⑵ オミパパの正体
オミの差し出した紙束には『Bards & Dragons 8/偉大なる詐欺師・後編』と書かれていた。「Bards & Dragons」、略してバードラ... フミカがアキバで大騒ぎしてた例のアレだ。
フミカは目を細めてそれを睨みながら、
「なにこれ? バードラ8? バードラは半年前に7が出て、8ってまだ出てないじゃない!」
と思わず言った。
「そそそ、んでこれがその続き。」
「ハァ~~~? 何言ってるの? 続きはまだ出てないって!」
フミカが、ちょっと怒ると、オミが答えた。
「今度出る続きがその原稿ですの。」
フミカはますます混乱して、
「だって、バードラの作者は『華南せかい』先生でしょうに?!」
「その『華南せかい』っていうのが、私のお父様なんです。」
オミの答えに、フミカには何がなんだかわからない。
「今オミが言ったとおりなのだ。華南せかいってオミのパパなんだよ。」
「だって華南せかいって女でしょう?! それも若い!」
「いえ、華南せかいが女だって言った事は一度もないんですよ。お父様が『華南せかい』というペンネームを使ったらネットで『華南せかいって女だろ?』と噂が拡散されてしまって... 勝手に虚像が出来上がってしまったんです。」
「そいでね、バードラがヒットしちゃったもんだから、途中で『作者は私です』って名乗り出れなくなっちゃったんだよ。なんたって若い女性だと幻想持たれてる所へ、デブッチョいオジサンが出てったら売り上げに響きそうじゃない? だからさ、華南せかいって著者近影にも写真出てないし、サイン会とかもやった事ないでしょ?」
フミカは、
"え〜! そんなのってあり〜? っつか人のお父さんをデブッチョいオジサンとか言っちゃうのあり? いやま、その通りなんだけど〜..."
と思ったのだが、確かに華南せかいはマスコミに姿を現さないので有名だ。複数の人間のペンネームじゃないか? なんて噂もあるくらいだし...
それに良く考えてみると、うちの学校には有名人の娘がヒョコっといたりする。何かの話題で『あ、その会社の会長の娘って3年の先輩のお父さん』とか『昨日テレビでコメントしてた大学教授ってxxさんの親戚でしょ?』なんて話は意外に多い。
だとすると、有名作家の娘が学校に紛れ込んでいても別に不思議じゃあない。
フミカは困惑しつつも、渡された原稿を読んで真偽を確認してみる事にした。




