⑴ 代官山で待ち合わせ
金曜日、3人は放課後一度家に帰り、6時半に代官山の改札口で待ち合わせた。
代官山駅のある東横線は最近副都心線と相互接続し、池袋と元町中華街がひとつに結ばれた。池袋よりも先は、どこまで行けるのか... 学校では誰も知らない...
オシャレの街代官山と言っても駅のホームはかなり地味。フミカが階段を上り切るとリサとオミが改札脇で待っていた。
今日のオミは背中に小さな羽がついて天使風。
「オミちゃん今日は羽付きだね。」
フミカがそう言うと、オミは、
「そうなんです。今日は皆さんを幸せにする天使なんです、パタパタ☆彡」
日本って平和...
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全員揃ったのでリサが
「さあて、それじゃクラブでカルチャーしますぞ!」
と、なんだか訳のわからない事を言いながら先頭をきって駅舎を出た。オミがその後を追いながら手元のスマホで行き先を確認する。
フミカはワクワクを抑えきれず、歩きながら話した。
「今日って、どんな曲やるんだろうね? 私たちにも出来るような曲を演奏してくれると嬉しいよねえ。私、今までピアノ部でクラシックばっかり弾いてたからシンセの演奏がどんなのか知らないけど、凄い期待しちゃってるんだ! こんな世界の広がるようなチャンスを与えてくれたリサちゃんとオミちゃんに感謝しちゃうよ!」
その言葉に、オミはスマホのマップアプリから目を上げて応えた。
「いえ、私たちこそフミカさんに感謝ですわ。今まではリサさんがシンセを作られても、私がちょっと音を鳴らして終わってしまい、とても音楽を作るまでにたどり着けなかったんですから。」
「そそそ! 『予算の無駄づかい』の酷評から『芸術の創造』な〜んて高尚な世界に行っちゃえるんだからね! みんなの見る目も変わって『マッドサイエンティスト』の汚名返上、電子工作部の株上がりまくり〜! 今夜は『空気装置』から決別する記念すべき夜ですぞ!」
「ウン! 頑張ってシンセを勉強させてもらって、みんながビックリするようなライブを目指そうね! でも、今日のシンセを演奏する人があんまり難しい弾き方をしてたら、私ももっとピアノの練習しなきゃいけないかもしれないし、気合いを入れないとね!」
「ああ、なんて素敵な夜でしょう! きっと、私たちの青春の記念すべき時が、これから訪れようとしているんですね!!!」
3人は、いやがうえにも盛り上がり、代官山を山手通り方向に歩いて行った。




