⑵ 叩けない人向け秘密兵器
しかしサエコは不敵に笑いながら、
「ヘッヘッヘ〜、大丈夫! そういう時の秘密兵器がコレ! ジャジャ~ン!」
と、スティックケースから別なスティックを取り出した。
「これが『毛玉』! 正式名称は『マレット』!」
「スティックの先にポヤポヤの毛の玉が付いてるから毛玉?」
「その通り! 普通のスティックって先が硬いから叩いたらすぐ音が出ちゃうじゃん? だけどこいつは先っぽが柔らかいから音が出んのに時間がかかるんだよ。
だから多少リズムがヨレたり、演奏がいい加減になっちゃってもゴマカシが効くってわけよ。こないだの『炎のランナー』なら、この毛玉でシンバルを両手で交互に連打するロール奏法とか使うとバッチリだと思うぜ!
ロールしながら音を大きくしてくのがクレッシェンド、小さくしてくのがデクレッシェンドって言うんだ。」
<⭕♫YouTube によるサウンド♫⭕:>
https://youtu.be/dWXhUiNCQaE
「で、ロールを繰り返しながら、スネアとかタムを雰囲気に合わせて時々叩くわけよ。こんな感じ...」
サエコは椅子の横から上半身を乗り出して、マレットで適当にドラムを叩いた。
<⭕♫YouTube によるサウンド♫⭕:>
https://youtu.be/l2aCUdUI_i0
「オオ〜〜、なんかカッコイイんですけど! 適当に叩いてるだけ?」
「そう。かなりいい加減。ポイントは人前でやる時には、いかにも『自分は芸術的な演奏してます』って顔して叩く事な。」
サエコは笑いながら、さらに別の秘密兵器を取り出した。
「あと、こないだ言ってたウィンドチャイムってのがこれ。」
それは、短い金属パイプがたくさん吊り下げられた30センチ程の木片...
「これは指でもスティックでもいいから、パイプんとこを端から鳴らしてくわけな。 そうすると、ほらなんか感じ出るっしょ?」
<⭕♫YouTube によるサウンド♫⭕:>
https://youtu.be/2LYSTqrGRVY
(作者注:ウィンドチャイムはツリーチャイム、バーチャイム等、メーカーによっても呼び名が違う)
「ウヮ~、それっぽいよ! なんかカッコ良いね。」
リサは感動した。
「これもポイントは同じく、いかにも!って顔して演奏すんのな。これならセ祭までにカッコついた演奏できんじゃね?」
「うんうん、イケそう! ちょっと安心してきた!」
二人がそんな事をしていると、突然入り口ドアの上にある赤いランプが点滅した。
「え? なになに? 火事?」
リサが慌てると、サエコが、
「あ、ドアを開けたい時に、外でボタン押すとランプがつくんだ。この部屋って納戸を防音に改造しただけだからさ、ドア開けてドラム叩いたら音が近所に響き渡っちゃうわけよ。なんでランプがついたら音出しをやめてドアを開ける事にしてるんだ。リサ、ちょっとドア開けてみてくれる?」
と言ったので、リサは防音用の重いドアを押し開けた。




