⑵ みんな長髪だったらしい件
「そういえば...」
フミカは鍵盤をいじりながら、思い出したように話し始めた。
「こないだアキバの喫茶店で出た親世代のシンセの話しだけど、うちの父親は髪の毛伸ばしてフォークギターで日本を変える! とか言って、V サイン出しながら『ピース!』とかやってたらしいんで、シンセは関係なさそう。『世界を変えるラブ&ピースが...』って語り始めちゃったんで、『その話長くなる?』って言ったらスネちゃったよ。」
オミも父親に話を聞いたらしい。
「私もお父様に聞いてみました。やはり髪を伸ばしてシンセ音楽を聞いていたそうですわ。なので色々聞けるかもしれません。古いレコードや CD もあるようですし...」
「へ〜、それは期待できるねえ!」
フミカが喜ぶと、オミは続けた。
「お父様によると、あの時代にシンセで音楽をやっていた方々は精神性を求めてインドに行く、ファッション性を求めてイギリスに行く、お金を求めてアメリカに行くという3派に分かれたそうです。私のお父様は、インドへ行ったパターンのようでしたわ。裸足で寺院を渡り歩いたり、物乞いしながら民族楽器のシタールやタブラを演奏したりとか... その後さらに悟りを求めてモンゴルでしばらく暮らしていたという話でした。」
なんか後半は参考になりそうな、ならなそうな... でもシンセ音楽に詳しそうなので期待...
今度はリサが、
「私もパパに、もう少し音楽の話し聞いてみたのね。私達の親世代って機材がアナログからデジタルに切り替わる時期にヘビメタバンドやってたんだって。その頃のアナログ機材って超時代遅れだったらしいよ。私がアナログシンセ作ってるって言ったら凄く驚いて『え? 今さらそんなもん作って何すんの?』だって! あ、ちなみに『ヘビメタじゃなくてヘヴィメタなんで間違えないように!』って念をおされたけどね! 『ラブ&ピース』に『ヘヴィメタ』、お父さん達こだわるねえ...」
それを聞いたオミは、
「人間、こだわるのが大事なんですねえ。」
と的外れに感心しながら続けた。
「すると秋葉原の店員さんがおっしゃっていた頃がアナログシンセの大流行で、その後下火になったという事でしょうか...」
「そそそ、でもさ、アナログシンセって時々ブームになるんだって。部品屋のオジサンが言ってたみたいに今はミニブームみたい。」
「へ〜、じゃあ LFO も良い時期にスタートしたのかもね!」
と3人が話し込んでいると終業ベルが鳴った。
リサが、
「ねえねえ、帰りにドーナツ屋さん寄って、続きの話ししない?」
と提案した。校則では、登下校時の飲食は禁止のはずだがこのドーナツ屋は暗黙の了解で大丈夫という事になっている。まあ、生徒が勝手に決めた事なんだろうけど...
「うん、じゃ続きはドーナツ屋さんで...」
3人は帰りじたくをしてドーナツ屋さんに向かった。




