主従の会合
斗真の冒険者登録が完了した丁度そのころアルベェータはある男の前に跪いていた。
彼の忠誠を受ける男は椅子に深々と尊大に座っているがそれは最早幼い頃からの習慣の産物であり、威厳を纏う域にさえある。
彼こそがアルベェータの主にしてハイマート王国の王ランドロス3世である。そんな彼は見た目に違わぬ落ち着いた雄々しい声でアルベェータに語りかけた。
「此度の出向大義であった。楽にして良い。」
そう言ってアルベェータからの報告書に目を落とす。アルベェータが立ち上がったのを確認して話は再開された。
「帝国の蠢動、最早陰謀論の域ではないか。宰相殿が軍部と結託して権力を集めていると言う私の見たては正しかったわけだな。」
「はっ、宰相殿は軍司令部と土地を仲介にして同盟を組んでいるようです。」
それに加え、気がかりだった帰り道での顛末を話す。
「かのホッパーカウは魔力の波長が明らかにいじられていました。もしかしたら…」
「帝国の陰謀の一部と?それはあまりに早計だ。
しかし帝国の宰相殿はは平民からその地位に駆け上がった切れ者だ。何を考えているのやら私でもすべては分からぬ。しかし一つ確かに言えることは拡大主義者はいつも大平原を目指すということだ。」
言外にあるその先の顛末をアルベェータは予想できたが口には出さない。
一介の諜報員たる彼にはどうにもできない問題であり、静かに王の言葉を待っていた。
「そして軍も魔獣もいない彼の地は瞬く間に制圧され大拠点となる。そうすればそこを橋頭堡にして王都近辺に多くの帝国軍が来るだろう…
戦争好きの先々代が当時最も激戦区だった大平原の近くここケーニッヒスベルクに遷都した。
平和好きの先代たちの約定によってその激戦地から軍が引き払われた。
私に残ったのは無防備な脇腹を食い破られればたちまち陥落する王都だけだ!」
実際王国はそれ以上に多くの問題を抱えている。先々代の戦費の浪費による財政難、先代の軍縮によって軍属崩れが多く出て治安も悪化している。
「私はどんな状況であっても貴方を守ります。」
並の者なら居竦み何も言えなくなってしまう王の怒気を受けて、アルベェータはしかし顔を上げ真っ直ぐ射抜くような視線で王を見る。
すると王は先ほどまでの厳しい表情をフッと和らげ、子供を慈しむような表情になり
「あぁ君のますますの忠勤に期待しているよ。」
と穏やかに言った。
それと同時刻、禁書庫でもある主従が話し合っていた。
「これを見てください!ホッパーカウの情報をまとめたものです。」
斗真が買ってきた焼き鳥のような料理を口いっぱいにほおばりながらリーブルがうれしそうに見せてきたのは革張りの小さな本だった。
「えっ、ここであの牛解体したの?」
「いいえ、これは私も知らなかったのですが許可されていない物が禁書庫に押し入ろうとすると本の中に閉じ込められてしまうようなんです。
まあおそらく魔力や知力の高さによってレジストされたりするんでしょうが。」
「えぇそんなに怖い機能が俺の魔法に」
しみじみと言う斗真に対しリーブルは怒ったような表情になってしまった。
「主様もご存知なかったんですか!?結果として本になってくれたからよかったですがもしならなかったら今ごろこっちは大変だったんですからね!」
「ごめんよ、考えが及ばなかったな。ほら俺の分の焼き鳥あげるから許しておくれ。」
「そんなもので許してもらえるわけないじゃないですか!」
そう言ってプリプリ怒りながら焼き鳥をひったくるリーブルを見て斗真は目を細めて笑う。
「これからもよろしくなリーブル」
「えぇこちらこそ!」
こうして二組の主従は関係を確かめ合ったのだった。




