スタート
イランとアラブ首長国連邦との戦争は泥沼化し、陣営に別れた代理戦争となった。
思えばここからゲームが始まったのかもしれない。終わらないWar Gameが。そんなものは後になって自分たちを納得させるためだけの帳尻合わせにしかならないだろうが。
宿舎へ向かう。人がいないのに無駄におおきい。白い。学校を思い出す。今思えばあまり皆の話にもグループにも入れなかった。
いつも輪の外にいた。僕は全く気にしなかったのだが、親を含めた大人は僕を心配した。
何故かああいうとき大人たちは僕みたいな人をどこかの輪に入れようとする。輪に入ったところで何か起こるわけでもあるまいに。あるとしたら無駄な闘争か?
闘争を起こしたら起こしたで疲れるだけだろうに。
僕は他の子供達に比べたら冷めていたのかもしれない。だからたまに自分の感情を大胆にして出した。例えば、人が笑っている時に笑う。うんうん、としきりに同調するなどだ。
何故かそうすると外野は 良かった、君にも感情があるんだね、と安心するのだ。定期的にそうしないと先生と話させられたりカウンセリングさせられたりするのだ。ああいう時にほっといてくれ、なんていうとますます面倒臭い事をやらされる。そうでもしないと僕が自殺か何かをした時に責任の押し付け合いの時に不利になるわけだ。
僕にとっては全く意味の無いことで、非生産的だけど外野にとっては何かとても重要なことだったみたいで。
それに比べたら空はそれが無いからいい。トリガを引く、操縦桿を倒す、ラダーべダルを蹴っ飛ばす。それが全てだ。それ以外に何もない。
テーブルの上で笑顔で握手し、下では足を蹴っ飛ばすなんてのはまっぴらゴメンだ。僕は空がいい。
戦闘機に乗れて、食べれて、寝床がある。それだけで十分だ。
明日死ぬかもしれない。これが最後かもしれない。
それがどうしたのだろう。僕よりも死にそうな人が沢山いるのに?安全な土地でのうのうといきている奴らに比べたら僕らの生き方が平等で、あえていうのならwonderfulでbeautifulだ。
そんなぼくらを外野の奴らは非難してくる。きっと戦争の責任は誰にあるか決めるときに発言力を持つためだろう。
そうしたら、
彼らは、
誰を殺すのだろう?
自分たちが一番、
嫌ってた人殺しを、
殺すのだ。
そんなことはどうでもいい。
僕はただ、
飛んで。
飛んで
さあ
闘おう
殺し合おう
鉛弾を交わし
ミサイルを放ち
加速する
減速する
上昇する
下降する
ただ、何もない
生も、死も
地面においてきてしまったのだ
きっと
重過ぎて
離陸できなかったのだ
きっと
滑走路の端に
投棄されて転がっているのだ
そんなものは地面にタイヤが接した瞬間
戻ってくるのだ
きっと
僕らは
きっと
永遠に
ずっと
平等に
きっと
ずっと
きっと