⑶ 軽音部長の抗議
「⚡今回のステージ枠の抽選には偏りがあると思います。クラシック系が優先されて軽音系は軽視されていませんか?
合唱部はホールも礼拝堂も使っているし演劇部だってホールの時間帯を押さえている。軽音は視聴覚室とホールが少しだけで、枠数も圧倒的に少ないと思います。
しかも日曜のホールの一番良い時間帯を取った LFO は音楽でも演劇でもない電子工作部です。電子工作部は部屋での展示だって出来る。
さらに LFO のメンバー表を見ると、出演者にはピアノ部の人もいます。ピアノ部もホールと音楽室を使えるのに、その上、別の部と組んでホールの枠を押さえるのは明らかに不公平じゃないですか?」
フミカはギョッとなった、
“これって明らかに自分の事を言ってる”
軽音部長はさらにまくし立てるように続けた。
「⚡今、渡された資料を見ましたが、LFO だけ PA 卓の接続がラインばかりです。
他の枠の人たちはマイクがメインなのに LFO だけラインとなると、その時だけ PA 卓の接続を変えるか、LFO だけのために大きな PA 卓を借りなければなりません。
しかも全体の PA を担当するのは軽音です。軽音は他の部の出演者の裏方じゃありません!」
軽音部長はかなり怒っているようだ。フミカはリサに小声で、
「なんかマズイ雰囲気... で、ラインって何?」
と聞くとリサも小声で答えた。
「電子楽器の出力みたいにミキサーに直接つなぐのがライン。ピアノとか歌はマイクで拾ってミキサーにつなぐから、マイクとラインが混在すると、スイッチで切り替えるか、大きなミキサーが必要になるんだよね。」
「じゃ、PA は?」
とフミカが聞くと、リサはちょっと詰まって、
「エット〜〜、ペンシルバニア州?」
「イ? それってアメリカの州の略称でしょ? なんで地理の話?」
「んとんと、そんじゃプロトアクチニウム?」
「それってメンデレーエフ先生の? 化学の授業に出た? いやいや、いくらなんでもその PA じゃないでしょうに!」
(作者注:プロトアクチニウム=原子番号91でドイツの科学者が発見した。工業用に使われるが周期表では物凄く後ろに出てくる。なんでこんなマニアックなの知ってんでしょうね?)
フミカはそう聞き返したのだが、これが軽音部長に聞こえてしまったらしい。彼女はフミカたちの方を睨みながら、
「あなたたち PA も知らないの? PA がなきゃラインは困るでしょ? 音出なくなっちゃうんですよ。無音でもいいんですか?」
と言った。フミカは、
“『無音?』どこかで聞いた言葉。あ、そうか金曜の代官山の4分33秒ネタだ”
そう思い出した瞬間、嫌な予感がした。フミカは真面目で厳粛な雰囲気の時ほど、なんだか急に可笑しくなってしまうタイプなのだ。
”なんか危険? なんかなんか、やな予感?!?!”
と思った瞬間、リサが唇を尖らせながらうつむき加減に、
「♨️ ムォーン ♨️」
と、こないだのつまらないギャグを小声でかました。フミカは緊張の糸が突然切れ、
「ブハァ〜」
と吹き出してしまった。




