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War Game  ~風の章~  作者: フラップ
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14/23

爆撃

 

  サムは超低空でイスラエルに侵入する。ここのアラート・ハンガーは対爆ハンガーだ。目標は基地じゃない。市街地だ。


 ナパームで市民数百人を殺した悪魔…悪い気はしない。嫌いじゃない。その点で言えばサムは重度のサディストといえる。逃げ惑う市民、爆炎に包まれる町、バルカン砲で打ち抜かれ肉片と化す死体。それが好きなのだ。奪われたものを奪い返したようで。否、最初はそうだった。目的と手段が逆転しただけで。そしてマスメディアはこういうのだ。「無罪の一般市民を虐殺した人でなしと」と。愉快だ。たまらなく愉快だ。虐殺を逃れた祖母が中国に逃げたのが戦前。戦後犯され生まれた子が母を犯した奴の妻の子供を犯してできた子供が自分だ。生まれた後も村ではよそ者扱い、その村でさえアメリカ軍に焼き払われ、孤児として引き取られようというところで飛行機が墜落し、生き残り、民兵になり、傭兵になり、殺し、殺し、殺し…今に至る。だから憎たらしかった。すべてが憎たらしかった。話を聞いた奴は同情の目でこちらを見て大変だったな、というのだ。それでおしまい。同情は思いやりじゃない。何もしない代わりに記憶の一部にはさんで忘れて自分自身が納得するために同情するのだ。唯それだけ。自分は何もしないくせに。自分が納得して終わり。


 だから殺した。彼を責めれる人はいないだろう。そいつこそが自分が納得して終わる奴だ。だから彼は憎まれることを望んだ。憎むことを望んだ。潔白でいることよりも血を血で塗り重ねることを望んだ。殺す道を選んだ。残虐と虐殺と破壊と……。平穏を彼は知らない。愛を拒み、憎しみを受け入れ、死を弄ぶ。彼にとってそれが日常で、娯楽だった。早く自分を殺してくれることを望んだ。死ぬべきときはいくらでもあった。だが生きている。死ぬまで殺し続ける。殺されたのなら殺す。それしか彼は知らない。


 * * * *

 

 くそったれが!!!


 誰に向ける言葉かは知らない。とりあえず思った。基地は壊滅状態だ。滑走路と機体は残っている。アラート機を除いて。唯、誘導路だけ綺麗に爆破され、管制タワーは崩れ落ちた。宿舎も東半分は残っている。整備士と比較的階級の低いパイロットがいたところだ。夕食と昼食の間で人は多いだろう。突如現れた…というより旅客機から剥がれ落ちたそれは基地に向かって音速に近い速度で迫ってきた。スクランブルがかけられ誘導路に入った。ランニング・テイクオフだ。離陸滑走中に敵が見えた。滑走路から敵機が見えるとはイスラエルの軍事情勢を皮肉ったジョークだ。今は笑えない。幸い、相対した離陸滑走だったので生き延びた。もしも風が逆に吹いていたら僕は今ここにいない。隊長機は銃弾を受けて浮き上がった瞬間左回転して飛び散った。滑走路に残骸があったのもいけなかった。F-14はある程度簡単に片付いた。問題はF-15だった。中途半端な壊れ方をしていた。右の翼数メートル以外は意外と軽傷だったのだ。パイロットは計器版に頭をぶつけて死んだ。そこでF-15はブルドーザーで後ろから押して滑走路からのけた。増えた時間は3分もなかっただろう。その三分でこの様だ。まったく持って笑えない。


 レーダーはスーパーサーチモード。追っているのはふざけた雄猫野郎だ。超低空といって差し支えない高度で急旋回している。


 後ろに食いついた


 アームスイッチを機銃に切り替える


 すでにロックオンしてる。


 いきなり目の前のトムキャットがでかくなった。


 いや、減速したのか?


 咄嗟にエア・ブレーキを開きスロットル・ダウン


 どちらを先にしたら良かっただろうかなんて後悔が一瞬。


 トムキャットは減速し続ける。


 さすが艦載機なんて感心してられない。


 フラップを下げてダウンを打つ。


 数秒とたってない。


 逃げるか?粘るか?


 機体のマニュアルをトムキャットのも読んどくべきだった。


 糞!


 エア・ブレーキをしまいスロットルハイフラップを少し上げて


 機首上げ


 このまま行くか?それとも…


 操縦桿を倒す


 地平線がひっくり返る


「ぐう…」


 声なんかでない。体の軋みが口から出る。


 腹筋に力を入れっぱなしだ。震えてきた。


 何とか後ろをキープできた。


 戸惑いなく撃つ。コクピットから花火のように射出座席が飛び上がる


 バックミラーに半円状の白


 パラシュートだ!


 基地寮に突っ込んだ


 反対側から回転しながら胴体のみが飛び出してハンガーに突っ込んだ。


 直後、寮が爆発した。


 ガスか? 


 滑走路は離陸できたが着陸できない!


 燃料は?


 間に…あうか、どうだろう。

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