⑵ パーツ屋のダンジョンへ!(総武線の線路下)
3人が駅ビルアトレの角を曲がると突然視界が変わった。
「オオ! これが噂のダンジョン入口? なんかいきなり Always?!
フミカは感動した。
「そそ、いきなり別世界なのだ! ちょっと前までは駅ビルもこんなでさ。秋葉原デパートっつって、一階の食堂街なんか外資系OLは一生来なそうな雰囲気で〜。間違ってもレストラン街なんて呼んでもらえない枯れ具合が良かったのになあ。今はオシャレになってイカンよねアキバ的には!」
「へ〜! リサちゃんってばアキバ歴長そう!」
「ウン、うちは電気屋だし小さい頃から親に連れられてね。最初ここに来たのは20世紀だった頃みたい。」
「ホウホウ」
フミカは頷きながらダンジョン入口のお店を眺め、
「なんかコードとかグルグル巻きで売ってるし、なんかメーターが動いてるし。オオオ?! ここ堂々と盗聴器とか書いてあるけど大丈夫なのコレ? お客さんって某国スパイとか?」
と少々興奮気味だ。
「まだまだこれからですわ。この辺りは完成品のお店ですが、奥へ行くと部品をバラ売りしてるんです。」
「ささ、本格的に部品屋さんダンジョンへ参りますぞ!」
リサは、そう言いながらアーケードを奥へ進んで行く。
アーケードの上には総武線が通っているらしい。 天井は配管がむき出し、床は排水路の上に強引に床を作ったような感じで、その通路の左右にコマ割りされた小さなお店が延々と並んでいる。
暗いにもかかわらずひとつひとつの店舗の上には明るい照明のついた看板があり、暗闇に浮かび上がる景観は一種独特の雰囲気を醸し出している。その光景は、まさにダンジョン!
「ウ~、梅雨なのに涼しい! カビ臭くてダンジョンっぽい! 小さいお店が一杯並んでるよ! これどうやって中に入るの? 裏から?下から?上から梯子で降りるとか? あ、ランプがピカピカ綺麗~! あ、テレビに私が映った! オ~イ!」
見るもの全てが新鮮なフミカは、カメラに手を振ったり、お店の奥を覗きこんだり...
「あ、奥の方に店員さんいたいた! ほんとダンジョンだよね! こないだ出たバードラ RPG 版の吟遊詩人の館ってこんな絵柄だったよね〜!」
と、はしゃいでいる。オミが、
「バーズ&ドラゴンズのダンジョンはこういった場所を参考にしているそうですよね。」
と答えるとフミカは、
「そうか~、オミちゃんもバードラ知ってるんだ〜?! うんうんうん、光るランプもマジック Orb っぽいし! 吟遊詩人サリミオン様の詩でドラゴン召喚したりして! まさにファンタジーって感じ〜〜〜? バードラ好き好き~! 華南先生ラブ~!!」
と、ゲーム作者らしき名前をあげながら、上を向いてミサのお祈りのように両手を合わせ、あらぬ方向にイッてしまった。そんなフミカにストップをかけたのはリサだった。
「もちつけ! フミカ!」
「もちつけ? あ、落ち着けって事か! アハハハ ↓ハ ↓ハ ↓ハ…… ハア?↑」
フミカは笑いながら周囲を見回し、急速に冷静になっていった。
フト我に帰ると、そこは空調の効いてカビ臭く、男ばかりのアーケード、そこに場違いな女子高生が三人、しかも一人は狭い通路を遮りそうなモフモフなロリータファッション、そして異常にハイなワタシ...
フミカは突然恥ずかしくなり、
「ア・あのあの~、すいませんうるさくしちゃって...」
と最後の方は消え入りそうに小さな声で下を向いてしまった。いつもは暴走気味なリサが、
「さてさてフミカも落ち着いたみたいだし、早速部品購入に進もうと思いま〜す! いいかな~?」
と、下を向いたフミカを覗き込むように言った。フミカも気を取り直し、恥ずかしそうに微笑みながら、
「いいとも~!」
と、あくまで小声で言うのだった。




