⑴ ゲーセンボタンの鍵盤完成!
水曜の放課後、フミカは数日ぶりに電子工作部に向かっていた。1週間ぶりなのになんだか、久々の感じがする。彼女はすっかりシンセの魅力に取り憑かれてしまったようで、週明け、ピアノ部に顔を出し、仲間にシンセの面白さやアキバ体験を語ったのだが、彼女が熱心に説明すればするほど、みんなは引いてしまった。
「シンセ、分かれば面白いのになあ...」
フミカが、なんとかシンセのイメージアップができないかと、アイディアを練りながら部室に到着すると、リサとオミの前には完成した2オクターブの鍵盤が置かれていた。
最初はボタン5つだった鍵盤も、黒鍵を含めて2オクターブ分も並ぶと中々壮観な風景だ。なんったってゲーセンボタンが25個も並んでいるのだから、これはそうそう見られる絵面ではなかろう。
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「うゎ~、なんか巨大〜! 最初から考えると凄い進化だよね! みんなに見せたらビックリすると思うんだけどねえ...ピアノ部でもシンセの話ししたら変な顔されちゃったし...中々みんなに分かってもらえないなあ...」
フミカのボヤきにもリサは相変わらず、どこ吹く風、
「ま、そういうのは音が出てライブでもやれば、ぜ〜んぶ解消しちゃうって! 世の中なんてそんなもん! ネットの芸能ニュースの炎上とか見てるとそんなのばっかりじゃない?!」
「ま、確かにね。」
そう言いながらフミカは鍵盤を試してみた。
♪ド〜
♪レ〜
♪ミ〜
♪ファ〜
♪ソ〜
♪ラ〜
♪シ〜
♪ド〜
「ウン、音階も OK!とすると...」
フミカはこのあいだ弾けなかったキラキラ星と運命を弾いてみた
♪ド〜、♪ド〜、ド〜、ソ〜、ソ〜、ラ〜、ラ〜、ソ〜〜〜
♪ソソソbミ〜〜〜
<⭕♫YouTube によるサウンド♫⭕:ベートーヴェンの運命とか弾いてみた>
https://youtu.be/7MSK2ak11eo
今度は問題なさそうだ。
「オ〜、当たり前だけど、ちゃんと弾けるし〜!」
フミカが鍵盤で色々な曲の断片を弾いていると、部員たちが集まって来た。
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「ワォ! 良い感じに巨大化したじゃん、ボタン萌え拡散希望だね!」
「このメカメカしさが良いね、これさあ、ボタンからの信号受けて LED がピカピカ光るユニットとか作ったげようか?」
「あ、それなら外部からの信号で火が出るユニットを考えてるから、それ付けようよ。」
“ギクっ、なんかキワモノ系に行きそうな予感”
(作者注:これは本当にやってる人がいます)
「音楽と火だったら面白そう〜なんだけどさ... フミカは電子工作部と一緒にシンセ作ってるってだけで変人認定されたらしいからねえ。」
「え? フミカさんにまで認定幅ひろがったの? そりゃ申し訳ないことだ。」
「カタギの生徒さんに迷惑かけちゃいけないやね。」
どうやら、みんな自分たちの立ち位置を理解しているらしく、口々に世間からの冷たい視線の不満を述べ始めた。
「電子工作女子は国家の大事な資産なのに変人イメージが先行して、いかんよね!」
「電子工作より逆上がりを重視する教育方針も良くないし!」
「そうそう、お風呂だって、ちゃんと三日に一度は入ってるのに!」
「フムフム、そうか、私たちの作った物が社会貢献するためには...しかし、それは量子力学的観点からは...ウンウン」
後半の発言は女子力的に多少問題もある気がするけど、フミカはなんとなく電子工作部にシンパシーを覚えるようになっていた。




