「町を出たら魔王に会いました、逃げるのはだめですか?」
嘘だろ。
誰でもいい。だから、嘘だといってくれ。
町を出て、次の町へ向かう途中の道。
目の前の道にいるのは、黒いマントを着た、大きな男。どっからどうみても魔王だ。
とっさに道のすみっこに身を隠したが、依然として今の状況は変わらない。
「おい、そこで何してる」
ま、魔王が声をかけてきた!
「あ、あんたこそ、こ、ここで何してんだよ。あ、あんた、魔王だろ?」
まずい。声が震えた。怖がってんのバレバレじゃねぇか。
「おー、よく判ったな」
感心されても困る。
いかにも魔王って雰囲気出してんのに、気付かない方が変だろ。
「まま、魔王のあんたが、どうしてこんな道の真ん中にいるんだよ」
あー、俺のバカ。気になったからって、話ふってどうすんだよ。
「あー? 城にいても退屈でな、散歩してるとこだ」
「は? フツー、魔王は城で待ってるもんじゃねぇのかよ」
「そんな常識、知ったことか。勇者が来るまで待ってるったって、こっちは暇なんだよ」
「いやいや、暇だからって子供の夢壊すような行動すんなよ」
魔王を倒すために、仲間集めて旅する勇者のゲームをしてる子供にとっては、いい迷惑な奴だ。
「じゃあ、何してればいいんだよ。剣でも振ってろってか?」
「あー、それは困りマス」
強くなられたら、倒せねぇじゃん。
「あっ、お前、勇者か? そうだな?」
「い、いや? オレはただの通りがかりですけど?」
「嘘だな」
即答された。
「その服装からして、勇者だろ」
確定。
っつか、変なところで鋭いな。
「城にくるか?」
「は?」
「だから、城にくるか?」
いや、言葉の意味くらい判ってるって。
「なんで」
「暇だから」
「誰が行くかよっ。だいたい、オレはお前を倒すために旅してんだ」
「頑張るなぁ」
「あんたが変なだけだ」
「俺は普通だが?」
「いや、絶対に変だ」
「そっか。じゃ、城にはこないんだな?」
「行くわけねぇだろ」
「判った。気をつけろよ」
ヒラヒラと手を振り、去っていく魔王。なんだか、ゆるい奴だったな。
てか、心配されたぞ? 普通、魔王があんなこと言うか? 何もしないで去ってくもんなのか?
いろいろ考えても判らず、ただ魔王と会話した疲労感だけが残った。
fin.
H24 4/6
…ひとやすみ…
お題がタイトルみたいになってしまいましたw
勢いで書きました。はい。友達感覚で話してくる魔王。いろんな意味で疲れそうです(笑)