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 僕は結局、あれから学校へ復帰した。

 過去の例によって行く気を失っていた僕だったけれども、何日もすると自然に学校へ行くようになっていた。

 僕がやる気を取り戻したのはミヨとクレアたんによるところが大きい。

 二人が発破を掛けてくれなければこうはいかなかったと思う。

 お母さんも盛大に喜んでくれた。……心配、かけてたのかなぁ。


「さ、やるわよ、タイゾー」


 そして今日も一日なんとか学校生活を終え、自室に入るとクレアたんが仁王立ちして待っていた。

 そう、クレアたんは僕がゲームをプレイするのを待っていたのだ。

 僕が高校へ行っている間クレアたんは思いっきり暇である。

 なので最近はお母さんと家の手伝いをしたり、料理を作ったりと家に馴染んでいる。


「タイゾーだって頑張ってるでしょ。学校、行くようになったし。あたしも頑張らないと!」

「えー……いいじゃない、そんなに頑張らなくても」 

「そうはいかないわよ。あたしには魔王を倒さなくちゃいけないっていう、使命があるんだから」

「そんなのいいから、後回しにしようよ」

「あたしの最大の目的が後回しされたっ!?」


 クレアたんはとっても張り切っていたのだが僕は相反するようにやる気がなかった。

 このようにクレアたんが毎日僕を求める(変な意味ではない)ため、ゲームの方はかなり終盤の方まで来ていた。 


「クレアさんの言うとおりだよお兄ちゃん。それにクレアさんは弟さんを探さないといけないんだよ」


 後ろから声がしたので振り返ってみるとミヨが部屋をのぞき込んでいた。

 最近のミヨはクレアたん側に付いている。……というか、元々そんな構図だった気もするんだけどね。


「……あの子、元気にしてるかな」


 クレアたんが懐かしむように穏やかな微笑を浮かべる。

 ミヨは興味津々でクレアたんの弟について聞いていた。……僕はどんなキャラなのか知っているけれども。

 クレアたんの弟であるリック・リフィールはクレアたんに似ていなく、気が弱い。

 正直本当に姉弟なのだろうかと言えるような感じなのだ。

 

「そういえばお兄ちゃんは、ゲームの内容知ってるんだよね? ってことは、弟さんの居場所とかも――」

「うん、知ってるよ」

「……なんか変な感じだね、それって」


 ミヨが言うとおり、考えてみるととても変な話だ。弟の居場所だけでなく、これからクレアたんがどういう旅をしていくのかとか、全部知っているわけで。要するに、人一人の人生を熟知しているということだ。

 僕は未来から来た人のようなものだろう。


「……あたしがたとえ弟の場所を聞いたとしても、今すぐ何とかすることは出来るの?」

「いや、ダメだね。ゲーム内の行動は制限されてるし、動かすのは僕だからクレアたんが自由に動けるわけでもないし、それに――」

「じゃ、いいわ。聞かないでおく」


 掌を振ってこれからの出来事についての話を拒否するクレアたん。クレアたんはゲームのキャラである。それはつまり、自由な行動が利かないのだ。

 決められた出来事へ、決定済みの未来へ、歩いて行く。

 クレアたんはそれでも前向きに考えているみたいで、全然気にしていない。

 ――それとも、ゲームのキャラだから、そこまで複雑に考えることが出来ないのか。


「……いいよ、クレアたん。僕を弟の代わりだと思って、抱きしめてくれてもいいよ」

「普通の姉は弟を抱かないと思うんだけど?」


 クレアたんにジト目で睨まれる。

 最近のクレアたんは暴力を控えるようになった。殴るのに飽きたのか、僕の言動に慣れたのか。……恐らく、後者。

 

「そういえば僕思うんだけどさ、人力を超えたような物凄いパンチが当たった場合って、人間が吹っ飛ぶのか、体を貫くのか、どっちなんだろうね」

「ん? 試す?」

『やめてぇ!』


 僕とミヨが同時にクレアたんに突っ込んだ。

 そうだ、こんな感じで良いんだ。僕が馬鹿なこと言って、クレアたんがツッコんで、ミヨが宥める。そんな何気ない日常。

 楽しい時間は、いつまでもずっと続けば、それでいいんだ。

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