⑸ ファンタジーとシンセの関係
「でもでも、素敵な世界ですよね! 吟遊詩人が唄う歌が物語の中心にあるなんて...」
フミカは自分のファンタジー世界観をなんとか確立しようと必死に発言した。
「そうだねえ。音楽とファンタジーって僕らの世代だと結びつきが強いから、バードラって必然的に生まれたのかもね。僕らの頃はレコードで音楽を聞いててさ。
レコードは A面と B面があるから、片面全部を使った壮大な組曲みたいなのが流行ってね。そこにシンセが流行したもんだから、ファンタジーを題材にしたシンセアルバムって沢山出たんだ。
有名なストーリーのイメージ音楽とか、独自のストーリーの曲とか... 『指輪物語』のコンセプトアルバムみたいに...」
「トールキンの?」
フミカがそう聞くとオミパパは嬉しそうに、
「そうそう。あと『アーサー王と円卓の騎士』とか、アシモフの『私はロボット』とか...
しかもレコードって直径30cm あったから、それを入れるジャケットも大きくて、そこに描かれてる絵が幻想的で凄く良かったんだなあ。材質も和紙みたいな紙だったり、穴を開けて内側の解説書の絵が見えたりで、総合アートって感じだったんだよね。」
「へ〜、結構面白そうですねえ。」
「うん。CD じゃケースが小さくて、そういう遊びはできないし、音楽配信にいたっちゃジャケットアートなんか壊滅状態じゃない?
最近は CD よりアナログレコードの売り上げが良いっていうから、ジャケットアートが復活したら音楽も楽しくなりそうで嬉しいよね。音楽業界ダメダメだから、その辺から変わって欲しいよ!」
「音楽業界ってダメなんですか?」
「多分ね。ニュースでも時々話題になるでしょ? あれは肌で感じるね。バードラとかもレコード会社が CD 出したいとか打診して来るじゃない? そういうのって最近は明らかに話がショボくなって来てるよね。あ、バードラの CD の話とかは内緒だけど...」
「バードラ CD!?」
「そうそう、ゲームが出てるからゲームミュージックの CD とか色々ね。」
「あ〜、そうですよねえ。ヒットしてるんだから、いろんな話もありそう...」
フミカはヒット作の内部の話を聞けてちょっと幸せな気分にひたった。
「あ、ところで僕のレコードのコレクション見せてあげるね! ジャケットの絵が良いんだなあ、これが...」
オミパパは、そう言いながら鉛筆型スピーカーの横にある銀色のラックから古いレコードジャケットを2~3枚取り出した。
「これが和紙みたいな感じのジャケット、こっちが真ん中に穴が空いてるタイプ。」
フミカはそれを手に取りながら、
「ああ、ほんとだ。感触が面白いし、絵が大きいから細かい所まで内容が分かりますね。」
「そう、なんか良い感じでしょ? 音楽と物語とジャケットの感触まで一緒になってるわけね。こっちのジャケットなんて広げると巨大なアナログシンセがド〜ンと写ってて凄いでしょ?」
「うゎ、ホントに巨大なシンセ!ランプとツマミの塊みたいでカッコ良い!」
「リッちゃん好きそうだよねえ。最近はこういうのもソフトシンセになってパソコンの画面で音作るようになっちゃったからショボいよね。」
「せかい先生はアナログシンセの事に詳しいんですねえ!」
ジャケットを見入るリサを横目にフミカが思わず言うと、
「先生はやめようね~。恥ずかしいから... でも、まあそういうわけだね。SF+ファンタジー+音楽+シンセサイザー=バードラかな?
今はアナログシンセっていうと、このあいだのクラブ↑のダンスミュージックの代名詞みたいに思ってる人が多いけど、僕らの世代ではそんな事考える人って全然いなくて、アナログシンセ=SF ファンタジーだったんだよ。」
オミパパの説明に、みんな、
「なるほど~」
と納得した。
リサが、
「LFO が目指すのもきっと、その辺なんだろうね。っていうか私たちにテクノ無理だしさ!」
と言ったのでフミカもオミも、
「ウンウン、テクノ無理!」
と相槌を打った。オミパパも、
「そうだよね、多分その辺って絶滅危機状態の音楽ジャンルだから、ちゃんとやれば評価の対象になるんじゃないかねえ?」
とオススメしてくれた。
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バードラの校正は、初日の盛り上がりに続き、翌日も夕方遅くまで続けられた。校正が完了するとオミパパはその場で、
「それじゃアルバイト代ね。」
と言って、900円 x 7時間 x 3人 x 2日 =37800円をポンっとくれた。
フミカは、
「お寿司もご馳走になってるのに、こんなに貰っちゃっていいんだろうか?」
とも思ったのだが
「まあ自分たちのシンセを完成するためには頂戴できるもんは頂戴しときましょう。」
と、お金を受け取った。リサは、
「これだけあれば、Midi インターフェイスを海外から取り寄せて、シンセの他の部分も完成させられるね! 早速アメリカのショップに注文しますぞ!」
と張り切っている。
いよいよ LFO の活動が本格的になり出した、そんな感じで気持ちが高ぶる3人だった。




