⑷ メイドさんとこ
「こっちこっち!」
部品屋ダンジョンを出た3人は、リサを先頭に昭和通りを上野方向に歩く。
ビラを配るメイドさん、怪しいビデオ屋さん、そうかと思うとごく普通の喫茶チェーン店があったり...
歩いている人もサラリーマン風から家族連れ、噂通りのアニメTシャルのお兄さん、果ては爆買い第三世界人と、人種の分布はかなり変。
しばらく歩き、ガシャポンの並ぶビルの前で立ち止まったリサは、
「ここ、ここ!」
とガシャポンの隙間を奥へ抜け、エレベーター前で、
「この上ね。」
と指差した。表示には、
『⚪️⚪️ メイドカフェ ⚪️⚪️』
の文字。
「え〜! ここって未成年は入っちゃだめでしょ! シスターのお説教部屋行き!」
慌てるフミカに、リサは笑いながら、
「大丈夫だって。ネット情報だとメイドの店員さんはいても、ごく普通の喫茶店みたい。」
「でもでも、女の子が入っちゃっていいの?」
「そりゃ危ないお店もあるだろうけど普通は女の子だけでも大丈夫だって! もし危なそうだったら、みんなで『せ~の』で逃げ出すって事で!」
リサが笑いながらエレベーターに乗ってしまい、オミもそれに続いてしまったのでフミカも意を決してあとに続いた。
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エレベーターを降り、お店に入るとメイドさんが『おかえりなさいませ』と挨拶してくれる。
フミカは
「お~、なんか噂に聞いてた…」
とコッソリ言うと、リサはウィンクでそれに答えた。窓側席に案内された3人。店内は明るく BGM も静かで机も広く、普通の喫茶店よりも健康的な気もする。
「これならお説教部屋行きにならないね。」
フミカも安心したようだ。
「だから言ってるじゃん! 大丈夫!」
リサも笑いながら念を押した。これまでフミカがピアノ用品や譜面を買いに行っていた、銀座のヤマハや青山のカワイとは全然違った異質感! だけど、それに馴染んで、心地よくも思える自分を見つけてフミカは不思議な気分になっていた。
メイドさんに飲み物を注文し終わると、3人は早速、今日の話をはじめた。
「ああ、面白かった!確かに "Always" の世界だった~! 映画じゃ CG だろうけど、今日のは本物だもんね。やっぱり実物は迫力が違うよねえ。なんていうか重みが違うって言うかさ! 空気のカビ臭さとか音の響き方とかも、古い建築物ならではだよね!」
「そそそ、古いよねえ~。パパの時代から変わってないっていうから40〜50年は変わってないんじゃない? 耐震問題とか色々あるだろけどさ、ああいう場所こそ文化財として保護してもらいたいもんだよね。昔は、さっき行ったみたいなダンジョンっぽい部品屋アーケードがもっとアチコチにあったらしいし。」
「それにしても店員さんがおっしゃっていたように、アナログシンセは昔、随分と人気だったようですね。」
「そ! 萌えの街、秋葉原の知られざる過去だよね。」
「あの店員さんって私達の親と同世代なんじゃない? 実は私達の親も昔シンセマニアだったりして...」
「そそそ、私も思った。こないだパパの学生時代の写真見たら長髪でギター持って首にジャラジャラアクセサリーぶら下げててさ! いわゆる『ヘビメタ?』バンドやってたみたいだからシンセも使ってたんじゃないかと思うんだよね。」
「リサちゃんのお父さんってば、シスターのお説教部屋直行スタイルだね。」
「私のお父様も音楽が好きだったようですわ。リサさんがシンセを作っているという話しをした時、目が輝いていましたから、まんざらでもないのではないかと思うんです。」
「だいたい、若い頃って音楽に夢中だろうから、親の世代はアナログシンセ知ってる可能性高そうだよね。うちも今度は聞いてみるよ。実は身近な所に貴重な情報源があったりしてさ...」
というフミカの意見に、
「ウンウン」
とリサもオミもうなずくのだった。
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しばらく雑談をした後、リサが、
「さて、じゃあ今日はこの辺で帰って、来週の月火で2オクターブ分の鍵盤作るから、水曜に部室に集合って事にしよう。」
と提案し、フミカのアキバ初体験&全員のメイド喫茶初体験の貴重な一日は終了したのだった。




