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それ行けシンセ女子!  作者: MikBug
Day8:7月21日/初めてドラム叩いた
36/82

⑴ 手と足って一緒に動いちゃうんだよね

挿絵(By みてみん)

「ダ~~、できない! なんでこんな簡単な事が... 頑張れ私の手足!」


 試験明けの日曜日、リサはサエコ宅の防音室で悲鳴をあげていた。


 サエコの家には納戸なんどを改造したドラム練習用の防音室がある。が、防音室は狭いので、今日は二人だけで練習だ。


 この試験期間、リサは勉強に没頭したおかげで軽音部長との問題を一時、忘れられた。生まれて初めて『試験も悪くないもんだ』と考えながらドラム椅子に座るリサ。サエコはその横の狭いスペースに立ち、


「まあリズムパターン叩くと誰でも最初はそんなもんよ。手と足って一緒に動いちゃうんだよなあ。もう一回やってみ。」


 と指導をしている。


「まず右手でシンバルを『チチチチ』って8はちぶ音符で刻んで...」



<⭕♫YouTube によるサウンド♫⭕:シンバルで8分音符を刻む(バカでもできる!)>

https://youtu.be/hOsY3q0Vvs0

 


「そうそう、んで左手で2拍目と4拍目にスネアを叩く。」



<⭕♫YouTube によるサウンド♫⭕:さっきのにスネアを入れる(意外と難しい)>

https://youtu.be/5YT_Oqvv6bk 



 リサは言われた通りにやろうとするのだが、どうしてもスネアを叩こうとした瞬間に右手のシンバルがお休みになってしまう。リサは、ちょっとヒスを起こして叫んだ。


「グギ〜〜! なんでシンバルが抜けちゃうんだろ! ぐやぢい〜〜〜!」

「まあまあ。 じゃ、今度は右足と左手な。 右足でキックのペダルを『ドッッドドッッッ』。」



<⭕♫YouTube によるサウンド♫⭕:右足でキックを鳴らす(超簡単!)>

https://youtu.be/VGMNjWLsycE 



「そうそう、そんでその隙間すきまの2拍目と4拍目に左手のスネアが入る。『ドッタドドッタッ』。これは出来るだろ?」



<⭕♫YouTube によるサウンド♫⭕:キックとスネア(結構簡単)>

https://youtu.be/HtxGxqMAbOo 



 リサは、たどたどしく叩きながらも言った。


「ウンウン、ここまでは出来るんだよねえ。」

「そう、その状態でさっきのシンバルを8分音符で『チチチチ』って一定間隔で入れる。」


 サエコの言っている事は頭では簡単に理解できる。図に書いたって、譜面に書いたって物凄く簡単な事だ。


 誰でもできそう! っと思いきや、シンバルを細かく刻もうとすると、突然左手と右足が一緒に動いてしまう。



<⭕♫YouTube によるサウンド♫⭕:最初にドラム叩いた人は必ずこうなります(笑)>

https://youtu.be/zEhV16zSRUs



「ムガ~~ムガムガ~~! ウキャ〜! イラつく~! バラバラにやると出来るのに、一緒にやるとどうしても手と足が一緒に動いちゃう、クヤシイ~~! どうなってんの私の手足! 今まで仲良くやってきたでしょ、君たち!」


 リサは、そう言うと全部のドラムを一緒に叩きながら、


「インディアンのリズム~!」


 とヤケクソになった



<⭕♫YouTube によるサウンド♫⭕:初心者の定番、インディアンのリズム>

https://youtu.be/zsgNIONp0n0

 


 サエコは笑いながら、

「それ、初心者が必ずやるんだぜ。」

「インディアン餅つかな~い。」


 リサのくだらないジョークにサエコは大ウケした。


 彼女は少しく笑ったあと、フト真顔になり、


「バラバラにやってると上手くいくけど、全体でやると問題が起こる。ドラムも人間関係も似たようなもんだなあ。」


 と、意味深な発言をした。


「それって、こないだの私たちと軽音部長の話?」


「まっね。でも、あんなの大した事ないね。バンドみたいに沢山の人数でやってりゃ、それなりに人間関係の問題も出てくるし、そのバンドが集まってコンサートでも企画しようもんなら益々問題も増える、こりゃしょうがないんじゃね? みんなそれを解決しながら先進んでくわけだしさ。」


「うーん、中々大変なんだねえ」



 リサが感心すると、サエコは苦笑しながら、


「でもその問題の大元も意外と下らない事が多いけどな。練習室の取り合いとか、好きな音楽ジャンルのこだわりとかね。」

「音楽のこだわり... うちのパパもさ『ヘビメタ』はいけなくて『ヘヴィメタル』って言わなきゃいけないってこだわってたよ。特に『ウ”』が重要って...」


 サエコは笑いながら答える。


「あるある! ま、もめ事も最初は似たようなもんでさ。『ロックンロールとメタルを同次元で語るな』とか、そんなとっから始まって... それが発展して『ファッションが違う』とか『ざまがどうのこうの』って、もうお前ら演奏やめて評論家になれば? みたいなのな。でも本人それを言われると生き方を全否定されたと思って全身全霊ぜんしんぜんれいで反論してくんだよなあ〜... 疲れるんだ、そういの! そういう意味じゃ LFO と軽音部長の問題なんて軽症だね。部長は細かいこと全然気にする人じゃないしさ。ま、部長が納得するようなステージでもやりゃ、一発で円満解決だね。」



(作者注:海外のアーティストだとメタルもハードロックも一括りで『ロックンロ〜ル』(ロケンロ〜って聞こえますが)って絶叫しちゃう人も多いです)



 色々とモヤモヤしているリサには少し希望の持てる言葉だ。


 そんな事を話してボンヤリしているとサエコが言った。


「イカンイカン、ボヤっとしてないで練習練習!」


 そう言われ、リサは再びリズムパターンを何度も叩いてみたが、やっぱり上手くいかない。


「ダメだ〜! これじゃ、セ祭のステージでドラムなんて無理じゃないの〜?」


 リサはスネアの上にスティックを立て、それにあごを乗せながらボヤいた。


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