⑴ 再びオミちゃんちへ
『バイトの件で明日から2日間、オミの家に来て欲しい』とリサからの連絡があったのは終業式翌日の午後だった。
“こないだドーナツ屋で言ってた話かな? 何のアルバイトだろ?”
フミカはちょっとワクワクしながらオミの家へ向かった。
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家のテラスでは先に着いたリサがオミとおしゃべりをしていた。
「ヤホヤホ! 待ってましたぞ!」
リサがそう言うと、寡黙なお手伝いの小澤さんが、
「では先生をお呼びしますね。」
と廊下の奥へ消えて行った。
「え? 先生って誰? もしかしてアルバイトってオミパパ関連? まさかコスプレしてビラ配りとか... な〜んてありえないよねえ?」
フミカが困惑していると、オミパパがヨタヨタとやって来た。
「イ? 先生ってやっぱオミパパ? にしても、何つ〜カッコ! ボロボロじゃない?」
その姿たるや、無精ヒゲにボサボサ頭、ヨレヨレの上着、お風呂もあんま入ってないんじゃないすか? みたいな...
オミパパは3人を見ると、
「イャ〜、わざわざありがとね。さっきまでこれやってて、そんじゃ例によってよろしく。」
とオミに分厚い紙束を渡し、
「ほんじゃ、これから寝るんで... 終わったら起こしてね。」
とだけ言うと、クルリと向きを変えアクビしながら再び廊下を戻って行ってしまった。
「これから寝る? 今午前11時ですよ! もしかしてオミパパってダメ人間系?」
フミカがポカンとしていると、オミが説明を始めた。
「アルバイトというのはお父様の校正なんです。」
フミカは思わず
「エ? 更生させるとか? あのクマタ...」
と言いかけて口ごもった。いくらなんでも友達のお父さんをクマタヌキとか言っちゃったら失礼だよね?!
「クマタ?」
「あ〜〜、いや、え〜と、ほらサザンのクマタの新曲が〜...」
「サザンってクマタだったっけ?」
「サザン? オシャレ雑貨の?」
(注:オミが言っているのはサザンテラスの『FrancFranc』あたりの事だろうか?)
“セーフ! みんな J-Pop 知らなくて良かった!”
フミカは適当にゴマカシて話を進めた。
「いや、ほら更生って、高校生が大人の更生ってのもなんだしねえ...」
「ダイジョビダイジョビ、いつも私とオミが手伝ってるし。」
「イヤイヤイヤ、アルバイトとしては成立しないでしょ、それ? 何すんねん!」
フミカが返答に困っていると、
「まあ最初は難しいと思うかもしれませんが、やってみると結構楽しいものなんですよ。」
オミはそう言いながら、さっきの紙束を3つに分け始めると、リサも、
「そうそう、それにフミカが大好きな内容みたいだし。」
とニコニコしながら言うので、
「いや、私はどっちかっつ〜とですね、年上って言っても4〜5歳くらいがゾーンでですね、ま、大好きも色々人によって違うとは思いますが、わたし的にはですね、エ〜ト...」
フミカがボソボソと言っていると、オミが紙束を差し出し、
「まあまずは読んでみてください。先日も秋葉原で好き! っておっしゃってた物ですし。」
と、なんだかわけの分からない話になって来た。




