⑷ カルチャーへの誘(いざな)い
オミはテーブルのレモンティーを取り上げると、思い出したように言った。
「そうそう、先日ネットでシンセを調べていましたら、金曜日に代官山でシンセのイベントがあるというのを見つけましたの。参考になるかも知れませんから行ってみませんか?」
「へ~? イベントってどんなとこで?」
「よく分からないんですが、クラブという所でやるそうです。」
「クラブ? フィットネスクラブ?」
フミカはオミに聞いたが、
「さあ、よくわからないんです。」
と困っている。リサが、
「まさか老人クラブとか?」
と笑いながら言うと、
「リハビリの一貫としてシンセの練習とか? それはないよねえ? いくらなんでも...」
とフミカ。
「ネットでは会員制の集まりとなっていましたが、イベントのページには『どなたでもお気軽にご参加ください』と書いてありましたから、気軽に集まる社交クラブのような所ではないでしょうか? そこでシンセを教えていただけて演奏も聞かせていただける、というような...」
「ああ、そかそか、カルチャークラブとかね。」
とリサも納得した。
「演奏曲目は?」
「それもよく分からないんですが、古いシンセの解説後に、DJという方々が演奏をなさるようです。」
「へ~、それはいいねえ! 楽器の解説聞いて音も聞ければ、LFOで何やったら良いか参考にできそう!」
フミカが賛成するとリサが聞いた。
「で、DJって何する人?」
「ディスクジョッキーという意味らしいですわ。お話をなさる方では?」
「あ~、学芸員みたいな人かね。」
「でも、金曜の夜に代官山に行っちゃって...」
リサがすかさず、
「シスターのお説教部屋が心配ですって?」
と言ったので、フミカはリサの口真似をして言った。
「そそそそ、大丈夫かねえ?」
「ですが、週末の夜にコンサートを聞きに行くといった事でしたら、学校も特に問題にするとは思えませんし... 私達もシンセの演奏会を聞きに行くのであれば、なんら問題ないのではないでしょうか?」
「確かに。情操教育の一環なんだからシスターにも怒られないよね。」
フミカがそう言うとリサが、
「叩けよ、さらば開かれん。」
と、こないだ聖書の時間に習った一節を語ったので、みんな、
『そりゃそうだ! じゃ行ってみよう!』と
笑いながら帰途についたのだった。




