⑹ 機械と合わせよう!
「じゃ次、炎のランナーやろっか。シンセのセッティングをチャチャっと変える練習もしてみて。」
フミカとオミは、リサの書いたセッティングチャートを見ながら手早くボリュームを調整していく。
「この曲はシーケンサーに合わせて演奏するんで、ズッコケちゃうと全員機械に置いてけぼり喰わされるんで注意しましょう!」
<⭕♫YouTube によるサウンド♫⭕:炎のランナーはこんな曲>
https://youtu.be/asIHOHR_DvI
「OK! じゃ、ちょっとオミちゃんと合わせてみよっか。」
リサがシーケンサーがスタートさせ、オミがゆっくりと音の出るアタックの遅いホルン系の音を演奏した。
「うゎ! タンマタンマ! リピートしてる上に、アタックの遅いホルンのイントロだと、どこがピアノの出る場所だか分かんない! もう一回やって!」
リサは再びシーケンサーをスタートさせた。ホルンが『フヮ~』っと鳴る...
「ヒャ~! これ、どこが小節の頭だか分かる???」
「いや、これ難しいだろ。指で数かぞえてないと分かんなくなるぞ!」
「サエ師匠も分からないとは!」
「え? じゃリサちゃん分かるの?」
「いえ、サッパリ!」
「ダメじゃん!」
「私も、ホルンの音が本当に正しいタイミングで演奏できているか自信がありませんわ。」
「オ~イ、そりゃ困ったね。シーケンサー様だけが、ひたすら正しく演奏しても人間おいてけぼり状態。」
「もう少し練習してみますか?」
「うん、じゃあ出来るまで繰り返してみよっか。」
「オッケー、じゃ失敗したらすぐシーケンサー止めて、最初から!」
リサはそう言ってシーケンサーを再スタートさせた。
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繰り返す事15分...
「ダメだ~! 上手く行きそうな時もあるけど、途中で混乱!」
壁に寄りかかって聞いていたサエコは椅子に座りながらつぶやいた。
「15分やってダメだとなると、ちょっとキビシイかもなあ... だいたい私が聞いてても、頭わかんないもんな。」
全員が『う~ん』とうなっていうると、突然
「アッ! そしたらさ、シーケンサーの LED を見ながら弾いたらどうかな? 小節の頭は必ず1ステップ目の LED が点くわけだから、その方が確実かも~!」
リサはそう言いながらバッグからキャンディーを取り出し、その包み紙の赤いセロファンを外して1番目と5番目の LED の上にかぶせ、
「これで1拍目と3拍目の LED が赤になって、他は白く光るでしょ? 分かりやすくない?」
「そっか~! リサちゃん天才! じゃ私も...」
フミカはそう言いながら、バッグから身だしなみチェック用に持っていた小さな鏡を取り出してピアノの譜面台に置いた。
「これで後ろにある LED も見えるはず...」
リサがシーケンサーをスタートさせ、フミカとオミは試しに演奏してみた。
「うんうん、これなら大丈夫そう!」
「目の前に、譜面とスマホと鏡なんて、にぎやかで素敵ですわ!」
「OK! それじゃこの曲、通しでやってみようか。」
リサはドラムの椅子に座り準備を始めた。フミカも得意のピアノテクニックを駆使して表情豊かに弾け、本領発揮だ。フミカのピアノの背後で、リサがシンバルロールやウィンドチャイムで雰囲気を盛り上げる。
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演奏が終わり「フ~~...」と、安堵のため息をつくフミカ達に、サエコは拍手しながら、
「オオ! いいじゃんいいじゃん! 上手くいった! これはイイよ。結構感動もんだし!」
と言ってくれた。みんな、
「エンディングはみんなで音をド~~~~ン! って伸ばしてクレッシェンドしてジャン! って感動的に終わろうね!」
「うんうん、そうそう! それで拍手喝采で終わる! いいねえ!」
と、空想のステージが目の前に見えるような気がした。




