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それ行けシンセ女子!  作者: MikBug
Day1:6月25日/つながった
1/82

⑴ ピアノ部女子を拉致ル

注:本文中の YouTube リンクは、ストーリーを読むために必須ではありませんが、絵や音で内容がより詳しく分かります。

挿絵(By みてみん)





挿絵(By みてみん)


【→ 電 子 工 作 部 ←】


 と貼り紙のあるドア。その部屋で内巻きショートヘアの女の子が、半田はんだごてを片手に最後の仕上げをしていた。



挿絵(By みてみん)



 溶けた半田から流れるペーストの独特な匂いが立ち込める室内。


 机の上には所狭しと機械類が並び、棚には電子部品の入った引出しや、小さなテレビのようなオシロスコープが置かれている。



挿絵(By みてみん)



「できた!」

 女の子は細かい部品がハンダ付けされた基板きばんを眺めながら満足そうに言った。


「これで...  」

 彼女は、その基板から出たケーブルをオシロスコープにつなぐ、するとその画面には波のような形が現れ、ユラユラと揺れ始めた。見ようによっては、ちょっと幻想的かもしれない。



挿絵(By みてみん)

<⭕オシロスコープってこんなもの⭕>



「よし!完璧!」

 彼女はそう叫ぶと立ち上がり、


「さ~て、そ・れ・で・は!」


 と言ったかと思うと教室から小走りに駈け出した。


 女の子は校舎の長い廊下を抜けると建物の3階へと駆け上がり、



挿絵(By みてみん)


[♪ ピ ア ノ 部 ♪]


 と書かれた教室の前で立ち止まった。




ーーーーーーーーーーーーーーー


 部屋からは誰が弾いているのかピアノを練習する音が聞こえて来る。


 ドアが開き何人かの生徒が中から出て来た。


「う~んと~」


 口元に手を添えながら、それを物色するような眼差しの少女、彼女はその中から少し背の高いストレートロングヘアのメガネっ娘の腕をとって声をかけた。


「ねえねえ、あなた!」

「え? 私?」


 声をかけられた生徒は、一瞬とまどったように振り返った。



挿絵(By みてみん)



「そそ、あなたあなた!」

 明るく答える少女。


「...何かしら......?」

 怪訝けげんそうな表情の生徒は小柄な少女を、ちょっと猫背気味に見下ろした。


「ウン、実はさ、楽器を作ったんだけど、あなた弾いてくれる? あ、私はリサ! あなたは?」

 いきなりの言葉にメガネの女の子は戸惑いながら、


「私はフミカ、2年B組だけど...... 楽器を... 作る?」

「そっか! 私は2年D組! で、来て来て! 凄いんだよ!」


 リサという子は相手に拒否されるという考えが全くなさそうだ。フミカが、「え~と楽器を作ったって? たて笛とか?」と聞く隙も与えずに腕を引っ張って歩き出した。どうやらとてもセッカチな性格らしい。


「ちょっとちょっと、 え~と、リサさん、私には何がなんだか... あの、えと... 楽器って作れるもの? えと... それで弾くって楽器を?」


 フミカが引っぱられながら口ごもっている間に、二人は電子工作部の前に着いてしまった。



ーーーーーーーーーーーーーーー


「ここ! さあ入って入って!」

 リサはフミカの背中を押しながら雑然と機械の並ぶ部室に入り、さっき基板を作っていた机の前まで来た。


 すると音を聞きつけた部員たちが、二人を囲むようにワラワラと集まって来て、次々と勝手にしゃべり始めた。


「なになに、例のやつ完成したわけ? やったじゃん!」

「この基板がそれね。意外と小さくまとまってるんだ。」

「使ったのは ICアイシー? それともトランジスタ中心?」

「フムフム、出力はサインなんだな。ウン、これだと温度に対する安定度は、いやしかし... まてまて、この場合......」


“あの〜、一人で語り入っちゃってる人もいるんですけど〜...”


 フミカが困惑こんわく気味ぎみに周囲を眺めていると、話しの矛先ほこさきがこちらに向かって来た。


「んで、この人ダレ?」


 部員の一人が聞くとリサが元気に答えた。


「この人はフミカちゃん『from ピアノ部~〜!』 なんとなんとなんと! このシンセサイザーを演奏してくれるのだ! 今までは『ピーヒョロピーヒョロ、変な音が出るだけで資源の無駄遣い』とか『空気装置』とかバカにされてたけど今度は違うよ! なんてったってピアニストが参加してくれたから音楽も作れちゃうんですぞ!」


”え? なんかそういう話しなんですか?”


 と思うフミカの意思は全く無視されて話しは勝手に進行する...


「そりゃ凄いじゃん! 芸能人?! ヤバ! 今のうちにサインしてもらわにゃ!」

 と勝手に握手を求めて来る人、


「芸術家の知り合いなんて初めて〜! 有名になったらテレビで友達って言ってゲストに出してね!」

 と妄想をふくらます人、


「フムフム、その場合、演奏者への印税いんぜいは1%、曲も書いていれば6%の儲け。いやしかしレコード会社と契約しているとその66%を取り合ったとして... そう考えるとやはり起業して自社扱いの14%を取った方が有利... イヤイヤイヤ、だがその場合リスクを考えて...」

 と再び語り入っちゃう人...


 フミカは心の中で絶叫した、


“すいませ~ん! 申し訳ないんですけどワタクシ、話しが全然、まるっきり、これっぽっちも見えないんですけど~! どなたか私の話も聞いてくださ~い!”


 その心の声が届いたのか、リサが目の前にある部品付きの板=基板を指さして言った。


「どう? これ面白そうでしょ〜?!」

「面白いって何が?」

「これ! この楽器!」

「え...? さっき言ってた? 楽器... どこに?」

 とまどうフミカに、


「これだよ! この板が基板きばん! これが楽器なの!」

 と嬉しそうに基板を指さす。


「え? どうしてこれが楽器? これ機械? パソコンの中身とか???」

 困惑こんわくするフミカにリサは少しほおふくらませ、


「違うの、これが楽器! シンセサイザーって言うのだ!」

 と言った。


「シンセサイザー? 名前は聞いた事ある。あの... 原発嫌いなお爺さん達が弾いてるのだよね? タモリ倶楽部でやってた大きな機械に鍵盤が付いてたの... これが?」



挿絵(By みてみん)

<⭕YouTube による解説⭕:シンセあれこれ>

https://www.youtube.com/tU5o-ngmMsI



「そそ、これが シンセサイザー! 略してシンセ! しかも私が作ったのだ! さ、弾いてみてみて!」


 リサはフミカの困惑を無視して、けしかける。

「えーと、それでこれどうやって弾くの?」


 フミカが聞くと、リサは小首を傾げてキッパリ答えた。

「わかんない! どうやって弾くのかな? ま、だからさ! それも含めてよろしくって事で!」


 フミカは、あまりにいさぎよい返答にどういう態度をとったら良いのわからず、再び心の叫びを発してしまった。


“ヤッホー、ワッタシ〜のキモチ〜、ワッカリマ〜スカ〜?”


 しかしそうも言っていられない。フミカは平常心を保とうと必死になって聞いた。

「でもさでもさ、楽器って、鍵盤があったり、息を吹き込む所があって音が出るんじゃないの?」


 恐らくそれは、とっても当たり前な質問だ。しかしリサにそういった一般的質問は通用しないらしい。

「そそそ! だけど音は出るんですぞ! 聞いてみてみて!」


 そう言いうとリサは基板から伸びているケーブルを、棚の上のステレオアンプにつないだ。

フミカです、1話読んでくれてありがとうございます。今、ピアノライブの準備中です!良ければ私の動画、見てね!


https://www.nicovideo.jp/watch/sm34276371

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