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序章

序章だから特に派手なことは起こりません。

SFができるよう頑張ります。

ーー僕らは兵器だ。


砂浜に寝転がり、太陽の眩い輝きに手を伸ばす。

漣の音以外は聴こえない、静かな空間だ。

ギアは、この場所が大好きだった。


「……」

手を開いたり、握ったりしてみる。

誰が見ても、本物の皮膚にしか見えない。


「……」

その手で今度は砂を握る。熱い。

この手もこの体も、全て人為的に改造されたモノだが、もともとはただの人間だったから五感があって当然か。


ーー人間。

それは、ギアを含めた、ここにいる全ての者が棄てた……否、棄てさせられた尊厳だ。


『軍神開発計画』

名も知られていない国が、この世界の支配者となるべく立案された悪魔の計画。


それは、十代半ばの子供の肉体を、兵器として改造するのだ。

様々な状況に対応でき、かつ死ににくい身体を持ち、極めつけには肉体を改造されてあるため、並みの軍人をも遥かに凌ぐ力を持つ、まさに戦場の神。その計画の犠牲者がギア達だ。


「何してんの?」

ずい、とギアの顔を1人の少女が覗き込んできた。

肩に掛かる程度の長さの茶髪に、くりっとした瞳。陶器のように白い肌は誰もが羨むほどキメが細かい。

幼さを残した顔立ちながらも、意志の強さを感じさせる。誰もが認める美少女だ。


「休憩」

が、ギアは顔色1つ変えずに、涼しい顔で今日の快晴を眺める。

ふーんと、少女ーーアリスは顔を引っ込めて、


「隣、いい?」

と少し遠慮がちに尋ねる。


「いいよ」

ギアは起き上がり、大きく伸びをする。

そして今度は座った。


「ありがと」

すとんと、アリスの周りに軽い砂埃が舞った。


「……」


「……」

何か話そうともせず、2人は無言で肩を並べる。

波の音以外は鳴らず、『穏やかな夏の午後』を絵に描いたような光景だった。


「その格好」


「え?」

ギアはアリスの服を指差す。

ギアから話題を振るのは珍しい。

アリスの服装は、白を基調とするセーラー服だった。

特徴的なのは、右胸に黒く塗り潰した花ーーファレノプシスだーーの記章が縫い付けられている点だ。

学生服というより、アニメのコスプレに近い格好のソレは、ここでは『戦闘服』という。


対するギアは、ポリエステル製の半袖のシャツと半ズボンという飾りっ気のない格好をしている。

肩まで伸びた黒い髪。吊り目気味の大きな漆黒の瞳。アリスほどではないにせよ、肌も白く、身長も小さいギアは、少女のような外見をしている。

このような粗末な格好をさせておくのは勿体無い。


「ああ、そうそう」

何かを思い出したのか、少し大きな声を出した。


「生徒会長がギアを呼べって。作戦会議ミーティングだって」

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