⑴ 親衛隊
9月3日、2学期の始まりだ!
セ祭まであと1週間ちょっと... 学校では着々と準備が進んでいる。セ祭は教会のバザーと併催のため学校の一大イベントであると共に、教会関係者にとっても地元の人たちとの接点を作る重要な催事だ。
先生たちもセ祭が終わるまでは授業にならないと諦めているのか、9月は第2週が過ぎるまで選択科目ばかりの日や、朝からミサや提携校との懇親会と、途中で教室を抜け出して展示準備に行っても良いような時間割りが組まれている。おかげで校内は上級生下級生にまじって教会関係者が入り乱れての作業で早くもプチ学園祭状態だ。
使っていない教室では既に机の移動が始まり、作業の間に合わない手芸部が廊下に机を持ち出してせわしなくパッチワークをしていたりと、各々が一年の集大成をお披露目すべく最後の詰めに入っている。
LFO もシンセ完成まであと少し、演奏の方もなんとかなりそうで順調だ。
"このまま行けば、素晴らしいステージになるな!"
フミカはワクワク感と期待感を心に満たしながら、選択科目を抜け出して電子工作部室に向かっていた...
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が、急ぎ足で廊下を歩いていると、何か後方に気配を感じる。
「ん?...」
振り向くと誰かが廊下の角にスッと隠れるのが見えた。『何かな?』と思いつつ、再び歩き出すフミカ。
しかし何歩か歩くと、また後方に気配が...
『おかしいな?』と思い、再度立ち止まって後ろを振り向くと、下級生らしき生徒が小走りにこちらに来た。
その娘はフミカの前に立ち止まると、もじもじとうつむいた。
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「何か用かしら?」
フミカが優し気に問いかけると、彼女は意を決したかのように上を向き言った。
「あの、あの、レイナ様にもっと協力してあげて下さい!」
「え?」
戸惑いながら聞き返すフミカに、
「それに、それに... PA、もっと勉強した方が良いと思います!」
彼女はそれだけ言うと、また下を向き2~3歩後ずさりしたかと思うやクルリと向きを変え、廊下を駆け出して10メートルほど先の角を右に曲がった。
角の向こうから『わ、わたし、言っちゃったわ!』『アコってば勇気ある~!』と言う声と数人が走り去る足音が聞こえ、辺りは再び静けさを取り戻した。
「もしかして、これがサエ師匠が言ってた親衛隊の人たち?」
フミカはそう思いながら部室へと急いだ。




