⑷ 無音の価値について語ってみた
今度はオミも小さめの声で言った。
「あれだけ大きな音を聞くと、静けさが、いかに大事か思い知らされますわ。私、今日のような音楽を聞くなら4分33秒の方が好みです...」
「ケージの?」
「ハイ...」
「確かに~。」
相槌を打つフミカに、リサが割って入った。
「あの~、ちょっとちょっと話し見えてないんですけど〜...」
ようやく正気を取り戻しだしたオミが説明を始めた。
「え~とですね、私も詳しくないのですが、『ジョン・ケージ』という作曲家の方が『4分33秒間』、音を出さない曲を作ったんです。」
「音がなかったら曲じゃないじゃん!」
「うん、そいでさ、コンサートでピアニストが4分33秒間じっと座ってたんだって。お客さんが『どうしちゃったんだ?』ってザワザワして... で、ケージ曰く『そのザワメキが音楽だ』って。」
(作者注:楽器は必ずしもピアノでなくても良い)
「なにそれ? 本気? そういう芸風? それでお金取るの? それ詐欺で訴えられないわけ?」
(注:あくまでリサの意見です)
<⭕♫YouTube によるサウンド♫⭕:4分33秒を聞いてみる(便利な途中時間経過の表示付き!)。あなたには何が聞こえますか?>
https://youtu.be/4Y5Ttd6AoQM
「ま、トンデモクラシックって結構あるからねえ... 『4分33秒』の続編で『0分00秒』とか、オーケストラを左右に分けて、途中で演奏を止めながら続きをゲームで決めて得点を取りあう曲とかさ。ゲーム音楽じゃなくて音楽ゲーム... で、最近は一巡して真面目な音楽で勝負しようって人が増えてるらしいよ。クラシックの人って心広いよね。」
フミカは彼女なりの解釈で近代クラシック事情を説明した。
「そのような音楽があるのでしたら、今日のようなものも音楽としてありなんでしょうか? もしかして、私達が時代から取り残されているのではないでしょうか?」
オミもブルーな意見だ。
「でもさ〜、今日みたいのか4分33秒かなら、私ゃ音のない無音推奨派だね。」
リサはそう言いながら前屈みに唇を尖らせ、
『♨️ ムォ~ン ♨️』
と、つまらないギャグを言った。そのタコ唇の姿が可笑しくて、フミカは不覚にも爆笑してしまった。オミも薄っすら笑いを浮かべる。
「ケージさんって、他にもピアノをトンカチで叩いたりとかやってるから、鍵盤叩いてた今日の人たちも、ケージさんも似たり寄ったり?」
フミカはクラブ系とクラシックの共通点を見つけたようだ。
(注:あくまでフミカの個人的な意見です)
「こりゃシンセ音楽に詳しい人に本気で話を聞かないと収拾つかないよね。オミパパってどうよ? 詳しそうだよね?」
とリサが提案した。フミカは、
“あのコスプレ親父?”
と思ったのだが、他に情報源もないので、
「そうだねえ...」
と力なく賛成した。覚醒完了したオミは、
「良いですわ、それじゃ今度の日曜にでもうちにおいで下さい。」
とOKした。リサが、
「それじゃ、日曜にオミんち! "♨️ ムォ~ン ♨️"」
と、またタコ唇で言ったのでフミカもオミも笑ってしまったのだった。




