表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生王子の再就職 〜エクセルという名の魔法を手に、ブラック企業を浄化する〜  作者: ☆もも☆


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

9/13

第8話:王子、新しい価値を創造する

「三割のリストラ」という九条の宣告から一週間。

アルファ不動産の空気は、かつての淀みとは違う、

鋭い緊張感に包まれていた。


九条は最新のクラウドシステムを導入し、

全社員の挙動を分単位でデータ化。

無駄を徹底的に排除する「鉄の規律」を敷いた。


「羽柴くん……みんな、怯えているよ。

僕のせいで、こんなことになったんじゃないかって……」

 

佐藤さんが、震える手でマウスを握りながら呟く。

 

一太郎は佐藤さんの肩に手を置き、力強く頷いた。

「佐藤殿。恐怖で民を縛る術式は、短期的には出力を上げますが、

長続きはしません。九条殿の計算には、

決定的な『変数』が欠けています」


「変数……?」


「『信頼』という名の、最も強力なパラメータです。

佐藤殿、現場の皆さんに声をかけてください。

九条殿のシステムには見えていない、

『顧客の本当の悩み』をリスト化してほしいと」

 

一太郎は自らもデスクに向かい、キーボードを叩く。

 

九条のシステムが「過去の数字」から未来を切り捨てようとするなら、

一太郎の組む術式は「現場の知恵」から

新しい価値を創造しようとしていた。

 

そして訪れた、中間報告会。

 

九条は、無駄のない洗練されたグラフを提示し、冷淡に告げた。


「人件費を三割削減すれば、利益率は十五%向上します。

これが、この会社が生き残るための唯一の解です」


役員たちが頷きかけたその時、一太郎が挙手した。


「……待たれよ。九条殿。

その計算は、社員の『モチベーション低下による顧客離れ』と、

『現場でしか気づけない修繕の兆候』をコストに換算していますか?」


「……何?」


九条が眉をひそめる。

 

一太郎は、佐藤さんと共に作り上げた新しいシートを展開した。


そこには、清掃員や現場の営業マンから集めた

「物件の細かな不具合」や「入居者の家族構成の変化」といった、

九条のシステムでは『ゴミ』として捨てられていた情報が、

一太郎の関数によって見事に構造化されていた。


「九条殿の案では、短期の利益は出るでしょう。

しかし私のプラン――『おもてなしのデータ活用案』**なら、

社員の雇用を守ったまま、入居率の維持とトラブルの未然防止により、

五年後には九条殿の予想を上回る二十%の増益を達成します。

……佐藤殿が蓄積してきた『人の心の動き』は、

決して無駄などではありません!」

 

モニターに映し出されたのは、複雑な計算式が織りなす、

温かな未来のシミュレーション。

 

一太郎の「魔法」は、冷たい鉄を黄金に変える錬金術のように、

数字に命を吹き込んでいた。


「……羽柴一太郎、君は……」

九条の顔に、初めて焦りの色が浮かぶ。

 

役員たちの視線が、九条の「冷たい正論」から、

一太郎の「希望ある論理」へと移り変わる。

 

その夜。松代さんの家で、

一太郎は松代さんと共にお茶を飲んでいた。


「上手くいったわね。でも一太郎、九条はまだ諦めていないわよ。

あの子は、負けることを極端に嫌う子だから。

次に来るのは、正論じゃなくて『力』かもしれないわ」


「……力、ですか」


一太郎は、月明かりに照らされた自分の手を見つめた。

魔力はなくても、この手にはキーボードという名の剣があり、

隣には信頼できる賢者がいる。


「いかなる術策が来ようとも、民(社員)の居場所は、

私が守り抜いてみせます」


一方、暗いオフィス。一人残った九条が、

モニターの光に照らされながら冷たく呟いた。


「……ならば、根底から崩させてもらうよ。羽柴くん。

……これを見たら、どうするかな?」

暗いオフィスに九条の顔だけが浮かんでいた。

ご覧頂き、ありがとうございますm(_ _)m

本日、第9話まで投稿します。

よろしくお願いします☆


明日は、最終回まで連続で投稿していきます。

最後まで楽しんで頂けると嬉しいです。(*^-^*)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ