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それ行けシンセ女子!  作者: MikBug
Day5:7月5日/JK クラブで撃沈ス
23/82

⑶ 避難先にて放心状態

 半意識状態の二人は、気づくとオミを抱えたまま、どこをどう歩いたのか代官山駅前に来ていた。


 フミカが、


「 フ~ 」


 っと大きく息をすると、リサも、


「 ハァ~ 」


 っとため息をついた。オミは相変わらず幽体ゆうたい離脱りだつ中のようで、


「幸せパタパタ...」


 と独り言を発っする物体と化している。3人は残る力を振り絞って駅前の喫茶店に転がり込んだ。



ーーーーーーーーーーーーーーー


 静かな店内に座ったフミカの耳には、『ジ~〜』とセミの鳴き声が響き、周囲の音が遠くに聞こえる。リサも同じようで、耳をポンポン叩いたり頭を振ったりしている。オミは席でフリーズ中だ。


 アイスコーヒーを3つ買って席に戻ったフミカは再び、


「 フ~☁️ 」


 っと息をするとリサも、


「 ハァ~☁️ 」


 っとため息をついた。

     .     

     .     

     .     


 1分ほどの沈黙のあと、フミカが、

「凄い音だったねえ!」


 と言うと、周囲の人がチラッとこちらを見た。耳がキンキン鳴っているので声が大きかったらしい。


 リサも、

「いやいやいや、身体が宙に浮いたみたいだったよ。」


 と言ったが、彼女も声が大きい。再び周囲の人がこちらを見た。


 フミカはリサに顔を近づけ、少し声を小さめに、


「そ~そ~。」

 と脱力気味に賛成した。


 と突然、オミが中立ちになりながら両手を胸の前で合わせ、半ベソ状態で叫んだ。


「あのような場所に入ってしまって、私たち退学させられてしまいますわ! 誘ってしまった私は、なんて罪深いのでしょう! 主よ憐れみたまえ!☔️☔️☔️」


 天使の羽をつけた半コスプレ少女が、いきなりバカデカイ声を出したので、周囲の人はギョッとして、また3人の方を見た。


 フミカとリサは慌ててオミの頭を手で手繰り寄せ、


「声、大きいって~!!」


 と小声で言った。オミは相変わらずボ~ッとした表情だ。リサが耳を叩きながら、


「いや、参ったね、あまりの大音量で、まだ耳がキ~ンって鳴ってるよ。」

「私も... 高層ビルのエレベーターに乗った時みたい。」


 フミカも耳たぶを引っ張りながら同意した。オミが二人に顔を近づけ、朦朧もうろうとした表情で、


「本当に... ビックリ... しましたわ... 天使パタパタ...」


 と切れ切れに話し始めた。


「でも、あれがシンセの音楽だとするとLFOの将来は暗いかも~...」


 リサにしては珍しく悲観的な意見だ。


「いや、あれだけじゃないでしょ? ってか、後ろの画面見てた? あの人達って演奏してなかったよね? ボリューム動かしてただけだよね? こないだドーナツ屋さんでリサちゃんが『ボリューム調整係!』って言ったけど、今日の人達ってボリューム調整係だよね? リサちゃんってば、そういうの知ってたの?」

「まさかまさか! あれは冗談... のつもりだったのに本当にステージでボリューム回すだけの人がいるとは...そういや、原宿駅前の楽器屋さんでも、みんなツマミだけいじってたし、BGM に流れてたのも、さっきみたいなのだったし...」


「でも、ボリューム回すだけでステージって出来るみたいだし、それがウケてたよね? 楽器屋さんでもそうだとすると、シンセを演奏しようとしてる私達の方が間違ってるとか?」

「ウ~ン...」


「もし、ああいうのがシンセの音楽だったら弾く必要がないわけだから、私が参加する必要もないよね。」

「イヤイヤイヤ、そんな事は...」

「ない?」

「 ...と思いたい... だって、シンセって鍵盤がついてるじゃない。今日の人たちのシンセにも鍵盤はあったよ? 弾いてなかったけどさ...」


「叩いてはいたけどね、鍵盤...」

「鍵盤って叩くものなの?」

「さあ? 私は今までピアノでそういう演奏経験した事はないけど...」


 リサもフミカも、どう話していいのか分からず会話に詰まってしまった...


 このままだと暗くなりそうなので、フミカは少し話題を変えて話す事にした。


「それにしても音も凄かったけど、けむかったねえ! 耳はキンキン、のどはケホケホになっちゃったよ。」

 フミカがき込む真似をしてからアイスコーヒーをすすると、リサも、


「そそそ、私も喉痛~い! みんな酔っ払ってたから、あんな大音量でも平気なんだよ、きっと...」

 とストローを口にくわえた。


 突然オミが大声で、


「いえ違います! 私、分かりました! あの煙は噂に聞く『脱法だっぽうシガレットの煙』だったんです! だから皆さん大音量でも平気だったんです! そうですわ! それに間違いありません!」


 フミカもリサも飲みかけのコーヒーを、


「ブ~~ッ!」

 と吹き出し、慌ててオミの頭を自分達の方へ引き寄せ、小声で、


「オミ、声大きい~!」


 そっと周囲の様子をうかがうと、今度は店員もこちらをチラ見している。フミカは、


“『脱法シガレット』って『マ』から始まって『ナ』で終わる4文字熟語だよね?”


 と思ったのだが、そんな言葉を口に出すと、ますます立場が危うくなりそうなので、黙っていた。リサはオミの頭を引き寄せたまま、


「この間、新聞の記事に、海でクラブ禁止ってあったじゃない? あれって今日みたいな音量だから禁止になったんじゃない?」

「あ~、記事みたみた。結構問題になってたよね。なるほどそういう事かも!」

「って事はさあ、私達が行ったクラブってクラブ違いっていうか... 所謂いわゆるカルチャークラブならぬカルチャーショックみたいな...」


 リサの親父ギャグだか何だか分からない発言に、それを判断する能力の残っていないフミカは、


「そうねえ...」


 と脱力状態な生返事をしながら続けた。


「それにしても、あの音量で演奏したら、うちの学校なんか窓ガラス割れちゃうよね。」

「いやいやいや、窓ガラスどころか床抜けて校舎崩壊だっつ~の!」


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