた。




