⑴ 到着
9月7日、ついにシンセの全ユニットが完成した!
今日はリサの提案で、手作りシンセが移動にも耐えるかどうか試すため、外スタジオでリハをやってみる事になった。
トラブルがあっても良いようにと、渋谷のリハーサルスタジオを5時間も押さえ、リサはドライバーや半田ごて入りバッグを持参! 途中からサエコも来てくれる予定なので、何かと心強い。
機材はオミパパが『娘の勇姿をビデオ撮影できる権』と引き換えに車で運んでくれる事になった。
午前中、学校で機材を積み込み、途中オミパパのおごりでファミレスご飯を食べた3人は、リハスタのあるビルの地下へと慎重に荷物を降ろした。
<⭕♫YouTube によるサウンド♫⭕:LFO はこんな曲をやる予定ですよ!>
https://youtu.be/XbkE28DrCm4
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「なんかカビくさ~い。地下室~って感じだよね!」
フミカは配管むき出しの天井やタバコのケムリですすけた壁を見ながら言った。
「この壁っちゅう壁に貼ってある、メンバー募集とかコンサート案内の紙切れが、それっぽいよねえ。」
「魔法薬の取り引きが行われる隠し部屋のようですわ。薄っすらと聞こえて来る重低音も呪文のようで素敵!」
オミはバードラの話をしているらしいのだが『アブナイ薬の話をしていると思われちゃわない?』とフミカはちょっとハラハラした。
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「じゃ会員手続きとかやってくるね!」
リサはそう言うと奥のカウンターへ行き、生徒手帳を見せながら書類を書きだした。
フミカとオミがシンセをテーブルに置いて待っていると、別テーブルにいた同世代の男子が声をかけて来た。
「あの~、そのテーブルの上に乗ってる... それってなんですか?」
幼稚舎から女子校で、男子とまともに話した事のないフミカはドギマギしながら、
「あ、えと~、これシンセサイザー、あの... アナログ・シンセサイザーです。」
と答えると、その男子は興味深そうに、
「え? やっぱし? でもこれって自作ですよね?」
「ええ、そうです。あの、あそこにいる... 今カウンターで手続きしてる彼女が作ったんです。」
「おい、ちょっと来てミソ。これこれ! これ自作のアナログ・シンセなんだってさ。すっげ~カッコ良くね?」
周囲にいたバンド仲間らしき男子が、フミカ達のテーブルにワラワラと集まって来た。彼らはシンセを見ながら、
「うぉ~、カッケ~! しかも自作って自分たちで作っちゃうわけ?」
「オレ、本物のアナログ・シンセって初めて見たぜ! いっつもパソ画面に出てるバーチャル・アナログだもんなあ。本物って、なんか重量感違うよな。これどんな音でんだ?」
と口々に言うので、フミカはちょっと嬉しくなった。その中で、少しスラっとしたリーダー格っぽい男子がフミカに聞いた。
「これでライブとかやるんですか?」
「え、ハ、ハイ、今度の学園祭が初ステージなんです。」
フミカが答えると、男子たちは
「え?! 見て~、それいつやんの? オレ行く行く!」
と盛り上がった。しかし、セ祭は男子禁制ではないが『入場チケットの配布は親類縁者まで』とのお達しがシスターから出ている。
「えとですね、私たちの学校って女子校なんでチケットが無いと入れないんですよ。しかも親類縁者までしか配っちゃいけないってシスターに言われちゃってて...」
フミカが申し訳なさそうに言うと、男子たちは
「あ~、そうか~、女子校学祭じゃチケットないと入れねえよなあ...」
と心底残念そうだ。
「そうなんです、ゴメンなさい...」
フミカはうつむき加減に言うと... 突然オミが、
「チケットでしたら人数分差し上げてもよろしいですわ。」
と言った。




