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それ行けシンセ女子!  作者: MikBug
Day1:6月25日/つながった
2/82

⑵ 音が出たです...

 突然、


『⚡⚡⚡ ジジジ、ガリガリ ⚡⚡⚡』


 と凄まじい轟音ごうおんがスピーカーから出た。フミカは驚いて、思わず耳をふさいだ。






 一瞬の静寂のあと、


『♫ ピ〜〜〜〜 ♫』


 という音がスピーカーから流れ始める。とりあえず雑音じゃなさそうだ。フミカはそっと耳から手を離してみた。


 周りの部員たちは、

「キタコレ〜〜! 音出たし!」

「うん、いい感じじゃん!」

「フムフム、なるほど。サインだがひずみが多いな。もう少し出力しゅつりょくだん回路かいろ定数じょうすうを調整した方が良かろう、フム。」


 と相変わらず勝手な事を言っている。


 盛り上がりを無視しても差しつかえないと学習したフミカは、リサに質問した。


「これがシンセの音?」

「う~ん、良い質問だねえ。でもシンセに特定の音色はないんだ。しいて言えば、どんな音でも作れるのがシンセなのだ! 凄いでしょ〜?!」


 リサはちょっと自慢気だ。


「へー! じゃさ、ピアノの音にしてよ。 私、ピアノ弾くのが好きだから。」


 フミカがそう言うと、リサは右手を前に突き出し、人差し指を振りながら、不敵な笑いを浮かべて言った。


「フッフッフ、良い所に気づいたね明智あけちくん。実はまだこの構成ではピアノの音は出ないのだよ。」


“何を言っとるんだこの人は!”


 フミカは、そう叫びたい気持ちをグッとこらえて聞き返した。


「この構成? じゃあ違う構成ならピアノの音も出るって事?」

「そそ、もっと色んな回路を足してね。でも今はこれだけ、 VCOブイシーオー っていうのだ」

「VCO...? AKB みたいな?」

「そそそ、AKB はアキバ、VCO は紀元前0年、ってなんやねん! そもそも紀元前は VC じゃなくて BC!」


“う、自己ツッコミしてるし... 最初は Oオーって言ったのに0(ゼロ)って言ってるし... そもそも紀元前0年ってないし...”


 突っ込みを入れたい気もしたフミカだが、おさな子を見るごとく優しい気持ちにもなってきた。


“そう言えば昨日の聖書の時間でも『幼な子の如くなりなさい』って習ったっけ。それってこういう事態のための教訓?”


 フミカはそんな言葉を思い出してボヤッとしていると、リサが言った。


「いや、そうじゃなくて... うーん、細かく説明すると難しいんだけど、 VCO の "O" は "オシレター の O"  日本語だと発振器はっしんきなのだ。」



挿絵(By みてみん)

<⭕YouTube による解説⭕:VCO について語ってみたりして...>

https://www.youtube.com/RdfwpKAwcKM



「発振器、オシレター... えーと、なんか少しだけ聞いた事あるような...  SF映画とか?」

「そそそ、近い近い! そんなの知ってるなんて旦那、通ですな~!」


 と言いながらリサはヒジでフミカの小さい胸をツンツンと突ついた。フミカは身を引きながら、


“ウ〜ン、彼女の目覚めすのはお笑い系では?”


 と思ったが、リサは意に介さずに続けた。


「で、この発振器、オシレターね。これが出した信号をこっちのステレオにつないで音を出してるってわけ。」

「ふーん、少し分かった。で、このピ~~って音、いつまで出てるの?」


 フミカは出続ける音にちょっと疲れていた。


「あ、 ゴメンゴメン。この小さなボタンから手を離せば、あ~ら不思議、音がピタッと止まりました~!」


 リサが基板の押しボタンから手を離すと音が止まった。


“つ、疲れるし...”


 しかし疲れるのにも疲れて来たフミカは、なんだか気分がハイになってきた。


「でもさ! さっき、演奏って言ってたけど、こんなちっちゃなボタンで?」

「うんうん、分かってきたじゃない。」

「え? でもたったひとつのボタンでどうやって? ピアノなんか鍵盤が88もあるんだよ?」

「そそそ、そこが問題なのだ。でも音程はちゃんと変えられるの。このボリュームを回すと、ほらね!」


 リサがそう言いながらツマミを回すと音程が変わりはじめた。



<⭕♫YouTube によるサウンド♫⭕:音程を変えてみた>

https://youtu.be/nUXx4Vutato



「ほんとだ、音程が変わった! おもしろ〜い!」


 フミカはちょっと感動した。


「ね! ちょっとやってみてみて!」


 リサの勧めにフミカは、


“え~、でもこんな機械に触ったらビリビリ! って感電しちゃうんじゃないの?”


 と思ったのだが、みんなに笑われそうなので黙っている事にした。


 とりあえずボタンを押しながらツマミを回すと、音程が上がったり下がったり、『⚡ ピョョョ~ ⚡』っと変化した。


「あ、ちょっと面白いかも!」


 フミカが思わず声に出すと、リサは満面の笑顔を浮かべて言った。


「☺️ でしょでしょ! 面白いよね! ☺️」


 それから

『⚡ ピヨ~ン、ピーピー、ピョョョョ〜〜〜、ピ〜〜〜〜 ⚡』


 と何だか楽しい時間が過ぎた。



<⭕♫YouTube によるサウンド♫⭕:シンセで奏でる音楽モドキ>

https://youtu.be/Q_30xdG_ccQ




 まわりの部員たちも、


「う〜ん幻想的だね。」

「前衛芸術!」


 などと盛り上がっていたのだが、5分もすると最初の興奮は消え失せ、なんとなくシラけたムードがただよって来た。

     .     

     .     

     .     

     .     

     .     


 フミカはボソッと......

「あのさ... なんだか飽きてこない?」


 と言うと、リサも、

「確かに... これじゃ『ピーピー言ってるだけ』って酷評こくひょうされてた今までと変わらないかねえ?」


 と自信なさ気になってきた。


「それにさ、これって...... そもそも音楽?」


 フミカの抜本的な意見に、リサも首を傾げ、

「う~ん......」


 と悩んでいる。


「なんか怪奇映画っぽいよね? SF的ではあるの?」

「古〜い白黒の SF 映画っぽい気もするけど、オバケ出そうで微妙かも~〜...」


 二人の会話に、盛り上がっていた部員たちも腕を組んで考え込んでしまった。


 すると突然、部員たちの輪の中から声がした。


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