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ギルドカード奪還作戦

「おい待てやコラァ!」


スリはそんな言葉には耳もくれず目にも留まらぬ速さで走り去る。魔法が関与していなければあり得ない加速を前に斗真もワームを出しながら全力で追い掛けた。

ふと横から荒い息遣いが聞こえ、見るとメッチェンもついてきている。


「なんで君が!?」


「久しぶりの大切なお客様の、私の小説を買ってくれたお客様様の物を盗むなんて許せません!」


言うが早いか彼女は魔術を発動する。

気の弱そうな見た目に反し好戦的な少女であった。

背後に生成された墨の塊のようなものからタコの足が伸びてくる。


「タコ!?こっちも負けてられないな!

行けっ、ワーム!」


二本の触手がスリの背中に素早く近づいていくが、スリが垂直の急上昇で躱したことで空を切ってしまう。

そんなことを何度も繰り返している内に都の喧騒が近づいて来ていた。

あの人混みにまぎられられてはもう見つけることはできないだろう。


「埒が明かない!メッチェン二手に分かれるぞ!」


斗真は先回りをメッチェンはそのままスリを追う形でそれぞれ別の道を行く。


スリの正面に回り込んだ斗真が出したワームは素早く、回避は困難に見えたがスリはさすがの身のこなしで回避する。

しかしその左足を後ろから現れたメッチェンのタコ足が捕らえ地面に叩きつけられ、その上から更にワームで捕縛することで完全にスリを制圧した。


「さぁ俺のギルドカードを返してもらおうか!」


そう言いながら近づくと何やらモゾモゾと動いている。

突然スリから魔力が立ち上り次の瞬間には爆発が起こった。

破裂したこうきが肌を叩く形容しがたい痛みが走ると同時に空気が弾けるような音ともに近くにいた斗真は数メートルは吹き飛ばされる。

危うく硬い壁に頭をぶつけ2度目の死を経験しかけた斗真だが今回は間一髪メッチェンの魔術によって助け出される。


「あ〜クソ逃げられた!」


と怒り狂う斗真の大声に混じりバタバタと兵隊たちが走ってくる。

爆発を聞きつけて飛んできたようである。

状況的に、二人は犯人と断定されてしまいあえなく連行された。


「いい加減吐いたらどうなんだ!お前がやったんだろ!」


「だ〜か〜ら!俺は取られたギルドカードを取り返そうとしただけって言ってるだろ!あっちが抵抗しようとして起こった爆発なんだって。」


兵士たちは強硬な姿勢を1時間も崩さず尋問を続けていた。もうこれ以上は水掛け論で埒が明かないと思い始めた斗真の後ろ、先ほどまでは確かに取調室の簡素な壁しかなかった場所から突然声が響く。


「その辺にしといてやりなさいな。」


振り向けばそこに居たのは老人だった。長い髭を蓄えてかなり高齢に見えるが腰も曲がらず話し方も茶目っ気のある感じである。

誰だこいつと?怪訝に思う斗真とは対照的に兵士たちは姿勢を正し彼にお辞儀をした。


「お疲れ様ですギルド長殿!本日はどのようなご要件で?」


彼らの驚く様を見れば部屋へ入ってくる老人を視界に収められる向きで座っていたにも関わらず今まで気づいていなかったことが伺えた。

先程までの態度とは打って変わってへりくだる様な話し方になる兵士たちにギルド長と呼ばれた男は鷹揚に頷いて答えた。


「わしが用があるのはそっちの若いのでな。

トウマというじゃったかの、早速だが取引をしないか?最近会員のギルド証が多く盗まれて困っおってのぉ。ギルドとしても全力で調べておるが犯人はかなり素早いようでなかなか捕まらんのよ。」


本当に困っていると示すかのようにオーバーな身振りをする老人はそこで言葉を切り値踏みするように斗真を見下ろす。


「そこでじゃ、もし君が捕まえてきてくれたらこの爆発事件をお咎めなしに、君の冒険者ランクを2つほど上げてやろう。」


何言ってんだこの爺さん?と言う気持ちが斗真を支配していた。

なぜ自分に頼むのか全く分からないものだったからだ。


「ずいぶん都合のいい話だけどどうして俺なんですか?」


そう問えば老人は何でもないことだと言うように答える。


「アルベェータくんと知り合いなんじゃろう?

彼と連携がうまく取れるなら誰でも良いのよ。アイツは外で待っとる。もう一人の嬢ちゃんもじきに解放されるだろう。三人で頑張って捕まえとくれぇい、

分かったらほれ、行った行った」


異世界で初めての友人の名前を出され固まる斗真を老人を欠伸をしながら急かす。

思っていたよりも早く再開できるかもしれないと言う驚きと喜びがないまぜになった感情で斗真は部屋を後にした。

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