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それ行けシンセ女子!  作者: MikBug
Day20:9月15日/セ祭当日
77/82

⑸ いい感じにテキーラ!


 ポップコーンの演奏が終わると会場からは拍手と共に『ピーピー』という指笛の音が聞こえた。女子校の生徒がやっているとも思えないし誰だろ?


 そして次はいよいよ『テキーラ』。


"この曲でレイナさん親衛隊に『テキーラ!』って言わせたら成功だ!"


 フミカは気の引き締まる思いがした。


 リサはドラム台に戻り、オミの前には手際よくギター用マイクがセットされて行く。オミはその間に早くも『炎のランナー』用にシンセのセッティングをしている。


「ありがとうございました。それじゃあ次は『テキーラ』っていう曲です。この曲は途中2回とエンディングで、合計3回リズムのキメがあるんですけど、そこで皆さんに『テキーラ!』って叫んで欲しいんですね。というわけで『テキーラ!』の練習をしてみたいと思います。いいですか? 『テキーラ!』ですよ。」


 リサがそう言うと、照明スタッフが会場のライトを少し明るくしてくれた。


「それじゃ『1、2、3、ハイ!』」


 リサはそう言うと持っているマイクを会場の方へ向けた。しかし客席からは、いかにも恥ずかしそうな声で『テキーラ』という声が少しだけ聞こえ、はにかんだような笑い声が起こった。


 リサはすかさず、


「あれ~? みんな声が小さいな~。お昼ご飯食べてきましたか~?! もっと元気良く、ハイ!」


『テキーラ!』


 今度は元気な男子の声が聞こえた。さっき指笛の聞こえて来た辺りからだ。


 フミカが明るくなった会場を見ると、そこにはリハスタでオミがチケットをプレゼントした5人組の男子が壁に寄りかかりながら声をあげていた。


"来てくれたんだな"


 そう思ってオミを見ると、彼女も微笑みながらうなずいた。


「ウンウン、大分良い感じになって来ましたねえ! あ、でもその辺ちょ~っと元気なかったなあ。」


 リサは観客を煽りながら、明らかにレイナ親衛隊のいる辺りを指さした。会場からは『エ~!』っとビックリした声が聞こえたが、さっきの男子5人組が拍手しながら次々と、


「そうそう! 元気出して行きましょう!」

「 楽しくね! 」

「 頑張れ~~! 」

「応援してマッスル!」


 などと言ったものだから彼女たちは大喜びで、


「 エ~~~! テキーラ?! 」


 と声をあげた。


 ミッション系女子校で幼稚舎から高校まで上がって来たような女の子は、ただでさえ男子に免疫がない。コンサート会場での出来事とは言え、彼女たちはスッカリ舞い上がって嬉しくなってしまったようだ。


 リサが、


「そうそう、元気良くていいですね! 曲の中では私が腕を上げますから、そしたらみんなで『テキーラ』って言って下さい。いいですか?『腕あげ~のテキーラ!』ですよ。それじゃ最後にもう一回練習しましょう!」


 そう言って腕を上げて『テキーラ!』と叫ぶと、レイナ親衛隊女子もつられて腕を上げながら『テキーラ!』と大きな声で叫ぶ。PA ミキサーに座っているレイナまで腕を上げて参加してくれていた。


”よし、成功だ!”


 フミカは心の中で叫んでいた。


「それじゃ今のテンションで行きましょうね! 『テキーラ!!!』」



<⭕♫YouTube によるサウンド♫⭕:4曲目:テキーラ>

https://youtu.be/EEbbDESHe_g



 リサが掛け声をかけるとオミのギターリフが始まった。客席ではすぐに手拍子が始まり、リサとフミカが演奏に加わる頃には会場全体がリズムの渦となっていた。


 ステージと会場が一体となってリズムを刻む中、フミカの演奏するメロディーが始まる。ポップコーンの時と同じような短くて歯切れの良いシンセサウンドだ。


 フミカはサビに入ると、ベースパートを左手のキーボードで、メロディーパートを右手のグランドピアノで弾いた。少し距離の離れた位置にある2台の楽器を腕を広げて弾く姿は、さながらサーカスの綱渡りで両手を広げてバランスを取る曲芸師のようで、客席からは思わず喝采が起きた。


 いよいよサビのキメ、会場から怒涛のように『テキーラ!』という言葉が聞こえて来た。


”うまく行った!”


 リサもフミカもオミも、思わず勢いに乗って両腕を高く上げて『テキーラ!』と叫んでしまった。


 3人はあまりに手を高く上げすぎたので、元の演奏に戻る頭でちょっとリズムがよろけてしまったが、それはそれでライブ演奏の醍醐味だろう。演奏はその後のキメも会場と一体となって『テキーラ!』を絶叫してエンディングを迎えた。


 会場からは拍手が洪水のように起こる。


 その興奮冷めやらぬ熱気を無視するかのようにステージの照明はゆっくりと暗転して行き、フミカの真上からのスポットライトだけになった。


 周囲が完全に暗くなった事を確認するとフミカは予定通り『無窮動むきゅうどう』を弾き始めた。興奮の余韻でざわついていた会場は急に水を打ったかのように静まりかえる。



<⭕♫YouTube によるサウンド♫⭕:5曲目:プーランクの無窮動>

https://youtu.be/8SbuIYfb8Z8



 フミカは『無窮動』を弾きながら譜面台に置いた鏡で後方を確認した。薄暗い中でキーボードの向きを変えるリサとサエコの姿が見える。恐らく会場からは見えない明るさだろう。


 向きの変更は無窮動を1周弾き終わらないうちに終わった。フミカは、


”少し早めに準備が出来ちゃったな”


 と思ったが、リハと同じように2周弾いてからエンディングに行く事にした。


 しかし、演奏の1周目が終わろうとする時、後方で『ガシュ』っというような不穏な鈍い音が聞こえた。


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