「元の顔に戻す?」
ある日、愛子がマスクをして、俺の部屋にやって来た。
「あれ、風邪でも引いたの?」
「いいえ平気よっ?」
鼻声のせいかいつもとちょっと声が違う気がした。
部屋に入っても、いつものようにベッドの真ん中には座らず、立ち尽くして辺りをキョロキョロしている。
「本当に大丈夫?熱でもあるんじゃない?」
「熱はないわよっ」
不信に思いながらも自分の隣に招き寄せた。
マスクをしたままだったが、それからは何てことはない、いつもの愛子節を炸裂させたので安心した。
「口回り鬱陶しかったらマスク取っても良いよ?」
「んーん、気にしないでっ」
健全な俺は日が暮れる前に今度は愛子を自宅に送り返す。
その日初めて彼女のマンションの中に入れてもらえることになった。
「外観は古びてるけど、中はなかなか広くて良いもんだね。」
「そうでしょ?」
ふと振り向くと、マスクを取った口裂け愛子がそこに立っていた。
「!?」
彼女はツッコミを待っているのだろうか…?
ツッコンであげるべきだろうか、それともここで甘やかしちゃいけないのか…?
俺の部屋にいた半日もの間ずっとこのときを心待ちにしていたのか…?
普通の女の子がこんなまがまがしい特殊メイクを施して喜んでいるのだろうか…?
そもそも目的はいったい何なんだ…?
考え過ぎてツッコミどころでなく真顔で聞いていたと思う。
「な、何してるの?」
「元の顔に戻す?」
「うん、お願い…」
それを聞くと彼女は奥の洗面所へ向かっていった、ようだった……
「ピンポーン」
玄関のベルが鳴る。
「ん、誰だ?」
インターホンで玄関の様子を確認すると、そこに映っていたのはまさしく愛子だった!
「ふぁっ!?」
急いで奥の洗面所を見回る。
ところが誰もいない!
完全なる密室トリックが成立しているッ!
インターホンに映る愛子はニタニタと笑って、外からは見えないはずのこちらの様子をその目に見ているかのようであった…
ヒューマンホラー…?




