↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転生王子の再就職 〜エクセルという名の魔法を手に、ブラック企業を浄化する〜  作者: ☆もも☆


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/13

第2話:王子現代の魔導書「Excel」と出会う

松代の屋敷は、城と見紛うほどではなかったが、

一国の王子として育った一太郎の目から見ても「規格外」だった。


横浜の小高い丘に建つその邸宅は、

隅々まで磨き抜かれ、埃一つ落ちていない。


「……松代殿、この床の輝き。

鏡面反射による光学迷彩の一種か?」


「ただのワックスよ。さあ一太郎、あんた体は丈夫そうだけど、

まずはその汚れた服を脱いで。お風呂に入ってきなさい」


 生まれて初めての「システムバス」に驚愕し、

自動で出てくる適温の湯に「水と火の精霊の完全なる調和」を

感じながら、一太郎は身を清めた。



翌朝。

松代に借りたTシャツとデニムパンツを履いた一太郎は、

書斎へと案内された。


「あんた、昨日自販機の前で

『魔力がどうの』って言ってたわね。

この世界に魔法なんてないけど……

これなら、あんたの助けになるかもしれないわ」


 松代が指し示したのは、

机の上に置かれた薄型の黒い筐体――ノートパソコンだった。

 

一太郎がおそるおそる指で触れると、

画面が淡い光を放ち、色彩豊かな異世界の景色デスクトップが浮かび上がる。


「……っ、光る板か。これも魔導具の一種だな。

だが、文字の羅列が見当たらぬ。

どうやって術式を展開するのだ?」


「まあ、これでも読んでなさい。私は仕事に行ってくるから」


 松代が置いていったのは、一冊の分厚い本。

『世界一わかりやすいExcel2026:関数・マクロ完全攻略』


 一太郎は椅子に深く腰掛け、その「魔導書」を手に取った。


最初の数ページは、表計算の概念。

だが、中盤の「関数」の項目に差し掛かった瞬間、

一太郎の指が止まった。


「……なんだ、これは」


そこに記されていたのは、

魔法陣の核となる「論理式」そのものだった。


**=IF(A1>=80, "合格", "不合格")**


「もし、A1という魔力溜まりが

八十以上の純度を持つならば、『合格』という事象を顕現させよ。

……そうでなければ、『不合格』という虚無を返せ、だと?」


一太郎の若く柔軟な脳が、猛烈な勢いで回転を始める。


彼は気づいてしまった。

この「エクセル」と呼ばれる術式体系は、

言葉によって事象を制御するのではなく、

論理の積み重ねによって結果を導き出す、

究極の無属性魔法であることに。


「……素晴らしい。記述された論理だけで世界を定義している。

この『セル』一つ一つが、魔力を蓄える魔石メモリのような

役割を果たしているのか!」


---


三日間、一太郎は不眠不休で魔導書を読み込み、

パソコンという祭壇に向き合った。


四日目の朝、帰宅した松代は一太郎の成果を見て絶句した。


彼が三日で作り上げたのは、松代が趣味でつけていた

「お掃除アルバイトの管理表」を劇的に改造した、

**自動収益予測システム**だった。


「あんた……これ、三日で覚えたの?」


「記述が合理的ですから。

前の世界では『火龍の怒りを鎮める術式』を組むのに

三ヶ月かかりましたが、この『マクロ(VBA)』という言語は、

それに比べれば赤子の遊びのようです」


松代は確信に満ちた笑みを浮かべ、一太郎の肩に手を置いた。


「決めたわ。一太郎、あんた、その腕を持って、

私のビルに入っている会社に行ってちょうだい。

そこはね、亡くなった夫から引き継いだ大事な組織なんだけど

……今は根性論だけで回ってる、

『真っ黒な組織(ブラック企業)』**に成り下がっているのよ」


「……松代殿があるじである組織が、

病んでいるというのですか?」


「恥ずかしながらね。

現場の部長たちに任せきりにしていたら、

若い子がどんどん辞めていく場所に変わってしまった。

……一太郎、あんたのその『現代の魔法』で、

あの澱んだ場所を根こそぎ掃除してやって頂戴」


 一太郎は静かに立ち上がり、深々と一礼した。

「承知いたしました。恩人の領地が荒れているならば、

騎士として見過ごすわけにはいきません。

その澱み、私の論理エクセルで浄化してみせましょう」


羽柴一太郎、二十五歳。

彼が初めて現代社会という名のダンジョンに潜入する日が、

すぐそこまで迫っていた。



読んで頂き、ありがとうございますm(_ _)m

本日、第3話まで投稿します。

よろしくお願いします☆


明日は、4話と5話を連続で投稿していきます。

よろしかったらブクマをポチッと

して頂けると嬉しいです。(*^-^*)



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。