「赤ちゃんができたよっ!」
「ゆうちゃん、あたしたちの赤ちゃんができたよっ!」
「やったね愛ちゃん!ついにこの日が…!」
妊娠検査キットで受精後2ヶ月の判定を得た愛子の体を俺は思わず抱え込む。
新しい生命の息吹きを宿したその体は溢れる豊かさに包まれていた。
「責任…とってねっ?」
「いや、もう結婚してるでしょ俺たち…」
妊娠が分かるとこの時代のカップルは出来るだけ早くある決断を迫られる。
「ところで愛ちゃんさあ…前から話してたように、この子が男の子だったら早期義体化させて、女の子だったら生身のままってことでいいかな?」
「まだ男の子か女の子かは分からないのよねっ?」
「うん、性別がはっきり確認できるのはもうちょっとだね。まいにち病院に通って、出来るだけ早く性別を知らなきゃね…」
これだけ性別の確認を急がなきゃいけないのにはわけがある。
義体化するなら早ければ早いほど脳の義体への適応力(シンクロ率)が高まるのだ。
適応力が高いことはそれだけ義体使いのプロフェッショナルになれることを意味する。
この時代の親たちは競って男の子に早期義体化と早期教育を施しているのだった。
出来るだけ早めがいいということで、なかには、妊娠が分かると男女の区別がつく前に、すぐさま受精卵を取り出して、脳となる未成熟の部分を義体適応しやすい環境で培養してしまう。
実のところ、女の子を義体化してしまっても、彼女のDNAから急速培養でクローン身体を作り直して、生身に移植し直すこともできるし、また卵子を有しておらずとも、脳細胞を初期化して卵子を作り直すこともできるので、色々な面で取り返しがつくのは安心だ。
愛子は毎日病院に通って、一週間でその確証を得た。
「お腹の子、女の子だったのよっ?」
俺は内心でホッとしていた。
子供の幸せを考えれば、早期義体化はたしかに必要な処置であり、その技術の母体への安全性自体には疑いはないのだが、俺は愛子の暖かい体を冷たい機材の上に預ける想像には言い知れぬ抵抗を感じていたのだった。
「そろそろ産まれますよ!」
助産師さんの言葉に固唾を飲んだ。
帝王切開が一般的だが、俺たちは最近流行の自然分娩をあえて選んだのだった。
産まれてきた赤ちゃんのくしゃくしゃな顔を見て、俺はこの場に立ち会い、この顔を見ることができて本当に良かったと思った。
「おぎゃっ?おぎゃーっ?」
「ほら、目元なんてゆうちゃんにそっくりねっ?」
「え、そうかな?それよりなんか面白い産声で泣く子だよね…ははは」




