後ろから全力で見守ります!④
教室に戻ると別の緊張感が立ち込めていました。廊下にまで人だまりができています。優木くんは背が高いため余裕でしょうが私は平均よりも低いのでなんとか隙間をぬって様子を伺います。
「さっそくか。二人でお弁当タイムみたいだね」
……お弁当タイム。言い方は可愛らしいですが机をくっつけて座る二人の空気は殺伐としています。原因は主に篠宮くんですけど。一ノ瀬さんは背を向けているため顔は見えませんが篠宮くんからは不機嫌オーラがバンバンに伝わってきます。
クラスメイトたちも篠宮くんの眼力に怯えてますが教室を出ようとはしません。
前までなら別の場所で昼食をとるところですが変化はここにも現れているようです。
あ、お弁当を広げ始めました。観念してここで食べるようです。んんー?篠宮くんは手作り弁当派のようです。てっきりコンビニの弁当とかパンだと思っていました。
「そう介くんが作ったの?とっても美味しそう」
あれれ?篠宮くんからそう介くんに呼び方が変わっています。いつの間に親密度がランクアップしています。
良いですよね。高校生でも下の名前に君づけ。可愛らしいです。
でもお弁当は篠宮くんの手作りだったんですね。……あれ?と思ったら篠宮くん必死に否定しています。
母さんが作ったって……篠宮くーんそれ墓穴掘ってますよー。どっちに転んでも篠宮くんのプラスにしかなりませんからねー。
篠宮くんが作ってたら最近人気の料理男子。お母さんだったらほのぼのしてしまう家族大好きっ子。
そのどちらも不良にかけたらギャップ萌えが発生します。
世のお嬢さんたちはいちころですよ。いちころ……って!!ど、どうしましょう!?篠宮くんがお母さん属性を発揮してきました!大量のお菓子を机の上に出した一ノ瀬さんに向かって主食とか野菜とか言ってます。
ああ、ご自分のお弁当渡しちゃいました。どんだけ面倒見いいんですか!
一ノ瀬さんの反応はというと……見えません!後ろ姿しか見えないです!!絶対貴重な顔が見えると思うんですけど、あれですか?特別な顔は友達にしか見せない特権ですっていうあれですか!?
……でも、篠宮くんの表情はばっちり見えるんです。廊下側を向いてるから。
私ね気づいてたんです。昨日、中庭で。
風がね、吹いたんです。ごおって。すごい勢いで。女の子は必死にスカート押さえて目も開けてられなくて。
でも、私はその日一日、何があるか分からないからって動けるようにスカートの下に短パンはいてたんです。あれです。見せるつもりはないですけど見せパンってやつです。それに私目があまり良くないので普段から眼鏡を装着しています。むしろ眼鏡は体の一部です。だからでしょうか大体の人が俯いたり目をつむっている中ばっちり見てしまったんです。
長い金髪の下の顔に。その瞳が天上の色を写し取ったような青色であることに。
そこから導き出されるもう一つの結論が風に舞うその御髪も地毛であるということも。
染めたのではなければキラキラと綺麗だと思えたのも納得です。
ーー篠宮くん。それ反則です。
肘をついて右手で頬を支えると前髪がさらりと流れて整った輪郭が露になります。
ご自分のお弁当を食べる一ノ瀬さんを見てあの篠宮くんが満面のとは言わないけれど、口元にえ、えみ、笑みを浮かべて!
「「キャーー!!」」
そこかしこで黄色い悲鳴が上がります。これぞギャップ萌え!
普段笑わないからこその破壊力。篠宮くん、恐ろしい子!
そう。不精私気づいてしまいました。
篠宮くんの日本人離れした容姿に。前髪の下にあるのがどこの王子さまですか!と問い質したくなる綺麗な顔立ちに。
素で金髪碧眼ですよ?不良としての噂が横行して篠宮くんをじっくり観察する余裕のなかった女子たちは肉食獣に怯える子うさぎから狙いを定めた女豹へと変貌を遂げます。
それに篠宮くんは言い逃れの出来ないやり取りをあちこちで披露しています。
下駄箱で中庭で教室で。評価が変わっていることに気づいているでしょうか?
篠宮くんはきっと誰とも関わらず学校生活を送りたかったのだと思います。口を開けばどんなに乱暴な振る舞いをしたって滲み出るいい子さを隠しても。
けれど一ノ瀬さんと出会って篠宮くんは否応なしに変化を受け入れることとなるでしょう。
出会いはいつだって物語の始まりです。彼らにはこれからたくさんの出来事に直面するでしょう。
「さて僕も混ざってこようかな」
一緒に傍観していた優木くんが教室に入っていきます。
篠宮くんも優木くんに気づいて嫌そうに顔を歪めます。仲良くなるにはなかなか前途多難なようですね。
私も側で支えて行きたいと思います。願わくは彼らの友人の一人として。 一ノ瀬さんとの友情を望むものとして。これからは篠宮くんとの友情も。
とりあえずは優木くんに任せて彼の後ろを全力で守りたいと思います。
これはだいぶ前に書いたものですがせっかくなのでこの場に投稿させていただきました。
いつ続きを書くかは未定なので、ここで一旦完結にしたいと思います。
もし、続きが気になるという方がいましたら申し訳ないです。
気が向いたらひょっこり再開するかもしれません。
ここまでお付き合いくださりありがとうございました。




