「家族になろうよ!」
「その情報局の人?があたしに変装してたってことは全身義体なのかしらっ?勝手に人のうちに入られるわ、ゆうちゃんがバイト辞めて離ればなれになっちゃうわで、もう最近大変だったわよっ?」
ここ二週間ほど情報局のことで手一杯だったので、愛子とのデートは久し振りだった。
街をブラブラして喫茶店でゆっくりと近況を話し合った。
「まあ面白い体験できたよって女友達にも自慢してるんだけどねっ?」
「いや、そのことについてはあまり他の人には話さないでね…」
「あと、情報局ではお給料もたくさんもらえるんでしょ?ゆうちゃんの能力が認められてあたしも嬉しいわよっ」
「うん、そのことなんだけどね…」
職務遂行のために必要になる場合があると言われたので、俺はこの二週間で完全義体の体に切り替えていた。
それまでは二年前に逮捕されたときに、弁護士に勧められて義顔に取り替えていただけだったのだ。
少なくとも心配される恐れはあったので、このことを今言うべきか戸惑っていた。
「実は俺も完全義体になったんだよ。仕事のために必要らしいからね…」
「あら…もしかして費用は自腹とか…?」
「いや、全額当局もちだよ…」
「えっ!?すっごく良心的な職場ねっ?」
「ははは…」
・・・天然か!
でも俺が欲していたのは心配よりも、この純粋な能天気さだったのだとそのとき確信したんだ。
「仕事は大変そうだけど、自分のスキルを活かせるし好きな仕事ではあるんだ。給料も良いから生活も安定するだろうし…でも同じ職場で仲良くなれたから、こうして愛ちゃんと離ればなれになっちゃって、その意味では味気なくなったし、色々と心配でもあるし…だから同じ家に住もう、結婚して家族になろうよ!」
「あたしのこと一生大事にしてねっ?」
こうして俺たちは約一年半の同棲生活を経て、2089年の春、晴れて結ばれることになった。
終焉へと向けて物語が動き出す2090年からおよそ1年前の出来事だ。




