⑶ シーケンサーも動かしてみた
既にレンタルキーボードやドラムがセットされたスタジオに入ると、フミカたちはキーボードの上にボタン鍵盤とシンセを並べた。
鍵盤と本体はカラフルな色のケーブルで接続されていた。
「このケーブル綺麗だよね!」
「これ全部で10色あって、色で番号を区別してるんだ。平べったいからフラットケーブルっていうのだ。茶色が0、黒が1、赤が2とかって決まってるの。」
「へ~! よく覚えられるね!」
「語呂合わせで覚えるんだ。黒は黒髪の令(0)嬢、茶色は茶店でひと(1)休み、赤は赤い人(2)参、みたいに... 黒い礼服とか小林一茶とか色々方言はあるみたいだけどね。」
「年号の語呂合わせみたい!」
これがフラットケーブル
「そそそ。Midi 接続だとケーブル1本だけで良いんだけど、ボタン鍵盤との間は、この長いフラットケーブルでダラ~ンとつなげるんで、ちょっと危ないんだけどね。」
「そだね、足引っかけたりしないように気をつけよ!」
セッティングが終わると、リサは曲ごとのシンセのセッティングチャートを見せ、
「大体こんな感じでツマミをセットしてね。曲間にセットを変えて、チョイチョイと音鳴らして平気そうなら OK。なんたってアナログだから前と同じ音にはならないんで、あんまり深く考え過ぎないで『ま、こんなもんか?』って勢いで次に行って下さいな!」
と笑いながら言った。
二人が話す横では、さっきからオミパパがビデオカメラを回している。
「ほら、オーちゃんもなんかしゃべってしゃべって!」
とオミに小声で指示を出すと
「お父様、私たちそろそろ練習を始めますから外に出ていただけますか? スタジオが狭いですし気になりますから!」
冷たくあしらわれたオミパパは不満げに、
「え~! 折角撮ってるのに、いちゃだめなの? シンセ運ぶの重かったなあ、車も混んでたし~!」
と子供ようにダダをこねたが、
「ささ、外へ出ていて下さいね!」
オミは強硬にドアを開け、『エ~』とつぶやくオミパパは強制排除された。
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早速3人は本番通りの曲順で練習してみる事に...
1曲目のオープニングは完成させたばかりのシーケンサーが活躍する。リサはシーケンサーを指差し、
「この部分がシーケンサーね。ここの8個のボリュームに8つの CV をセットしといて、端から順番に出力するの。これを VCO につなげば8つの音程が繰り返されるわけ。で、このボタンを押すと...」
と『Start / Stop』と書かれたボタンを押した。
すると『ピポパポピポ』と、シンセは8つの音程を繰り返して鳴り始めた。
「今、LED の点いてるとこのボリュームの CV が演奏されてるわけね。例えばこのボリュームを動かすと...」
と言いながら1番目のボリュームを上下すると、1番目の LED が点くたびに音程が変化した。
<ixxxxx|922289>
<⭕YouTube による解説⭕:シーケンサーでピッチ変更>
https://youtu.be/DuR12MFmr8w
「こういう風に、欲しい音程を前もってセットしとくわけ。」
「それって、一回ボリューム動かしちゃったら元に戻せないの?」
「そりゃ自分で元のボリュームの位置に戻さない限り無理だね。コンピューターで記憶してるわけじゃないからね。」
リサはそう言いながら、あちこちのボリュームを動かす。
「そうかそうか、アナログだもんね。」
「そそそ! 凄く面倒くさいのですぞ!
でも二度と同じにならないから、そこが面白いって人もいるわけね。
あとこっちの Rateってボリュームを動かすと演奏スピードが変わるんで、雰囲気に合わせて調整してちょ! ってわけで1曲目からやってみようよ。」
3人は学校の練習で決めたように、演奏時間確認用のスマホを目の前に置き演奏準備を始めた。




