⑵ あぶなあ〜!
『〽️ギュイ〜〜ン』という音とともにドリルが回り始める。リサはその刃先をパネルの印にあてて力を込めた。
...と、ドリルの刃先は狙った場所からずれ『ガガガガ』っと音をたてながらパネルの上を斜めに横切り、溝を刻みながらフミカの手の先で止まった。
「危な❗️」
フミカは思わずパネルから手を離し、体を後ろに引いた。
「ゴメンゴメン! こら危ないわ!」
「何か手袋のような物をしないと指が危ないですわ。」
オミがそう言うと、リサは思い出したように、
「そう言えば、あそこの引き出しに軍手が入ってたような... そうか、こういう時使うのだな!」
と壁際の引き出しから軍手を取って来て二人に渡した。
「もう〜、危ないな〜! そういう便利な物があるなら最初から言ってよね~!」
フミカはそう言いながら軍手をはめ、
「んじゃ、オッケ~! もう一回行ってみようか?!」
と再びオミと共にパネルを押さえた。
「そうか、今はドリルの角度が斜めになっちゃってたから刃先が変な方に行っちゃったんだね。つまりパネルに対して直角にドリルを構えれば良いわけですな! 一つ学習しましたぞ!」
リサは再びドリルを構えスイッチを入れた。
『〽️ギュイ〜〜ン』今度はパネルに穴が開き始めたようだ。周囲にプラスチックの細長い破片が飛び散り出した。その破片の一部がフミカの口元に飛んで来る。
フミカは思わず首を左右に振りながら『ペッペ』と破片を避けた。押さえているパネルからは刃先の振動が伝わり、わずかに回転方向に持って行かれるような力がかかる。
と、突然、押さえているパネルが『グッ』とドリルの回転方向に強く引っ張られたかと思うと、ドリルはガクッと止まってしまった。
リサが
「ん? ん? んんん〜??? なんかドリルが回らなくなっちゃったよ。」
とモーターの回転速度ボタンを力一杯押し込むと、ドリルは『ジ、ジジ、ジジジジ』と鈍い唸りをあげ始めた。
すると突然、フミカたちの押さえるパネルにはドリル回転方向に物凄い力がかかった。パネルを押さえていたフミカとオミは、その力に耐え切れなくなり、ほぼ同時に、
「キャ〜〜!」「キャ〜〜!」
という悲鳴とともに手を離して部屋の端へ逃げ出してしまった。押さえる人間のいなくなったパネルはドリルの刃先と一緒に物凄い勢いで回転し始める。
「ギャア〜〜〜!!! ウヮヮヮヮ〜〜〜!!!」
リサの悲鳴が室内に響き渡った。
リサがドリルのスイッチから手を離すとパネルはゆっくりと回転速度を落としストップした。
一瞬、放心状態になったリサは、
「うゎ、これ怖!!! みんな逃げるしなぁ!」
と、気を取り直して力なく言った。
「ご、ごめんごめん。でも物凄い力がかかって支え切れなくて...」
「凄い力でしたわ。最初は軽快でしたのに...」
「多分、穴のあく最後の瞬間に力がかかるんじゃないかな? で、この状態どうしよ?」
リサがドリルを持ち上げると、その刃先にはパネルがしっかり食い込んで一緒に持ち上がった。
「それ... 刺さっちゃってますよね?」
「そそ、ドリルの刃先とパネルが一体になっておられます。これ、抜かないと...」
リサは刃を引き抜こうとしたが、彼女の力だけではどうにもならなそう...
「フミカ、パネル押さえてくれる? で、オミ、私と一緒にドリル引っ張って!」
3人は踏ん張ってドリルとパネルを引き剥がそうとした。
「ウ〜〜〜ン〜〜〜!」「ウ〜〜〜ン〜〜〜!」「ウ〜〜〜ン〜〜〜!」
全員が力を込めた瞬間、刃先だけがドリル本体から突然抜けた。
リサとオミは勢い余って刃先のなくなったドリルを上に持ったまま部屋の反対側まで勢いよく後ずさりし、背中から壁に激突した。
『ドン!』と凄い音がして棚に置いた物がガタガタ揺れた後、部屋はシ〜ンとなった。
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3人は呆然としていたが、10秒ほどして正気を取り戻したリサが、
「こりゃ、命がけですな。」
とボソっと言うと、オミも定まらない視線で、
「世の中で言う DIY というのは、こんな危険な事をしてるんでしょうか? 東急ハンズという所は、もしかして救急用品を売ってるお店なのかも...」
と、つぶやいた。
フミカが机を見ると、そこにはドリルの刃先が刺さったままのパネルがあった。




