⑵ 時間枠
室内を見回すと、会議用の階段教室は、すでに生徒で一杯になっている。
フミカが着席すると同時に委員長らしき生徒が、
「それでは聖セシル祭、芸能関連出展のタイムスケジュールを発表します。」
と、開会宣言を行った。聖セシル祭は彼女たちの学校の学園祭の名称で、生徒の間では『セ祭』の俗称で通っている。
リサの隣に座ったフミカはヒソヒソ声で、
「なんで、こんなとこ出てんの?」
「ステージの枠取れたみたい」
「ステージ? 誰の?」
「もちろん LFO の!」
思いもよらない返事をされたフミカは少し大きな声で、
「え?! だって曲の候補がかろうじて決まっただけで、練習どころか弾こうにもシンセすらまだ完成してないじゃない?!」
と、ここまで言ったところで委員長に睨まれてしまった。二人は筆談で会話の続きをする事にした。
「✏️ ステージ枠応募してみた。当選かな? うれし~!」
「✏️ シンセは?」
「✏️ 夏休みがある! 作る!」
「✏️ 曲は?」
「✏️ こないだの曲 Good!」
「✏️ 無理だって〜!」
「✏️ "汝ら信じて求むれば、すなわちそれを得ん” b~y イエス様」
「✏️ そりゃこないだの聖書の時間!」
「✏️ シスターの講義を疑うと?」
「✏️ 本質のすり替え」
「✏️ さあ、祈りましょう!」
「✏️ ちゃうって!」
フミカが思わず声に出して絶叫しそうになった時、委員長が、
「ホールの午後1時半から2時『電子工作部 LFO』。」
と信じられない事を言ったように聞こえた。
フミカが、
“ハァ〜〜〜???”
という顔をすると、リサが再び筆談で、
「✏️ やった! イエス我らを見捨てず、『百卒の長の如く信ぜよ』」
(作者注:百卒の長の話=軍隊のリーダーがイエスの言う事を絶対信じたので、部下の病気が治っちゃったというエピソード)
「✏️ オイオイオイオイ」
「✏️ さあ、フミカ頑張ろうね〜!」
「✏️ ウッソ〜!」
「✏️ ヨハネの福音」
「✏️ 主に栄光」
って、毎朝の礼拝の応唱の癖で『主に栄光』なんて書いちゃったけど、それどころじゃない〜!
(作者注:応唱=ミサ等で先導者に続いて会衆も言葉を続ける定番フレーズ、先導者が『xx の福音」と言ったら、みんなが『主に栄光』と言うパターンは良くあるので、ミッションスクールに行っていると、思わず言っちゃったりする。)
フミカが再び絶叫しそうになった瞬間、
「異議あり!」
と手を上げた生徒がいた。その生徒は、
「軽音の部長です。」
と言うと、サッと立ち上がった。
委員長が、
「何か?」
と怪訝そうな顔で見つめると、軽音部長は異議を申し立て始めた。




